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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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12.モーリス大尉との話し合い(強制)・前編

居酒屋「赤牛亭」に入った4人は壁側の隅のテーブルに座った。


「さて、じゃあ乾杯と行くか。」

「何に乾杯するんだよ、モーリス。」

「そりゃ山岳の魔物ことベールの参入にだ。」

「ははっ、こりゃあどうも。

 ところで工場とやらは大丈夫なのかい?」

「いや、今はその話はいいよ、ベール。それより例のデール海峡輸送部隊壊滅の話を聞かせてくれよ。」

「なんかすっかり主役の座を取られちまったぜ、しょんべんしてくるわ。」

「トイレの場所は分かるよな、レパード。」

「おいおい俺は前にも来た事あるぜ、まだボケちゃいねえ。」


しれっとトイレに行くとレパードは第一レイヤーに"赤牛亭モーリス確保成功、ベールも居る、対応求む”と連絡した所、折り返し返信があり"モーリスが確保出来たなら急襲は無し"とあった。すると、ここに確保部隊が来る、という事か。だが、店内の客のどの程度が解放戦線なのか不明だ。一応、それとなく探るか…そしてレパードがトイレからテーブルに戻った時には既にベールの独壇場だった。


「でな!こうあいつらの軍が一本道で上がってくるだろ?で、その先で会敵する訳だ。当然前列は停止して攻撃に備えるよな?でも後列はそうはイカねえ。一応連中も警戒はしているが、前列に意識が集中し始める事を見計らって、後方から挟撃する訳よ。で、前後に挟んだ状態で中央を突破するのさ。その後は包囲して蹂躙だ。この手で何度か連中を壊滅させたぜ。」

「そりゃ山岳の魔物って言われるわ。指名手配も頷けるよベール。」

「そりゃ誉め言葉かい、モーリスさん?」

「モーリスで良いよ。ベール。その後はどうなったんだ?」

「そうか?じゃそう呼ぶよモーリス。まぁ、最後は手の内バレて逆包囲喰らった挙句に俺の部隊は全滅だ。同じ手口は何度も繰り返しちゃならねえ、って事を学んだよ。ただ、包囲するタイミングはお手の物だったんでね。仲間が包囲される直前に引いて、俺達だけは助かった。その後は、あっちこっちを彷徨ってね。そして今日に至るって訳さ。」

「そうだったのか。いやあんたも苦労したんだな、ベール。だが、百戦錬磨のあんたが加わったんだ、心強いよ。」

「ははっ、むず痒いな。さて、そろそろ効いて来る頃なんだが。」

「ん?何がだ?」

「ちょっと会って貰いたい人が居てね。そこまでご足労を願いたいんだ、モーリス。」

「…誰にだ?…あれ、なんだ…??猛烈に眠い…おまえ、まさか…」

「うん、まさか。その正体はコレよ。」


ベールは懐から小瓶を取り出した。

小瓶の中身は空になっている。

それを見たアレストンは激高しつつ叫んだ…つもりだが声が全然出ない。


「き、きさま…俺にも…どうして?」

「効くのは速いが切れるのも速いらしいよ、アレストン。あんたは俺にとっちゃ戦友だ。ついでといっちゃ言い方悪いが、あんたも一緒に来て貰うぜ。大丈夫、死にはしない。」

「レパード…?まさかお前等が…」

「うん。そのまさかなんだ、すまない。」


そのまま凄い目つきでベールとレパードの二人を睨みつつテーブルに突っ伏したまま、寝息を立て始めた。ベールはレパードに目配せをしつつ、二人を抱えて店の外に一旦出た。幸いな事に今日の赤牛亭には解放戦線の連中はここに居なかった様で、彼らを抱えて外に出ても注意を払う者は一人も居なかった。店の外では既に第一レイヤーが待機し、影にワゴン車を止めていたので、そのまま彼らを乗せた後に暗闇に走り去って行った。


ちょうどその頃、アジトでは彼らが呑みに出ていった後で、中国人の家が全焼したと駆け込んできたジョルジュという者が居た。彼は中国人の家からは若干離れた場所に住んでいたが、消防車やら救急車やら日本から持ち込まれた緊急車両が山ほど来たので野次馬で見に行った先は中国人の家だった。


消火活動を終え、機材を仕舞う消防職員に対し、ここに住んでいた連中は自分の知り合いだが何があった?と聞いてみた所、中から5人の焼死体があり、火元は5人で酒盛りをして飲み潰れた後に、タバコの火がきちんと消えていなかった為にそこから出火したが、皆は日本酒を呑み過ぎていた様で誰一人逃げられなかった、という話だ。テーブルには4本も空の一升瓶が転がっていたらしい。


だがこんな時間に意識を失う程、酒を飲むか?しかも5人全員揃って?どうにもタイミングが良すぎる。アジトに残った連中は、何かきな臭いモノを感じてモーリスを呼びに行った。だが、既にモーリスは赤牛亭を出た後だった。しかも意識を失う程呑んだらしく、連れに抱えられて出ていった、という店の主人の話から、この二つの出来事に共通するような、何か嫌な予感が的中しつつある気がしていた。


そしてその数時間後…


「む…こ、ここは…?」

「あ、お目覚めになりましたね、アレストンさん…でしたよね。私、日本の内閣諜報室という部署に所属しております高田と申します。今後とも宜しくお願いいたしますね。」

「なんだ!これはなんだ!!俺達を解放しろ!」

「ああ、前評判通りの性能ですね、この薬。効くのも切れるのも速い。すいませんね、先ずは大人しくお話を聞いて頂きたいんですよ。その為、手足を拘束させてもらってます。もしお話をきちんと聞いて頂ければ、手足の拘束はおろかあなた方をアジトまで無事にお届けしますので。」


その時、モーリスも目覚めた。

そしてベールとエンメルスも室内に入ってきた。


「…む、ベール?一体何の積もりだ!?これを外せ!」

「まずは自己紹介から。先ほどアレストンさんにはしたんですが改めて。私は日本政府の内閣諜報室という部署に所属する高田と申します、宜しくお願いしますね、モーリスさん。」

「ニッポン人!さては、李さんが言ってた特殊部隊とその配下のエウグスト人か!」

「あらら、そこまで推測しているんですか。中々鋭いですねぇ。でも、先ずは手足の拘束を解く前に、この方に入って頂きましょう。どうぞ、伯爵。」


部屋奥の扉からル・シュテルが室内に入ってきた。


「貴様はル・シュテル!この売国の裏切り者!!」

「この枷を外せ!!こいつだけは殺してやる!!」


二人同時に、ル・シュテルを見て激高した。

ル・シュテルは若干顔を歪めつつ黙って二人を見ている。


「うーん…こうなってしまうから、両手足の枷が外せなんですよねぇ。残念な事に。」

「どうしてこんな目に。こいつだけは…こいつだけは…!!!」

「いや、ええと。お話聞いて欲しいんですよねぇ、お二方。宜しいです?」

「ニッポン人が何故口を挟む!なんの積もりだ!!」

「一言で言うなら国益の為ですかねぇ。私の国の言葉にこんな言葉があるんですよ。正義なき力が無力であるように、力なき正義もまた無力である、と。貴方方は正義はあったかもしれないが力が無かった。だから今こういう目に遭ってます。ちなみにガルディシアは正義無き力ですかねぇ。」

「何を詰まらんお為ごかしを。いいからこの枷を外せ!」

「さて。貴方方の意向は兎も角、こちらの話を聞いて貰いますね。」


高田は、二人を前に話し始めた。

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