表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
21/327

1_20.骨の塔 攻撃作戦

統合幕僚本部 午後11時過ぎ



「"嵐の中心に位置する島中央に立つ塔を破壊する"、との政府からの指令が下った。

 皆も知っての通り、佐渡島では現在超自然的存在による大量虐殺が行われている。現時点まで我々はこの敵の拠点や正体も行動原則も対策も何も持っては居なかった。然し乍ら、稚内で勾留、いやご招待中のガルディシア軍人からの情報により、新たに日本海に出現した小島が敵拠点であると判明した。そこで、当該島の塔を破壊する作戦計画を早急に立案し、且つ実行せねばならない。遠藤海将、どうだ?」


モニター越しに統合幕僚長が遠藤海将に問う。


「現在、佐渡島方面に向かって第3護衛隊4隻が移動中です。ひゅうがはそのまま佐渡島での人員輸送に充て、護衛艦みょうこう、あたご、ふゆづきの3隻での艦対艦誘導弾による攻撃で目標を破壊可能、と判断します。尚、第3護衛隊は射撃可能域まで数分で到達予定です。」


「陸上目標を艦対艦誘導弾で撃てるか?」


「90式SSMは指揮統制装置により経路プログラミング可能です。無理やりにでも目標の位置に目掛けて突っ込みます。ハープーンはBOL方式にて突入させます。」


「了解した。佐渡島の現状を鑑み、一刻も早い対応をせねばならん。第3護衛隊に通達。塔に対し、誘導弾攻撃を遂行せよ。」


「了解しました。塔に誘導弾攻撃を遂行します。」


--

中央ロドリア海洋上 午後11時半


何やら高速の船で人間共が我が島の方に接近している。

慌てて逃げるかと思えば、こちらに向かってくるとは……人間共に何か出来る事があるかとも思えんが、不測の事態は避けたい。一刻も早く、抱えた魂を壷に入れなくては…だが、不死の大魔導士が築いた骨の塔、人間達に何が出来るのか。


不死の王は骨の塔の島と佐渡島の直線を結ぶ佐渡島寄り25kmの場所をゆるりと移動中であった。島に戻るまで125km程度、2時間半がかかる。我が島に着くのと同じ位に、あの船の人間共も着くだろう…ちょうど手間も省けるというものだ。


……そして第3護衛隊のミサイル攻撃は150kmの彼方から行われた。


不死の王がそれを感知した瞬間、何かの間違いだと思った。船が放った矢のようなモノは余りにも速過ぎた。人間に斯様なシロモノが作れるとは……これは間に合わぬかもしれん。だが、塔には障壁が張ってある故、あれが当たったとて問題は……


次々と骨の塔に矢が当たって爆発をする。だが、塔はびくともしない。塔そのものに当たっては居ない。塔を薄く取り巻くような見えない防護障壁が、矢の爆発を防いでいた。


……しかし不味い。とても不味いぞ。なんだあの爆発力は。これほどの威力の爆発は想定して障壁を構築していない。もっと強力なモノを張る事は出来るが、それは今の障壁を取り去ってからだ。それまでは今の障壁を維持強化し続けるしかない。しかも防御能力が限界が近い事を感じとった不死の王は迷った。


今すぐ防護障壁の強化をするべきか。それとも、あの矢を放った船を襲うべきか…


一瞬の躊躇後、不死の王は防御障壁強化に自らの力全てを割り振った。この障壁強化と引き換えに、悪天候はきれいさっぱり消え去った。力の行使はバーターだ。何もかも一遍に全てが可能なのは神だけだ。この悪天候を手放しても、骨の塔の防御を優先する。


突然訪れた命の危険に、不死の王は背筋にチリチリとした憔悴にも似た気持ちを何百年かぶりに感じていた。更に次々とあの矢が飛んで来た。


--

DDG-175 護衛艦みょうこう CIC


「ハープーン、目標まで10秒…弾着、今!」


「どうだ?」


「…目標健在。ハープーン効いてません。」


「あ、急に嵐が晴れました!」


「ん?どういう事だ?嵐が無くなった、だと?」


「はい、突然天候回復しました。」


そんな兆候は無かった筈だ。何時までも続く様な暴風雨が先程まで吹き荒れていた筈だ。何故だ。今回の攻撃と何か関係があるのか?


「ハープーン全弾命中。…目標は依然健在です。」


「ううむ、やはり何か超自然的な力が働いているという事か。」


「続いて90式SSM目標まで10秒…弾着、今!」


--

中央ロドリア海洋上


これは予想以上に厳しいやもしれぬ。

あの矢の爆発力を防ぐにも、そろそろ限界だ。8発目までは防護障壁を当たる場所の中心部分に、力を集中させ厚みを持たせていたが、続いて次々に飛んで来る矢は余りにも多量で、厚みを

持たせた以外の場所を打ち抜かれた。しかもどこか非常に不味い場所を撃ち抜いたらしい。塔自体は未だ形を保ってはいるが、どこかが壊れている。しかも悪い事にコアを守る部屋のどこかに当たったようだ。


もし仮に、コアを破壊されたならば、我はこのまま雲霧四散してしまう。しかし未だこうやって意識を保っているという事は破局は訪れていない。だが……何らかの損傷が我がコアに与えられた。……思う様に力が出ない。


損傷したコアを修復するには人の手が必要だ。そう、死なぬ人間が必要なのだ。だが、その為にここを離れてしまうと、塔への攻撃を防げぬ。……あの船の人間をまずは刈り取るか……だが、その前にあの矢を撃たれたらどうやって防ぐ……?どうしたものか……動くに動けぬ……


……ん? あの船達が反転して離れて行く。

あの船が去ったのか! これはまだ我の目はあるようだな……塔に戻る前に死なぬ人間を。あの日本の小さな島から死なぬ人間を連れて来よう。


不死の王は佐渡島に引き返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ