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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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30.面接の後は

「レティシアの一行はまだ出ていかないか?」

「今日も4人マルソーで嗅ぎまわっているな。残り2人はエウルレンだ。」

「全く、疑り深いにも程があるぜ…」


レティシアの一行が面接を終了してから1週間が経過した。

その後、解放戦線では60人の面接を行ったが疑わしい者は居なかった事から、一番最初の6名のみが潜入工作員であると特定したが、その一行は面接終了後にホテルを引き払った後に各々別の宿を取り、エウレルンとマルソーを探り続けている。その為、でっち上げた解放戦線本部を引き上げる事も出来ずにそのまま事務所として使い続けていた。当然事務所にはマークされるような人物の出入りは出来ず、モーリスやアレストン、一部の顔の知られていない解放戦線のメンバー、そして第三レイヤーの面々が都度寄る程度に事務所を維持していたのだった。

そのエウレルン市内では……


「大尉、どうも掴めませんね…。実の所、連中は本当に路線変更したんじゃないですか?」

「そうね、不思議だわ。そもそもあの連中が路線変更に至る何か重大な出来事があった結果、って事が掴めないのよね。何も無い所から突然そう決断したようにしか見えないのよ。こんな変な事ありえる訳がないでしょう?」

「しかし、それも含めて何も出て来ない…ま、暫くこの辺りを調べて分かった事は、ここは一体どこなんだ?という話になりまさぁね。完全に電化された住宅、帝都でも未だあまり進んでいない上下水道を完備したエウレルン市、細い路地までも舗装された道路、24時間営業のコンビニとかいう店、この生活を捨てる位なら武装蜂起を辞めるのも、まぁ理解は出来る。」

「本当にそれだけなのかしら…でも、その理由はある納得は出来るわね。ここの環境に慣れたら、例え帝都ザムセンと言えども片田舎にしか見えないわ。」

「ですよね、大尉。今回は空振りかな、こりゃ…」

「でもね、コルテン。そう考える一定数の連中が居るのは確かだわ。それが大勢を占める事はあっても、意思決定はたった一人が決める事なのよ。有象無象があれこれ文句を言っても、それは道端に転がる石ころに過ぎないのよ。そして国を失い、権力を失った連中が、民草の利便性の為に武力闘争を諦める?穏健な人の血の流れない方針に変えるのかしら?」

「い、いやそれは確かに。」

「そんな馬鹿な話はどこの世界でも無いわ。見てよ、私達を。私達は国の、いや陛下の命に従ってあらゆる戦いに勝ってきたわ。だからこそ我らの国を危うくする連中は必ず打倒した。だけれどもある日、何かの勢力によって陛下に苦境が訪れ、陛下が我らにこれから穏健に話し合えと言ってきたらどうするの?今日からは余の剣では無いと言われてお前はどうするの、コルテン?」

「素直には聞けませんね。仮にですが、多分黙って原因の連中を殺しにいきますね。」

「そうよ。そうなる筈だし、それでなくてはおかしいの。でも今迄、そういう連中に一人も逢っていないのよ。誰も彼も物分かりの良い平和主義者ばかり。そういう連中はどこに行ったのかしら?」

「…確かに、今迄一人も居ませんね。」

「そういう連中が居て、そして例の解放戦線と反目し合っているのなら、私も理解する。この情報が間違っていた、と確信出来るわ。だから私は未だ納得して居ないのよ、コルテン。」

「大尉、仰りたい事は分かりました。それならエウレルンよりも他の場所の方が良いかもしれません。どうも、この辺りは結局戦火に巻き込まれて無い故に、そういう意識が低いのかもしれませんぜ。」

「結局はそういう事なのかもしれないのかもね。ジーヴェルト達のマルソー回りは今日終えるのよね。ここはもう良いから、後で集合して北の方に行きましょう。」


そして、その頃マルソーでは…


「エンメルスだ。マルソーのお客さんの様子はどうだ?」

「こちら第三のエッカルト。お客さんはマルソー第3地区をエライお気に入りだ。何かを探っている、というよりは総当たりで聞き込んでいる様だ。未だ去る気配が無い。」

「困ったな…倉庫の方に荷物を移さないと工場がもう一杯で置く場所が無いんだよな。早く去ってくれないかな。」

「うーん、どうでしょうかね。彼らも命令に従っていの動きでしょうから、上から指令出るまではそのままでしょうね。」

「それは分かっているんだけどね。ちょっとちょっかいかけてみようか?」

「それで何かあったら隊長が責任取る事になるんすけど、良いんです?」

「それはそれで嫌だな。もう暫く手を出さずに様子見か。工場長と輸送長には俺の方から謝っておくわ。」

「こっちも引き続き監視します。なんか動きあったら直ぐ連絡しますが、あいつら酒場でも大人しくしているんで、手は出し辛いっすよ。」

「いや、最悪工場地帯でアレ見られ無きゃ良い。それ以外は大抵大丈夫な筈だ。そもそもニッポンから来た物なんざ何見たって目的も何も皆目分からねえからさ。それと、酒場での監視は全部違う奴だろうな?」

「あ、それは大丈夫です、都度入れ替えて監視してます。」

「了解だ、引き続き頼む。」


そしてマルソーで調査していたジーヴェルト以下4人は、そもそも総当たりで色んな人に聞き込みをしていたが、レティシア大尉が言うような現状に不満を持ち、しかも解放戦線に参加していない、別の何等かの危険集団らしき者に当たらず、かといって偶に解放戦線の奴にあたるがそれも平和主義者だ。というか拝金主義と言った方が良いかもしれない。商売が一番大切だから平和が大切という寝言を力説していた。


「ジーベルト軍曹、こいつら駄目だ。ここらに骨のありそうな奴は居ねえ。」

「ザウケン、調査だぞ。…だが、本当に居ないな。」

「そもそも、港から荷揚げされたきた荷物とか、なんだあの箱。あの箱の中に何入ってんだ?」

「あの細長い箱ばっかりニッポンから持ってきてんのか?変なモン輸出するなぁ…おい、トレスコウ、あの箱に何入ってんのか聞いてみろ。」

「了解、ちょっと行ってきます。」


暫くしてトレスコウは少し落ち着きが無い様子で戻ってきた。


「軍曹、あれ凄いですよ。あの箱の中に輸入品が詰まっているそうなんですが…あの箱の中は全部違う物が入っているそうです。何やら、あの箱自体に冷凍機能がついていて-30度位の冷凍品やら、10度前後で生鮮野菜とか、その他にも機械やら部品やらそんなモンがごっそり入っているそうです。」

「はぁ、そうなのか?すると、見た目とは違って色々送ってきてんのか。ふーん…」

「何考えてんすか、軍曹?」

「いや、アレ俺達の部隊でも利用出来ねえかな、って。ほら。あの箱を車に乗せて移動してるの見たろ?あの箱の中に必要な装備詰めたら、俺達の部隊位簡単に運べねえかな、ってね。」

「お、それ便利っすね!」

「だろ?今俺達に纏わりつく変な視線を気にせず移動出来る、って寸法よ。」

「本当になんなんですかね、この気配。」


ジーベルト軍曹以下4名が3日前からマルソー周辺を調査し始めてから感じていた気配だが、何もする気配が無い。誰かが見ているに違いないのだが、向こうからアクションが無い事でこちらも動けずにいた。そこで態々夜に酒場に出てみたが、やはり何も来ない。しかも共通する顔ぶれが一つも無い。変装かもしれないが、そんな面倒な事をするだろうか?


「ともあれ、今日でマルソーも終わりだ。一旦引き上げる。大尉と合流した上で、今後の方針を聞こう。多分、勘違いだったのだろう。よし、皆戻るぞ。」


その夜レティシアの部隊はエウレルン集合し、何か釈然としない気持ちを抱きつつも翌朝にはエウレルンを後にした。

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