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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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23.再びエウルレンへ

地方に移動していたモーリス大尉の元に、ル・シュテルの使いの者がバイクに乗ってやってきた。使いの者は急ぎ伯爵の元に連絡を入れて欲しいと告げ、ニッポン製の無線機を渡した。これは伯爵が高田から貰ったオフロードバイクが気に入った際に無理を言って、他に何台か都合してくれと言ってみた所、結果として政府の機密費から購入された数台の内の一台である。既に伯爵の車庫には5、6台程のバイクが並んでいた。そして伯爵の使用人達は一通りバイクの乗り方も覚えさせられたのだった。


「あー、伯爵?私はモーリスです、どうかしましたか?」

「良かった、モーリス大尉。急ぎの要件なんだ。先ほど入った情報なんだが、解放戦線にガルディシアの情報局所属の特殊作戦団が動き出したらしい。その団員とやらにとても危険な人物が居る。レヴェンデールの狂女と言われたレティシアという女だ。」

「なんか物騒な名前持ってますね…」

「君は詳しくは知らないかもしれん。だが、私はこの女を間近で見た事があるが…近接戦闘で刃物を持たせたらニッポン装備で固めた君達が何人居ても無傷では済まない。とても戦闘力が高い上に残忍な事この上無い人物で、控えめに表現すると高性能な殺人機械だ。」

「それは…危険そうですね…」

「ああ。ただ、この期間に新規に入った女性、という括りで拘束する事も可能かもしれないが…潜入が一人という事はあるまい。他に何人入っているのかが分からん…」

「潜入してくるのは何人か、どんな奴なのか分からんのですか、伯爵?」

「特殊作戦団は独自に作戦を行うらしい。その内容や人選は団に任されるので作戦指令書を見ない事には分からん、というゾルダーの話なんだが…」

「その作戦指令書は見られ無いのですか?」

「駄目な様だ。作戦中による閲覧封鎖というのが掛かっていて見る事が出来ないらしい、モーリス。」

「どんな奴が来るかだけでも判明すれば対処の方法もあるでしょうが…先程も伯爵も仰ったように該当期間に解放戦線に参加した者を全部リストアップして、個別に呼び出しましょうか?」

「そうだな…やはりそれが一番確実だろうな。」

「ともあれ、目立つ武器は全部回収して隠しましょう。そこは伯爵にお任せして宜しいでしょうか?」

「もとよりその積もりだよ、モーリス大尉。それより早くエウルレンに戻ってくて欲しい。」

「分かりました。…もしかして、このバイクで?」

「使いの者は二人乗り出来るので、君は後ろに乗っているだけで良いのだよ。」

「はぁ…分かりました。あ、これ被るのですか…ヘルメット?ほう。」

「エウルレンに着いたら連絡をくれたまえ。」


そしてモーリス大尉は急ぎエウレルンに戻った。そしてエウルレンの解放戦線本部内で緊急会議が開かれ、ガルディシア特殊作戦団に対する対抗手段の協議を行った結果、情報が入った3日前からの新規加入者のリストアップと、各支部に対して"対ガルディシア工作に関する新規作戦の説明の"体で順次招集を開始した。



そしてレティシア一行はムルソーの港でティアーナ行きの船を調達し、その後ティアーナに着いた後は。ティアーナ港とエウルレン東の炭鉱町を結ぶ連絡馬車を調達した。この道路は未だ舗装化されておらず、随所に車では危険なぬかるむ山道がある為、バスは走ってはいない。だが、道路の建設自体は始まっており、近々にバスが開通する見込みであるのか、ティアーナの街ではあちこちで開通を祈る垂れ幕が下がっていた。


「ところで、そのバスとやらで東の炭鉱からエウルレン市まで幾らかかるんだ、ニヴェル?」

「そうだな。確か…一人1000マーク程かな?」

「1000マークだと!?ここティアーナから東の炭鉱まで、馬車で340マークだぞ?高いな…」

「まぁ、その分安全で快適だからね。1度乗ったら辞められないよ。」

「ニヴェルはバスに乗った事あるのか?」

「1度だけね。話のネタだってんで、炭鉱から解放された翌日に全財産搔き集めて乗ってみた。ヴァントからザムセンを経由してエウルレンに行く片道ね。ヴェント炭鉱上がりなら誰でも一度やる例のアレさ。」

「ああ、そういえばそういう物が在るらしいな。だが、そんな高いのか…」

「コルテン、炭鉱から出てすぐだろ?知らないのも無理はないけど、色々良い物が沢山世の中にはあるんだぜ。そういやぁあんた達、お金は大丈夫かい?俺もギリギリなんだけど。」

「それは大丈夫だよ、心配無い。ニヴェル。」

「それなら良いんだけど、お金貸せなんて言われても俺も無いからな。」

「心配するなって。」


コルテンは当たり障りの無い会話を心掛けていた。そして知らない事は炭鉱上がりという事で誤魔化せていた積もりだった。しかし、この時のニヴェルとの会話の中で、重大なミスをした。ニヴェル自身もこの時には気が付かなかったが、このミスに気が付いた瞬間にニヴェルは彼らを疑い出したのだが、今の時点ではニヴェルは気が付いてはいないのだった。



「と言う事で、ガルディシア当局に目を付けられました。該当する部署は私の居る情報局なんですが、私の上司レオポルドがレティシア特殊作戦団という暗殺専門の部隊をエウグストに潜入調査で入れました。解放戦線に潜入したかどうかは不明なんですが、ちょうどその時期に加入した参加者を全て洗おうとしています。それでなのですが…タカダさん、なんか効率的な確認方法ってありますかね?」

「ああ、ゾルダーさん、随分ややこしい事になっていますね。今の所エウグスト側は大分準備が整っていますが、ガルディシア側つまりゾルダーさん達の体制が全く整っていない事は御承知かとは思います。それ故に、今表立ってガルディシアと解放戦線がぶつかるのは宜しく無いですねぇ…」

「それは私も理解していますが…」

「まずですね、表向きの代表を一人作って下さい。そしてどっかのアジトを一つ使います。射撃場がある建物は駄目です。内部はアジビラとかデモ行進のスケジュールとか、その類の平和的な活動のみの情報を集めて置いておいてください。その中に事務局作って、女性職員を設置しましょう。3日以内に出来ますか?」

「難しいですね。伯爵とモーリスに相談します。」

「難しければ、レイヤー部隊も使って構いません。その解放戦線の活動は、以前行っていたデモ行進とかあの辺りの延長線上で、"帝国にとって脅威にならない程度に煩い"存在である、という線で進めます。なので、表向きの代表と表向きの団体の実態をでっち上げるのが良いかと。潜入されても見せるのはソコです。」

「ああ、つまり潜入される事前提で、しかも疑われない部分を見せる方向ですね。では…参加者全部洗うというのはやらない方が良いのですか?」

「いえ、表向きの団体を見せている段階で確認します。それはこちらから機材を持ち込みますので、準備が出来たら教えてください。」

「機材…?何を持ち込むんですか?」

「ああ。ええと。カメラで対象の表情の確認をする機械ですよ。これで心理学的に色々と判断する事が可能になりますので、恐らくこれで全員確認出来るのではないでしょうかね。一応、疑われない方向で動くので、確認だけで済ませますけどね。人相が特定出来たら、やんわりと組織から排除する方向で。」

「はぁ…表情で…それは何時ぐらいに?」

「そちらの準備が出来たら連絡下さい。私もそちらにお伺いしますね。」

「あっ、タカダさんがこっちに来るのですね!分かりました、宜しくお願いします。」

「はい、準備よろしくお願いしますねぇ。」


そして再びエウルレンにはガルディシア、エウグスト、そして日本の思惑が複雑に絡みついた者達が集合するのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 日本語がおかしいです。 ニヴェル自身もこの時には気が付かなかったが、このミスに気が付いた瞬間にニヴェルは彼らを疑い出したのだが、今の時点ではニヴェルは気が付いてはいないのだった。 ↓ …
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