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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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44.東の山の戦い-①

リュトヴィッツ中尉のアントンチームは山道がある中央から散開して前進を開始した。全てのチームが時間通りに前進を開始しているだろうかと危惧した瞬間に、右側の遠くから銃声が聞こえた。だが、森が邪魔して何が起きているかは分からない。


「銃声だな。右翼からか。」

「そうですね。アイスラー准尉のチームからですね…。」

「よし、中央を右側に寄りつつ前進するぞ。敵は1時から3時の方向だ。上手く行かば挟撃出来る筈だ。」


その時既に李は右側に2発射撃して右翼のツェーザルチーム2名を倒していた。射撃後直ぐに中央の方に移動を開始した後に、ツェーザルチームは射撃が来た方向と思われる地域に銃撃を浴びせたのだ。リュトヴィッツ中尉が聞いたのはこの発砲音だった。この音を頼りに移動していたリュトヴィッツ中尉のアントンチームもまた罠に嵌った。中央を散開しつつ前進していたアントンチームの中の一人、トレスコウ伍長の足元が突然爆発したのだ。


「なんだっ、敵襲か!?誰がやられた?」

「トレスコウです。…駄目です、死んでいますや。」

「一体どういう攻撃だ?ほかに被害は無いか?」


幸いな事に散開していた為に、被害はトレスコウ一人で済んだ。

だがガルディシアの戦う方法には、このような山林でのゲリラ戦は余り無い。レティシア特殊作戦団は主に市街戦の方が得意で、山岳での戦いに優れた部隊は別に存在する。第2レイヤー部隊のベールが以前行っていた輸送路へのゲリラ攻撃を退けた山岳猟兵だ。だが、彼らはここには居ない。


「中尉、足元に爆発物を仕掛けられていたみたいっすね。」

「なんだと?どういう仕掛けだ?」

「爆発物自体は吹き飛んで分かりやせんが、踏むか引っ掛けるかで爆発する類じゃないかと。」

「くそっ、一人だと思っていたが、こいつぁ中々どうして厄介だぞ。周辺警戒!足元に罠があるぞ。これで終わりとは思えん。移動の際には足元に気を付けろ!!」

「中尉、これ生きて捕らえろとか無理臭く無いですかね?」

「そうだな。俺達の知らない戦い方をしやがる。しかも効果的だ。…誘われたか?」

「可能性ありですね。山や森なら人数の差があっても奇襲の連続が可能ですからね。」


ここでリュトヴィッツ中尉には選択肢があった。

ここで後退し、より優位な戦い方をするか?だが、ここで後退してしまうと取り逃がしてしまう可能性が高い。それに奴がこちらに優位な戦い方を受け入れる事もしないだろう。

それともこのまま押し切るか?生きて捕縛せよ、の命令は既に聞く気は無い。アントンチームはトレスコウ伍長が死んだ事で全員が発見次第殲滅する気になっていた。もちろんリュトヴィッツ中尉は可能な限り命令を守ろうとはしていたが。

そしてリュトヴィッツ中尉は後者を選択した。


「日が落ちる前に奴を補足する!各員足元に注意しろ!前進!!」

「ぐわっ!!」

「なんだっ!何が起きたっ!!」

「小さな穴が開いていて、そこの底に尖った木が!!」

「くそっ、誰がやられた?」

「フリースナー上等兵です。命に別状は無いですが…」

「ちっ、嫌らしい事を。マッケンゼン!フリースナーを治療しろ!各員円陣組め。防御体制のまま待機!」

「中尉!俺の事は放っておいて先進んで下さい、このままだと日が落ちる。うぐっ…」

「どれだけ罠があるか分からんな…マッケンゼン、終わったか?」

「もう少し時間下さい。」

「終わったらフリースナーをここに置いて進む。後で回収に戻る。いいな?」


その時既に李はアントンチームから離れてベルタチームに攻撃をかけようと機会を伺っていた。

アントンチームへの銃撃を行わなかったのは、きっちり1名を殺害し、1名が罠にかかった為、十分にアントンチームへの足止めになると判断し、直ぐにベルタチームへの攻撃に転じたのだった。


「それにしてもワイヤートラップに一人しか掛からなかったのは残念ね。上手く集まっていれば大分節約になったのに、結局一人なのは残念ね。でもこれで中央と右側は動きが鈍る筈ね。左側は罠を仕掛ける暇が無かったからちと面倒ね。」


李はそのまま左側を進む連中が来るであろうルートの斜め上から狙撃体制に入った。


「山の左側は随分木が少ないな。日光があまり差さないからかな?」

「そうかもしれません。まぁ、進みやすくて良い塩梅ですね、少尉。」

「ああ、だが…!??」


エーリヒ少尉は最後まで言えなかった。

エーリヒ少尉の額に穴が開いた後に突然の銃声と共に少尉は倒れた。


「少尉!? 敵だ!奴は狙撃もするぞ!!少尉がやられた!!」

「くそっ待ち伏せかっ!!」


即座に全員が伏せた。

だが、一番最初にチームの司令官が倒れたのは痛かった。


「どうするよ、ジーヴェルト!お前が階級一番上だぜ。」

「うるせえなパンケ。指揮を引き継いだ。狙撃とか面倒過ぎんだろ。近寄って切りつけようぜ。お前等匍匐前進して狙撃地点に切り込むぞ。進め!」

「よし、ジーヴェルト軍曹の指揮引き継ぎをパンケが確認した。皆、行くぜ!」

「おおよ!」


李はちらと頭出しした瞬間を見逃さず、確実にベルタチームの戦力を削いだ。こうして、指揮を引き継いだジーヴェルト軍曹が、残り3人まで人数を減らされた時点で後退を指示した。ベルタチームで生き残ったのは、ジーヴェルト軍曹、パンケ一等兵、シュナイトフーバー二等兵の三人だった。


こうして戦場は薄暗くなりつつあり、夜の帳が降りようしていた。

既に、リュトヴィッツ中尉の戦力は20名中、6名が死亡し2名が行動不能となっていた。

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