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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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48.秘密警察の構造

帝都ザムセンの秘密警察の教育機関であるシュタインバウアー教育機関では、今日も軍や警察からの転属者への教育が行われていた。ここでの座学に関する教育に関しては情報局から教育機関に転属したブルーロ大尉以下のブルーロ特殊作戦団の将校達が行っていた。そして座学以外、つまり潜入工作、盗聴、要人暗殺、破壊工作等の実行関係はヴァルター曹長を筆頭に士官以下の担当であった。この教育機関の成績によって、秘密警察での行き先が決まる。


元々情報局は対外諜報と対外工作及び暗殺等の実行を担っていた。これが秘密警察を傘下に収める事により、情報局を頂点とした秘密警察組織にその機能を譲渡した。秘密警察は警察総局が対外防諜を担い、第1局(警備・偵察)、第2局(防諜)、第3局(国内諜報)、そして第4局(教育)、そして情報局直属の実行機関レティシア特殊作戦団、という構成だ。そしてシュタインバウアー教育機関は第4局に属していた。つまり、転職者は第4局で教育を受けた後に、それぞれ警察総局か第1局から第3局の何れかに配属先が決まるのだった。


その第4局の教官ブルーロ大尉の元にレオポルド局長が訪れた。


「久しいな、ブルーロ。」

「これはレオパルド局長、何時ぞやぶりですね。」

「授業は何時迄だ?その後、時間取れるか?」

「ああ、今日の講義はもう終了しているので構わないですよ。」

「そうか、分かった。外で待っている。」


ブルーロ大尉はエステリア王国からの脱出以降、帝都に戻ってきた所で休養を言い渡され、知らぬうちにエステリアと休戦状態になった事を知り、更には終戦協定が結ばれた事に落胆した。自分達の仕事が無くなる事を危惧していた所で、部隊丸ごと教育機関への転属を命ぜられた。結局は自分達のような部隊が行っていた事を広く薄くやる者を増やす組織が、このシュタインバウアー教育機関だ。その目的はどこにあるかは知らないが、命ぜられた事を黙々とブルーロ達は熟していた。そこにレオパルドが現れたのだ。実の所、特殊作戦団は情報局の私兵集団に近い扱いだったが、この秘密警察を傘下にする事によって、正式な肩書が得られたとも言える。だが、以前の様な仕事に対する熱意や高揚感は失われ、規則的な生活にも飽きてきた所だった。


レオパルドはブルーロと共に、人気のないザムセンの港を歩きながら話した。


「大尉、最近の件、どう思う?」

「最近ですか?どちらの件でしょうかね?」

「ああ。君の学生の事ではない。最近のガルディシアを取り巻く状況の事だ。」

「ガルディシアですか。ニッポンという存在、連射可能な銃。姿を見せない反ガルディシア組織、膨張の機会を失ったガルディシア、発展を続けるエウルレン、話題には事欠かないですな。」

「うむ。今迄我々ガルディシアは外にばかり目を向けていた。とにかく膨張する為に。だが、一旦ここで国内基盤を固めないと周辺諸国に良い様にされてしまう。しかも、我々はそれを解決する為の戦争という手段が取れない可能性が高い。」

「ニッポンですか。海だけかと思ったら陸もアレでしたからね。」

「そうだ。あの厄介な国は我々の牙を折り、人道だの平和だののお題目をまさか真面目に要求した挙句に、その意にそぐわないと真逆の正に力でそれを押し通してくる。」

「正直、第二軍が壊滅するとは思いもしませんでしたね。」

「そうだな…。これは未だ関係部署にしか情報が流れていないんだが…以前、ニッポンから中国人を名乗る連中が亡命してきたのだが、彼らはニッポンと同等の銃器が製造可能だ、という触れ込みでね。」

「ニッポンと同等の銃器?あの連射銃ですか?」

「そうだ。そういって陛下に取り入ったのだが結局彼らは作れずに帝都から追い出されたのだ。だが、帝都から追い出された彼らはエウレルンで工場を作り上げ、そして銃の量産に入った様だ。」

「銃の量産……あの連射銃を量産…危険な香りがしてきましたね。」

「その香りは火薬の香りだろう。先日、レティシア隊が演習中の爆発事故で大半が死んだ。だが、これは公的な発表であり真実は違う。その中国人が一人で山に立て籠もり、それを包囲したレティシアの隊が一人相手にほぼ全滅したのだ。」

「そうでしたか。何かおかしな発表だなとは思っていましたが。」


ブルーロ大尉はこの辺りで薄々察していた。

要するにブルーロ大尉の選抜する人員で、銃の行方を捜索しろという事だろう。教育機関用には別途人を当てがった上で、そういった任務に特化したお前等の出番だ、という訳だ。そしてレオパルドは話を続けた。


「それほど危険な奴だった。そして奴が消えた事により銃の製造に関する足取りは消えて無くなった。だが、先日エウルレン北の検問所で連射銃が100丁新品の状態で見つかった。」

「…それは製造工場は未だどこかで稼働しているという事ですか?それともどこかで作った奴の在庫品ですか?」

「それも含めてブルーロ大尉。君に潜入捜査を頼みたい。君の立場は一時的に第3局となり、この連射銃の行く先、流通経路、仕入れを調査して貰いたいのだ。勿論君一人では無い。必要な人員はどこの部署から融通して良いし人選は任せる。例えば、旧ブルーロ特殊作戦団を再結成するのも可能だ。どうする?」

「局長、断る訳が無いじゃないですか。喜んでやらせて貰いますよ。」

「頼もしいな。後で追って正式な辞令を送る。それと人選は早めに教えて欲しい。それと当該作戦にあたり、もしまだ秘密工場があった場合は別途指示がある。ここは陛下の命令となる。」

「分かりました。すぐに取り掛かります。」

「宜しく頼むぞ大尉。どうせならこの後、一杯付き合わんか?」

「局長のお支払いなら。」


レオポルドはにやりと笑って港の一画を離れ、居酒屋に入っていった。

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