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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_18.宴会の夜

稚内 温泉ホテル 午後10時


ガルディシア一行はそれぞれ個室を割り当てられ、部屋に案内された。


部屋には不思議な物が一杯置いてあり、氷も入っていないのに冷える箱や火も使わないのにボタンを押すとお湯が沸くポットがあった。トイレには使用していない時用の蓋が勝手に上がるのだ!しかし、それよりも何よりも物凄い機械があった。

平面のガラス板状の"てれび"という装置だ。

これは遠くで実際に行われた出来事を電波という波に乗せて、それを受けた"てれび"が、その出来事を寸分違わず映し出すのだ。このガラスに映る風景はまるで目の前で起きている出来事の様だ。恐らくカメラが進化する延長線上にある技術のような気がするが…何をどう進化してこんな事が出来るものやら…この"りもこん"とやらで離れて操作が可能なのは、どんな仕組みだ?おまけにストーブも無いのに部屋が暖かい。一体全体ここはどういう仕組みでどうなっているのか?


各部屋で同じような声が上がり、皆テレビを夢中になって見ていた。そんな中、館内放送でニッポン外務省の二階堂の声が各部屋に響いた。


「外務省の二階堂です。緊急のご連絡がありまして、お休み中の所、失礼致します。大至急、5階のお食事処にお集まり頂けますでしょうか?」


急に部屋に声が響く事にびっくりしたが、伝声菅の類だろうか。ともあれ我々が今居る場所は3階の為、皆いそいそと移動した。お食事処と称する部屋には、既に食事が用意されていた。


「ガルディシア帝国の皆様に質問がございます。どなたか、"ドゥルグルの不死の大魔導士"、という言葉もしくは存在についてご存知の方はいらっしゃいますか? もしご存知の方がいらっしゃいましたら、どんな些細な事でも私二階堂まで教えて頂きたくお願いいたします。ご存知無い方々は、先にお食事を召し上がって下さい。今宵は日本が誇る料理の品々を、皆様ごゆるりとご堪能下さい。」


二階堂は切り出した。

政府が、特に総理がまず何があっても今日中に確認してくれ、と指令を出してきたのだ。そこで今までトア伍長に絡んでいたエンメルス曹長が名乗り出た。


「エンメルス曹長だ。不死、ってのは知らんが…会うと死ぬバケモノの話は聞いた事ある。ちょうどこの海の嵐の真ん中にある島の塔に住むバケモノだ。出会うと死ぬ、と言い伝えられている。何故死ぬのかは誰も知らない。あくまでも噂や言い伝えの話だ。俺が知っているのはその程度だな。役に立ったかい? あと、俺からも質問だ。この食事には酒はあるのかい?」


二階堂はにこやかに答えた。


「たんと用意して御座います。質問への回答大変助かりました。ありがとうございました。」


給仕が食事処に大量の酒を持ってきたのと入れ替えに、二階堂は別室にそそくさと姿を消した。ゾルダー中佐は、訝し気に二階堂が去る姿を目で追っていたが、エンメルス曹長にコップを渡されて、振り返った。


「ゾルダー中佐殿!まぁ、1杯呑みましょうや。このニッポンのビール、かなり行けますよ。冷えてて美味い!」


「おい、エンメルス。貴様もう飲んでいるのか。」


「あっ、祖国に乾杯!ささ、中佐殿もどうぞ!」


エンメルス曹長は、酒を注ぎながらゾルダーの耳元に顔を寄せ、声を潜めて話しかけた。


「中佐殿、もしかしてニッポンが知りたい事と、我々が探っている事、…実は中身は同じモンなんじゃないですか?」


「んん?貴様もそう思うか?」


「このタイミングで違う事象、とは自分には思えませんや。」


「俺も先程からどうにも引っかかっているのだ。ただ、それをこちらからニッポンに明かしても良いものか、とな。」


「ニッポンが何を目的としているのか未だ分かりませんからね。恐らく、このホテルはニッポンの仕込みと見るべきでしょうな。普通に会話してたら、全部筒抜けでしょう。取り合えず、ニッポンが何を知りたいのか、何をさせたいのか。まぁ暫くは阿呆を演じて、探り入れましょうや。」


「うむ、頼む。暫くは大人しくな。ん?本当に旨いぞ、このビール。おい、次持って来い。」


「流石中佐殿、よく味が分かってらっしゃる。おい、伍長!トア伍長、ビール!ビール持って来い。」


トア伍長は、宴席のちょうど対角線上の席で料理を喰うのに必死だった。初めて見るものばかりで、何を喰っても美味い。次から次へと出てくる料理に、トアの全能力が目と舌に集中していた。トアの元にはエンメルス曹長の声は聞こえない。


「トアーーー、酒ェ----」


エンメルス曹長の叫び声が食事処で続いていた。


--

危機管理センター 午後10時


「総理!飯島総理!二階堂から連絡が入りました!映像繋げます!」


危機管理センターの正面大きなモニターの内容が切り替わる。


「外務省総合外交政策局 新興国外交推進室の二階堂です。皆様お疲れ様です。連絡が遅くなりまして申し訳ございません。早速、"ドゥルグルの不死の大魔導士"、聞き取りの結果です。彼らガルディシアと称する人達の言い伝えに存在している模様です。曰く、嵐の中心に存在する島に立つ塔に住むバケモノ、との事です。また、"出会うと死ぬ"とも語っておりました。情報以上です。」


防衛大臣がふと思い出す。


「そういえば、佐渡からの連絡で、大和堆辺りに小さな島があるとの報告が昨晩入ってましたが…そこか!」


「そういう報告は必ず上げたまえよ、如月君。」


「は、申し訳ありません…」


「まぁ、昨晩も相当混乱していたから仕方が無いかもしれないが…」


「総理!!!佐渡分屯基地より緊急連絡です!!小木の港に停泊していた輸送艦しもきたから連絡が途絶えました!」


「なん…だと…?」

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