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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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27.舐め過ぎだろ

レティシアの一行はニヴェルと共にホテルの夕食会場のバイキングに行き、そこで沢山のあらゆる料理と酒が居並ぶ状況に夢中となっていた。そこでニヴェルはトイレに行く体で会場を抜け出し、再度アレストンに電話した。


「誰だ?」

「ニヴェルです。」

「おお、抜け出せたか。5分後にホテルの裏手に来れるか。」

「数分なら大丈夫だと思います。裏手ですね?了解です。」

「では。」


ホテルの裏手には馬止めと厩舎があった。既にエウルレン市内では公共交通機関の車が一般的になってはいるが、地方から来るのはまだ馬が使われている為、ホテルの裏手にはそのような施設がある。この施設の辺りをウロウロしていると、ピッタリ5分後にアレストンが自転車に乗ってやってきた。


「ニヴェル、よく来た。」

「アレストンさん、久しぶりです。早速なんですが、俺が村でスカウトした6人なんですが…なんか妙なんです。正直、皆炭鉱上がりはバス乗って国に戻るじゃないですか。でもあいつら、」

「まて、ニヴェル。その話は後で聞く。二点言うので聞け。

 まず1点目。解放戦線に潜入しようとしている奴が居る。もう潜入したかもしれん。これがとても危険な奴だ。そしてその正体が分からん。そして2点目。俺達はそれの対策を整えた。その為、通常の活動では無い事をしている。お前は最近離れていたからそれを知らんので、知らせる為に来た。」

「危険な奴が潜入…解放戦線に?対策ってどんな事ですか?」


ニヴェルの脳裏にはレティと呼ばれる元女中の女が浮かんだ。この女の情報はアレストンさんに渡さないと不味いかもしれない。だが、まずは最後までアレストンさんの話を聞かないと…


「まず、俺達解放戦線は無害な団体を装う。そしてある期間に参加した新規の連中を全て面接する。それにはニッポンの協力により判定をする機械で確認をする。だが、俺達の目的は無害を装い、攻撃する価値も無い、と思わせるのが目的だ。特定が出来ればそいつらを地方に隔離して無害化する。」

「面接?どこでするんですか?」

「伯爵が用意したビルだ。ここから比較的近い。チラシを受け取らなかったのか?あのチラシに住所が書かれている。面接を行う奴は、全てこのホテルに宿泊している。明日にはホテルの方から面接を行う奴の呼び出しを開始する。今の所、面接予定は60人居るが、お前が連れてきた6人を加えて66人だな。」

「そうなんですか…俺が連れて来た連中、全員なんか怪しいです。特に女が。」

「女?どんな女だ?」

「歳の頃なら20歳前後、帝都ザムセンで女中をしていて奉公の任期が終わったので国に帰る途中だって話なんだけど、時々ゾっとするような表情をする時があって気持ち悪いんだ。」

「女か…しかも歳は似たようなモンだな。なんて名前だ?」

「レティって名乗ってる。」


アレストンは笑いだした。ああ、こいつだ、間違いないだろうがもう少し考えろよ。俺達を舐め過ぎだろ。突然笑い出したアレストンを奇異な眼差して見つめるニヴェルに、アレストンは言った。


「明日昼の1時過ぎに全員をチラシのビルに連れてきてくれ。ご苦労だったニヴェル、よくやったぞ。」

「あ、はい。じゃ俺戻りますんで。」


なんで突然笑い出したのかも分からないニヴェルは、怪訝な表情のままホテルに戻っていった。残ったアレストンは笑いが堪えきれないまま自転車に乗ってある場所に向かった。


レティシアはバイキングを楽しみつつも別の事を考えていた。

本来潜入工作する場合、徹底的に状況を調べあげてから潜入する。だが、今回ニヴェルという手っ取り早い対象の出現に飛びついてしまった。その為、明日だかの建物もそうだが、一切の情報が無い。装備自体は持っているので、もしそこで戦闘になっても遅れをとる事は無いだろうが、潜入という任務の性質から戦闘になる事自体が忌避しなければならないのだ。今の所得られた情報からは、対象の解放戦線とやらは危険は感じられない。だが、万が一の事を考えるとどうも気に入らない。そのニヴェルといえば…


「…ニヴェルはどうしたのでしょう?」

「ああ、レティ嬢さん、トイレに行くって言ってましたよ。」

「トイレですか…長くないですか?」

「見に行きますか?」

「お願いしますね、フリースナー。」


そして直ぐにトイレに行ったフリースナーは、トイレに居ない事を確認し慌ててバイキング会場前の広い空間に戻ってきた所、エレベーターで上がってきたニヴェルに出くわした。相変わらず怪訝な表情のままだったニヴェルにフリースナーは声を掛けた。


「どこ行ってたんだい、ニヴェル?」

「ああ、トイレ行ったらここ全部埋まっててさ。下のトイレに行ってたんだけど…」

「行ってたんだけど?」

「もう聞くなよ。…下痢止まんなくってさ。まだ来るな、これ…」

「おいおい、俺達まだ食事中だぜ。汚ねえな。」


ニヴェルの言葉と最初の表情でフリースナーは勝手に誤解した。



アレストンは一旦アジトに戻るとモーリスと伯爵とエンメルスにそれぞれ連絡した。その内容は、どうやら対象が判明した様なので、明日13時に面接を行いたい、と。そこで全員が一度集まった上で対策を行う為に、エウグスト解放戦線事務所にこれから集まる事となった。


「奴らは今、ホテル・ザ・ジャパンに泊まっている。オーリト村のニヴェルが連れて来た6人だ。」

「6人…多いな。構成は?」

「男5人に女1人だ。そしてな…おい、聞いて笑うなよ。女の名前はレティだ。」

「本当か?いや、ちょっと待て。仮にも潜入の専門部隊なんだろ?」

「私がゾルダーから聞いたのは、荒事専門だったが人手不足で駆り出された、と聞きましたね。」

「そうなのか、伯爵?それにしても…馬鹿にされてませんか?」

「いや、そうかもしれませんが…ともかくモーリスさん、明日本番にしましょう。」

「上手く行き過ぎている感じもしなくは無い。この6人以外にも潜入している奴が居るかもしれん。まずは明日本命を確認し、残りは翌日以降で確認していこう。」

「そうですね、わざと目立っての陽動の可能性もありますからね。そういえば、他に女性の参加希望の方って名簿には見当たらなかったんですが?」

「そうなんですよ、伯爵。60名は全員男です。」

「まぁ…基本が危険な事でしょうから、仕方が無いですけどね。了解です、私はこれからタカダさんに連絡を入れますので。明日は城で待機しております。何かあったら連絡下さい。」

「了解だ、伯爵。我々もこれで一旦解散する。明日はここに9時に集合だ。」


そして集まった皆は明日に向けて解散した。

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