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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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07.製造工場はどこだ?

「ふぁー、外の空気は美味いな、おい!」


エウグスト解放戦線のアジトに引き入れられて三日、ようやく外に出る機会を得たレパードだった。それまではモーリス大尉に会わせるという話でアジトに入った筈が、別口で現地の官憲と面倒事を引き起こした奴がおり、ずっと現地官憲に監視された状況の中でアジトからの出入りも制限していた為、それに影響されてレパードもついでに外に出られなかった。逆に三日間の缶詰のせいでアジトで籠った連中とも仲良くなり、解放戦線の組織構成や全体像が朧気ながらも把握出来たのだった。


目的の官憲と面倒を引き起こした奴は、そもそもこのアジトとは別のアジトに入っていたのだが、見張られていた場所に頻繁に出入りが目撃されていた為、監視の対象となっていたのだ。だがその面倒を起こした奴が別の場所の大通りで逮捕された為、監視体制は解除された。その隙に、直ぐに第二のベールに連絡して、武器製造工場の場所を突き止める事を連絡しておいた。


それにしても、解放戦線のアジトは要塞だ。地下1階に射撃場があり、地上部分の建物は外からの見た目は他の建物と変わりが無いものの壁が厚くて音を漏らさない。そして入り口は突入に備えて小さい作りとなっていて、通路も直線が少ない。内部構造も籠城に適した作りになっている上に、地下の射撃場からの地上脱出口まである。解放戦線では、こういう構造のアジトがエウルレン市内だけでも3カ所もあるらしい。そして武器工場は、また別の場所なのだ。


地下の射撃場には、マルソー港でよく見る素材が使われており、聞くところによるとマルソー港で港の拡張工事をしていた際に、このアジト建設用にセメントをちょこちょと盗んできては使ったとの事だ。このアジトは解放戦線にとっては最新式で、他のアジトはこれ程の設備を持っていないらしい。それは材料の調達がエウルレンでは容易である事も理由の一つなのだが…マルソー港の管理能力を問われる状況はあまり宜しい事ではなかった。


「さて、第二への連絡も済んだし…どうやって場所を調べるかね。」


現状の報告をベールに伝えた後に、レパードは今後の方針を考えていた。

李の秘密武器工場はエウルレン市内ではある。しかしそこに立ち入る事が出来るのは解放戦線の幹部だけだ。そして、そこから出て来た武器は一旦倉庫に移動する。倉庫への移動も、幹部が信頼する一部の者のみだ。あとは、製造工場で作業をする工員達。最後に原料資材を納入する業者。直接関わっているのはその位で、あとの組織の連中はどこから武器が来て、どういう由来かを知らず、地下の射撃場で撃っては感激しているボンクラ共だ。


地下の射撃場といえばそこにあった銃だが、実際に触ってみると銃自体は新品の状態だったが、工作精度が甘いのか、組立が雑なのか、自動小銃は非常に命中率が低かった。そして撃った反動も大きく、連射で撃つと抑え込むのに随分力が必要だった。これではニッポンの銃を比べて同等とまではいかないのは良い知らせだ。ただ、ガルディシア軍を相手にする分には無敵を誇る性能だろう。当初解放戦線は、中国人に教わった通りに自動小銃を56式自動歩槍、拳銃を54式手槍と呼んでいた。ただ、直ぐに面倒になったのか、単に56と54という通称になったようだ。総じて近距離では侮れない。


そういやぁ、アレストンの奴も幹部の一人だったっけ。だとするなら、あいつに取り入っとくと何か情報が掴めるかもしれんな。奴なら戦友繋がりで、もう少し色々情報が得られそうだ。

レパードは再びアジトに戻っていった。


エンメルスは、マルソーに入ると早速調査を開始した。

ガルディシアでは、生産された金属はエウレルンに入る事は無い。それらは100%帝都東の都市ヴァントに入り原料となる。では、エウルレンで金属が関連した製品を製造する場合はどうするのか?それらの調達は全て日本からの原料輸入となり、マルソー港で陸揚げされ一括管理されている。つまり、銃の製造に必要な金属の港からの流れを追えば、恐らく辿り着けると読んだエンメルスは、マルソー港で陸揚げされ、一括保管されている金属資材置き場からの横流しや横領品のチェックし始めたのだ。


「おいトア、パソコン置いてある場所ってどこだったけ?」


「え、なんですか?曹長のノートパソコンですか?」


「そそそ。いや表計算使えるなら何でも良いんだけどさ。」


「あー、じゃ俺の使って下さい。あと曹長のパソコンはどこだか知りません。」


「ありがとな。ていうかドコ行ったんだろう…ま、いっか。」


エンメルスはトアのノートを使って、調べた情報を入力し始めた。在庫の状況、入った数、出ていった数、どこに出ていったか、出た先は何を作っているのか?等々。最終的に、色々数値を入力した結果、どうにも納品数が急上昇した納品先を発見した。そのうち身内を除くと3か所だ。更に、横流しや横領自体は見つけられなかったが、棚卸時における在庫総量の修正が頻繁に発生していた。恐らくだが、在庫としておいてある原料が港の倉庫から盗まれている可能性が高い。


「おっしゃ、三カ所に的を絞ったぜ。

 あとはそこ回って調べてみるか…トア付き合えよ。」


「えー、パソコン貸して、挙句に俺も付き合うんですか?」


「なんだよ、付き合い悪いな。もしかしたら銃撃戦になるかもしれん。射撃の腕が良い君をボクは大募集している!」


「なんですかそれ。褒めても何も出ませんよ。」


「いや、冗談はそこまでとして。服を着替えろ。あと車を用意してくれ。恐らく銃撃戦にはならん。今日は探るだけだ。三カ所の納品先は、恐らく仕入れるだけで武器工場はその先だ。あと4人必要だな…。

ランバート、ヴァンサン、トーマ、ルーホン、こっちに集まれ。何をやるかはこれから説明する。明日には中国人の密造武器工場を突き止めたい。そこで、武器工場に原料を納品していると思われる業者を3社に絞った。今日中にこの納品業者を確認したい。俺はトアと、ランバートはトーマと、ヴァンサンはルーホンとそれぞれ組んで納品業者にあたってくれ。それと、一般人を装え。あくまでも商取引をしたい方向で粉かけろ。それと、疑われたら直ぐに引け。いいか、絶対に銃撃戦とかするなよ。」


日本側エウグスト人部隊は、武器工場を突き止めるべく動き出した。


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