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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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24.歓迎の準備

「ちくしょう、既に招集を開始してんだ、無理だろ3日で用意って!!」

「取り合えず、招集に応じた連中はホテルに入れよう。ホテルの代金はル・シュテルのツケで良いそうだ。未だ説明する場所の用意が出来ていないとでも説明しておけ、アレストン。」

「いや、来る奴は別に良いんだ。3日でそんな建物用意して団体でっち上げろってのが無理だ。」

「無理と思った時から無理になるんだよ。」

「いや、そういう精神論的な狂った言葉は要らないぞ。単純に人手が足りんだろ、モーリス!」

「取り合えず小さなビルの事務所は確保した。伯爵の手配だがな。アジビラの印刷やら何やらは、今マルソーの工場地帯で印刷会社確保して、何種類か印刷している。人手の方は、それらを持ってレイヤー部隊の連中がこれから来るそうだ。」

「後は何だ?事務所の設置と事務員か?それらはどうするんだ?」

「事務員は、伯爵のメイドを3人程確保してこちらに送るそうだ。これらを綺麗に並べればそれなりに見えるだろ。あとは…面談する部屋の設置と事務所内の設定だな。」

「そうか…なんとかなりそうな気がしてきたぞ。」

「何とかなりそう、ではなく何とかするのだよ、アレストン。」

「お前のそういう所、嫌いだぜ。それは兎も角だ。昔街頭演説の時やビラ配った時に余った物は既に全部集めておいた。これも事務所に入れるぜ。」

「ああ。それで良い。ほら、恰好ついて来たろう?」


モーリスとアレストンは、日本の高田からの指示をゾルダーを経由して伯爵から受けた。その指示は3日以内にビルに小さな事務所を開設し、そこを解放戦線の表向きの拠点とする、という指令だ。様々な物や人は伯爵が手配済みで、彼ら解放戦線は表に出られる者が総出で、その事務所を作っていた。だが、3日という期限は彼らに地獄の様な混乱を齎した。そして、彼らの元に伯爵が依頼した応援チームが到着した。


「ああ…敵を撃ってる方がなんぼか楽だな、これは。」

「繰り言言って無いで、手を動かす!!」


伯爵の所から応援に来た年配の女性は、目敏くアレストンの愚痴を聞いて突っ込んで来る。伯爵の所のメイドと聞いて多少は期待していたのに来たのは全員良い歳だった。だが、彼女等は非常に有能で、あっという間に事務所の体が出来上がってきた。力仕事はレイヤーチームが担当して事務機材を搬入し、メイドチームがそれらを整理し、細かい所を整える。そして、壁には大きな紙を繋ぎ合わせて作った簡易スケジュール表に、デモ行進の予定やら演説の予定が印刷したアジビラを元に構成されていった。そして机の上には、今回こちらに来る予定の全員の資料ファイルやら何やらが積み上げられてゆく。


「どうやら間に合いそうだな…伯爵に設置完了と連絡してくれ。」

「承知致しました、直ぐに連絡致します。」



エウルレンの一画でこのようなドタバタが繰り広げられている頃、レティシアの一行はエウルレン鉱山東まで移動し、そして高速バスに乗ってエウルレンに向かっていた。


「なるほど、ニヴェルの言う通りだ。一度これに乗ったらこれは止められん。」

「だろ?このゆったりとした椅子、静かな乗り心地、快適って奴を形にしたら多分コレになるぜ、コルテン。」

「それは言い過ぎかもしれんが、かなり近いだろうな。」

「ははん、そうか。ところでコルテン。あんた達ヴァント炭鉱のどこの宿舎に居たんだい?」

「ん?なんでだ、ニヴェル?」

「いや、なんとなくさ。俺がヴァントを出た頃は、俺の居た宿舎でバスの話題が出てね。まぁ、余りの値段の高さに皆びっくりしててさ。みんな知っているもんだとばかりに思っていたよ。」

「ああ、そういう事か。そうだな、俺はあんまり乗り物には興味無かったからな。」

「そうかい、その割には始めて乗ったバスを随分気に入ってるようだけどね。」


そう言ったきり、ニヴェルは椅子を倒して眠りに入った。

だが、コルテンの頭の中には危険信号が瞬いていた。これは不味い事を言ったかもしれん。普通ならこれで殺す所なんだが、そうすると解放戦線とやらの糸が切れる。そしてコルテンは席から立ちあがると、レティシアの座る後方の席に向かっていった。ニヴェルは薄目でその様子を眺めていた。



「来ましたよー。ああ、初めまして、あなたがモーリスさんとアレストンさんですね?どちらがどっちでしょう?」

「相変わらず動き早いですよね、タカダさん…」

「なんですか、エンメルスさん。早い事は良い事ですよ、大概な事は。」

「どうも初めまして。ニッポンの方とお逢いするのも初めてですよ、モーリスです。宜しく。」

「はい、宜しくです。貴方がエウグスト解放戦線を取り纏めていらっしゃるのですね。」

「どうも、アレストンと申します。以後宜しく。」

「はい、こちらこそ宜しく。さて、早速日本から持ち込んだ機材をちゃっちゃと付けちゃいましょう。伯爵!このビルの見取り図ありますか?あと電気配線の図。ああ、そうそうこれです、ありがとう。あら、貴方は見た事あるような?」

「伯爵の所でメイドをしておりますマイリスです。ご無沙汰しております、タカダ様。」

「ああ、あなたね、なるほど。へぇ、私服はそういう感じなんですか。いいですねぇ、それ事務の服でも通用しますよ。制服的な物って用意してます?してないなら、この格好で大丈夫ですよ。さて…では一気に取り付けますか?今日中に終わらせますよ!」

「あ、手伝います。」

「いえ、日本から専門業者さん連れてきてますので、大丈夫ですよ。そこで見学していて下さいね。」


そして高田は日本から持ち込んだ質問マニュアルの説明を面接を行う人にレクチャーをし、その上で何度か予行演習をした。その様子を専門業者が何やら壁面に取り付けたカメラの角度調整を行っていた。そして別室ではその様子をモニター出来る環境にしていた。別室でのモニターの中には、面接を受けている人の表情を分析して、どういう状態にあるのか分析可能らしい。その様子を見て、改めてル・シュテル伯爵は"この機械も欲しい"と思うのだった。

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