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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
182/327

18.グラーフェン中佐の了承

ル・シュテルからの一通りの説明を聞き、実際に触ってみた。

それらの銃器の実働を未だ知らなかったグラーフェンは、その連射性能の高さと弾の交換の速さに感嘆していた。これが敵となる物の手にあり、こちらを向いている事を想像するとグラーフェンは心肝を寒からしめた。しかも3000丁は大袈裟では無かった。実際にはその数にやや足りない程度は揃っている。弾薬の類も。もし仮に、この現状を帝国に報告した結果として軍が動いても鎮圧など不可能だろう。何せ、相手の方が連射可能であり、尚且つ射程も威力も上なのだ。全く相手にならない。また、帝国の戦術レベルで対抗出来ない。正面への打撃能力を上げる為に開けた平野で横一線に並び攻撃するガルディシアの戦闘方法は、この連射銃の良い的だ。ガルディシア陸軍が同じ戦法を取り続ける限り、この銃を持った一人の兵で幅50m程度は連射銃で守る事が出来るだろう。会戦の一撃でどれ程の兵を失う事になるのか…グラーフェンは海軍であったが、容易に想像出来た。


「ううむ…分かったゾルダー。俺も協力しよう。だが、仮に皇帝を倒すとしてその後はどうする?皇帝の代りに誰かまた別の皇帝を立てるのか?仮に皇帝を立てたとして簒奪と言われて正当性を後に問われた挙句に、更に国が乱れる事になりはしないか?それに、元々皇帝とその一族が帝国にどれだけ居ると思う?簡単じゃないぞ?一番難しい所は、権力の譲渡をどういう形にするかだ。」

「そこは詳細を詰める必要があると思うが、一応俺の考えは皇帝の遠縁であるアルスフェルト伯爵を擁立する。」

「いや、それは無理筋じゃないか?そもそも、伯爵よりも継承順位が上の奴は山ほど居るぞ?」

「確かに居るな。だが、そもそも皇太子は蟄居中で頼みの綱である第二軍は壊滅している。皇帝と仲の良かったグロースベルゲン公爵も戦死した。ロトヴァーン侯爵は政治に興味が無いしな。あとはあれか。年端も行かない子供達か?」

「そう考えると意外に絞られてくるものだな…」

「そしてエウグストの独立に合わせて、ガルディシアも帝政では無く別の政体にする事が望ましい。」

「そこまでやる積もりなのか?」

「いいか?恨みを持ったエウグストの連中が力を持って俺達に攻撃してくる。だがその前に、俺達はその恨みの元である皇帝を倒して、別の存在をそこに据える。だが、据えた結果が同じ帝国なら…お前、どう思う?」

「ああ…帝国を名乗るなら単なる内輪もめで、何れまた帝国がやっていた事と同じ事をやるとは思うだろうな。それが故にエウグストの攻撃が止む事は無いだろうな。」

「だから、帝国としての政体は捨てなければならない、と思っている。そうする事によってエウグストの怒りの矛先を旧帝国に向けさせる。新生ガルディシアには、その怒りが向かない様にな。だから、別に王国でも公国でも自由国でも何でも良いんだよ、帝国でさえ無ければ。」

「そうか…そうすると次の問題は、帝国内にそれを受け入れる奴と受け入れない奴に分かれる事だな。最悪、内戦になるぞ。」


そうだ。ガルディシアでは皇帝を担ぐ勢力は大きい。その皇帝のカリスマによって帝国はバラディア大陸の統一を果たしたのだ。だが、その統一した結果に生じた歪みは全く正されないままに次の戦争へと進んだ過去がある。そしてそれは日本の介入によって停止したままだ。他国の占領を望む勢力は未だ多い。それは海軍でも陸軍でも同じ事だ。だが、これが仮に反乱者によって政権の簒奪計画が明るみに出たら?勢いそれは帝国内のあらゆる勢力が柵を超え、反乱者に対して牙を向けるだろう。つまり内戦というよりは、簒奪者に対しての粛清のように動く筈だ。その為に、ガルディシア政権内や軍部に味方を作っておかなくてはならないのだ。


「他国からの攻撃、例えばエウグスト側の攻撃さえ無ければ大丈夫だろう。ル・シュテル伯爵が抑えてくれる。その為の実力組織が向こうには既にある。そして話し合いも既に終わっているんだ。それとニッポンの政府側も、ガルディシアが別の政体となるのが望ましい勢力があってな。そっちとも話は付けてる。」

「そっちは手回し早いな。だが、逆に我々ガルディシア側の方は全然組織化されていない様だが?まだまだ随分とこっちの人が少ない所が目に付くぞ。」

「ああ、そいつは仕方が無い。そもそもこうまで伯爵が力を付けて来たのが予想外だったんだ。俺の計算ではもう少し後になる予定だったんだがな。それと第二軍の攻撃と壊滅も良い方に誤算だった。あれのお陰でかなり早まったと言える。その為、今の所はガルディシア側で協力者は陸軍第二軍の准将位しか居ないって所だ。人と言えば、お前が乗っていた戦艦アレンドルフの乗組員で使えそうな奴はいないのか?この前、俺のガードに来てくれた連中とか。」

「居らん事も無いな。まああいつらにも当たってみるよ。で、その第二軍の准将って誰だ?」

「クレメンスって聞いた事あるか?」

「皇太子ドラクスルの懐刀か!あいつもこっち側なのか!?」

「ル・シュテルの紹介でな。まぁ、あくまでも俺達は表に出ないで勢力を伸ばさんとならん。何せ反逆行為だからな。」

「そりゃそうだろう。…お前、自分の上司に気を付けろよ。レオポルドはかなり切れるぞ。」

「ああ、それは気を付ける。彼の人脈を考えると引き込みたいんだが、危険そうだしな…」


こうしてガルディシア内部での反皇帝派閥は非常に遅々とした動きではあったが形成されていったのだった。

今日は熱もあるのでもう休みます…

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