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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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49.輸送計画の刷新

ここエウルレン市中央にあるホテル・ザ・ジャパンに、ル・シュテル伯爵及び解放戦線の面々、そしてレイヤーチームの数人が集まり密談をしていた。皆、それぞれホテルにはバラバラに入り、最上階のエグゼクティブスィート隣にはラウンジがあり、ここは伯爵による貸し切りとなっている。バラバラに入った面々はこのラウンジへと集合していた。


「やはり急激な組織の拡大は、色々と歪みが出るな。」

「モーリス、それが分かっていても既に見つかってしまった物は仕方が無い。近々にガルディシア側の何等かの組織によってエウルレンは相当に緊張する事になる。そして恐らくそれは秘密警察関係だろう。ゾルダーからの情報もそれを匂わせている。」

「エンメルス、移転先の工場は稼働し始めたのか?もし、秘密警察が立ち入った場合の対応は?」

「ちょっと待て、色々バラバラだ。一旦整理させろ。いいか?まず、銃器工場の移転に関しては終了している。新規に建てた秘密工場に全て移転させたが、ここは火力発電所の補助施設に偽装してあるし、トラックの出入りに関しても専門の業者しか入れないように火力発電所側で規制されている。それと分かって立ち入るならともかくとして、工場の査察関連では絶対に分からないようになってる。そこに通う工員は全て火力発電所の所属に身分証を発行している。」

「そうすると、銃の製造に関しては滞り無いという判断で良いのだな?」

「ああ、銃は大丈夫だ。マルソーの弾薬製造工場も今の所は問題は無い。あそこはレイヤーチームで守っているからな。何かあれば真っ先に俺か伯爵に連絡が入るし、事前にゾルダーからの警告もあるだろう。それとティアーナから来た連中が入った工場も問題は無く稼働している。今の所の問題は、輸送の面だ。」

「ああ、各地方への銃と弾薬輸送の件か?」

「そうだ。輸送手段が無い。あれ以降、検問所の数は更に増えた。エウルレンは南の外れだ。どうしても各地に荷を送ろうとすると、中央街道しか通り道が無い。あいつらにしてみりゃエウルレン市周辺を怪しんでいる訳で、その街道に検問設けりゃ、ほぼ全てを補足可能だ。大体北に向かう道でトラックが通れる道はそれしか無いからな。」

「海路はどうなんだ?海岸線沿いにマルソーを出発してトゥーランなりラカノーなりに…ラカノーは陸路が無いから無理か。何れにせよ、海路で輸送するのは不可能なのか?」

「それも考えたが駄目だ。まず西海岸だが、トゥーラン港は艦の修理を行う施設がある。つまりは軍港なんだ。その為、警戒は予想以上に厳しい。更に秘密警察が増員されて配備されている。荷揚げはイチイチ中身を確認している程だ。ラカノーは道路が無いので論外。東海岸に至っては、まず行くまでが大変だ。陸路で2日あれば付くティアーナでも、海路で行けば4日掛かりになる。おまけに海軍は減らされたとはいえ東海岸側は健在だ。臨検を受ければ一発で見つかる。」

「そうか、海は無理か…他に手段は無いのか?エンメルス?」

「ごく少量を、例えば馬車を使って中央街道を使わない、という手なら行けるだろう。街道以外はそれほど警戒も厳しく無いし、向こうも人手は有限だからな。だが、必要量を運べるか、というと…」

「無理だろうな。分かった。何か考えておこう。それまではエウルレン市外への輸送は、何等かの別の手法が見つからない限り一旦停止しよう。」


一同が悩んだ顔をして無口になったが、ふとモーリスが閃いた。


「そうだ、伯爵!例のニッポンから供与される巡視船の件はどうなった?」

「ああ、トゥーランから来た連中は300名程は秘密裏にニッポンに行って船の訓練と教育をしているよ。それ以外はこのマルソーとエウルレンに分散して仕事をして貰っている。」

「その巡視船は何時ぐらいにこっちに来るんだ?」

「そうだな、あと1か月程は最低かかると思うよ。」

「この巡視船を輸送船代わりに東側に送れないか?船の練習航海とかを名目に。」

「1度や2度なら可能だと思うが、定期的なのは無理だろうな。」

「いや、それで十分だ。東側には銃に習熟した連中を送れば、あとは銃が来るのを待つだけだろう。ティアーナの現状は、あそこから来た技術者達、ダブールと言ったっけか?彼らが言うにはガルディシアの軍人達は全員引き上げて誰も居ないそうじゃないか。ティアーナに大型の備蓄拠点を作って、そこに輸送しよう。」

「…待てよ?マルソーの火力発電所と石炭鉱山を繋ぐ輸送列車は、現在ティアーナまでへの延長工事が行われている筈だ。それが出来ればティアーナは完全に輸送拠点として機能する筈だ。輸送列車が使えるようになれば輸送と備蓄の拠点になるんじゃないか?」、

「ふむ、そうだな。その地域に我々が何かをするのは問題がある点をなんとかするなら或いは…」

「ティアーナまで伸びるなら、あの辺りの生産物を輸送する名目で保管施設の建設とかニッポン側に働きかければ良いんじゃないか?」

「そうですね、それはタカダさんに要請しておきましょう。」

「頼む、伯爵。あとは帝国内部の件だな…」

「秘密警察の動向が或る程度探れるのは助かるが、内部協力者をもっと増やして貰わんとな。」

「ゾルダーが言うには、解体した第七艦隊の乗組員に対して工作を掛けているとか。」

「上手く行くと良いがね。余り期待しないで待っておこう。」


解放戦線側の戦力は第五艦隊解体により実に倍以上に膨れ上がっていた。それらの兵に配備する銃と補給物資を考えると今の生産数では足りない状況の為、増産を目論むもそれを運ぶ為の手段が無い解放戦線が行ったのは、別の集積拠点を作り、そこからの新たな輸送を行う事だった。

伯爵からの要請を受けた日本は、ティアーナ港に生産物及びその他の保管拠点を中核に物流拠点の整備や道路の整備も行い、その結果ティアーナはエウルレンと同様に急速に発展した。元より輸送列車のティアーナまでの延長も既に決まっていた事から、特に違和感が無くガルディシア側にも受け入れれられ、ティアーナ港も同時に整備された事からエステリア王国との輸出品受け入れ港として規模も拡大していった。これは同時にエステリアから輸出された物がガルディシアを経由して日本に送られるルートの開拓ともなったのである。

その頃にはル・シュテルと解放戦線の戦力はエウグスト地域全土において、2万の先進武器で武装する兵力を抱える迄となった。

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