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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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08.納品業者の特定

「李さん、ちょっと気になる事がある。」


出入りの納品業者オロイスが、納品先の李という工場主に問いかけた。

オロイスは加工前の金属と、加工品の金属を扱っている。元々は別の業種で小さな成功を収めていたが、日本の進出に伴い、前の商売を辞めてマルソーで輸入された金属を購入して加工業者に収める仕事を始めた。だが、そもそも金属加工はガルディシアの方が盛況でマルソーは当時そうでも無かった。その状況から、商売を立ち上げてから暫くの間、苦境に陥っていた。


そこに現れたのが、李という人物だ。李はオロイスの状況を調べ上げた上で、オロイスが希望する値段よりも高く品物を買う代りに、絶対工場の場所と俺の名前は出すな、という契約を持ち掛けた。別に難しい条件でも無い上に、高く売れるとなったオロイスは一も二も無く飛びついた。そして暫くは何も問題無く商売は続いた。ここの所、李の工場で見かける顔が増えて、要求する資材の量も跳ね上がり、李に納品する事で得られる利益によりオロイスの商売は成功していたのだった。


そして今日。オロイスの会社に見慣れない商売っ気の無いエウグスト人の二人組が、商品を見せて欲しい、と聞いてきたのだ。オロイスも何年も商売をしてきたから分かる、明らかに買いたい気持ちが見えない二人。その二人は、どこから仕入れ、主な取引先をそれとなく会話の中で探ってきていた。その時は冷やかしかと思っていたが、李さんの顔を見て思い出した。彼の契約の条件に何か触る出来事なのではないか?と。そこで、二人組の話を李にしてみたのだった。


「李さん。あんたは俺の商売の成功のカギを握っている。

 あんたが大量に購入してくれたお陰で今の生活がある。

 もしや何かの面倒に巻き込まれてないかい?

 あんたの為に、協力するよ。」


オロイスはお人よしな奴だ、言わば日本人の様に。

オロイスからの話を聞いた瞬間に、李はオロイスを殺すかどうか迷った。だが、ここでオロイスを殺したとしても、入手経路は契約の段階で辿り着けない筈だが、倉庫や家を調べられたら何かの証拠が出てくるかもしれない。それなら…今殺さずとも、後で倉庫毎不幸な火事か爆発事故でも事足りる。


「オロイスさん、大丈夫ね。私なにも悪い事してないよ。でも悪だくみする人ここには沢山いるね。あなた商売で成功したから、あなたのお金か何か狙っているかもね。」


「ああ、李さんじゃなく俺なのかもかぁ…」


「そうそうアナタかも。気を付けてよ。」


「そうだね、気を付けるよ、李さん。ありがとう。」


オロイスは李に礼を述べると早々に会社に戻っていった。

しかし納品業者に目を付けられるとは、動いているのはどこの組織なんだろう。このガルディシアでそういう組織力を持つ連中は…いつぞやのゾルダー襲撃時に俺達を制圧した部隊か。姿こそ確認出来なかったが、森の中での圧力は相当なモノがあった。しかも直観なのだが日本人では無いように思う。あの連中ならリベンジの機会が訪れたという事だろうか…


だが、あの組織の正体は何だろう。

あの時はガルディシアが背景に居ると思ったがどうやら違う。恐らく予想だがガルディシア人やエウグスト人の組織であるならゾルダーを襲った際に、気絶では無く殺すからだ。ある意味殺すよりも気絶させる方が高等だ。それを行う事が可能な組織とするなら…だが日本人では無いとしたら…未だ見ぬヴォートランやエステリアから来たのか?あの技量は侮りがたい。対抗可能なのはここに何人居るだろうか…李は、思考の海に沈みつつ答えの出ない解答を探していたが、別の納品業者の来訪により中断した。


「李さん、居るかい?トレント商会だが…」


・・・


「ビンゴでしたね、ランバート軍曹。」


「おお、こうもあっさり駆け込むとは思わなかったよ。

 さて、エンメルス曹長に連絡するわ。

 "特定完了 ランバート"、送信、と。」


「いや最初に買う気も無いフリしろとか言い出すから気が狂ったのか、と思いましたよ。」


「如何にも怪しいだろ?そしたら心当たりある奴は当然相談しに行くわな。」


「考えて無いように見えて、しっかり考えてたんですね…」


「おまえちょっと俺を舐め過ぎだわ、トーマ。

 …お、返信来た。"こちらも特定完了 エンメルス"だってよ。

 もしかして怪しい3カ所のうち、2つだったのかな?」


「いや、それは…もしかしたら全部そうかもしれませんよ??」


「それならそれで話は速いわな。ともあれ一旦戻ろうか。」


「了解っす。」


事実はトーマが予想した通り、李の秘密武器工場は疑わしい3カ所全ての金属販売業者から納品されていた。全て同じ条件を持ち掛けていた事が後に判明したが、業者同士はその事を知らない。だが、物の流れが分かり納品先も分かった段階で、レパードの潜入の意味が大分薄れた事から、一旦レパードを回収した後に改めて工場殲滅と関係者の確保を行う為の作戦を練った。


レパードは潜入先にて既に部隊が秘密工場を特定したという情報を無線機で聞いて落胆した。だとすると、俺がここに居る意味も無くなるな…すると、どうやって抜け出すか。…アレストンを誘って酒場に行こう。ついでにあいつを情報源として部隊の皆で確保するか。あいつには悪いが…


レパードは、レイヤーチームの作戦方針が当初の方針と微妙に違ってきている事を知らない。その為、彼が脱出の手段としてアレストンを巻き込んだ事が、結果としてアレストンを救うと共に、そのアレストンから相当恨まれる事をレパードは知らなかった。

きょ、今日も凄いアクセスなのぉぉぉぉ

という訳でテンション上がったので本日3本目。

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