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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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03.李さんの武器工場

「まずは、ね。モーリスさん。アナタは私の事をドコまで知ってるの?」


この小工場の主は李と名乗っていた。

出身は別の国だが日本を経由し、そしてガルディシアに流れ着き、首都ザムセンに暫く居たが皇帝にザムセンを追い出されて、この工場に至るという所までは聞いている。だが日本に居た頃の話は滅多にせず、出身の中華人民共和国の話と、如何にガルディシアの皇帝が阿呆なのか、という事を何時も言っていた。


「そうね。おおまかに言えばそうよ。だけどね、私日本に居た頃の話はここではしていない。実は肝心なのはその日本に居た理由ね。」


「それは…ニッポンが障害になる事と関係あるんですか?」


モーリスは、このような武器を製造可能な能力を持つ李という人物は真っ当うな人物では無いとは思っていた。そこに踏み込む程に親しくもなく、また相手からは信用されてはいないだろうとも思っていた。だが、これは良い機会だろう。ここでお互いが信用に足る人物と判明したならば、これからこのエウグストで起きる何かに有利に働くかもしれない。


「関係大有りよ。私がここに居る理由はそもそも元の世界で、我が偉大なる祖国中華人民共和国が日本を占領する際の破壊工作員ね。」


「な、なんですか?中華人民共和国がニッポンを?占領?すると、こちらに来る前はニッポンは戦争中だったのですか?」


「違うね。戦争をせずに乗っ取ろうとしたね。日本は阿呆の国ね。我々が笑顔で近づくと警戒もせずに何でも差し出すお人よしね。だから大量に我々は日本に移住したね。そして徐々に勢力伸ばしたよ。色んな土地も買ったね。表向き日本人装って裏は私達よ。そして日本はシロアリに喰われた様に、あちこちに我々の拠点作ったね。仕上げに日本が祖国に攻撃を仕掛けたという形にして、我々の軍が日本に来るね。そして日本に住んでいる我々が一斉に蜂起して内部から混乱を拡大させるね。我々の仲間政治家も沢山居るね。内部の混乱を制圧するような動きを見せたら、我々の仲間の政治家が人権蹂躙とかで暴れるね。更に仲間の政治家が、祖国に対して要請するね。日本の治安を守ってくれと。その要請を受けた中国人民解放軍が日本に入り込むね。それで日本終わりよ。」


俄かには信じがたいが、この李という者が語る内容は彼の能力を見れば頷けた。何せ、盗んだとは言え必要な工作機械を揃え、稼働させる為に電気を盗み、このような小工場を作り上げているのだ。


「でも、この移転で駄目になったね。一度諦めかけたよ。でもね、近くに良い国あったよ。好戦的で日本を頼りつつも心の底では嫌っている、ガルディシア帝国ね。でもここの皇帝も阿呆ね。」


ああ、それで先程の話に繋がるのか…

モーリスは同じく日本に対して良い感情は持っていない。だが、帝国第二軍を殲滅する程の武力は無視出来ない。対抗が出来ないのであれば、対抗可能な状況を作れば良い、とも思っている。その状況を作るにあたり、李という中華人は相当に役に立つ。だが、話している内容は本人は気が付いていないのだろうが、相手の善意に付け込む相当に腹黒い手法を平然と言っている。つまり本質的にガルディシア帝国の連中と変わりない性質だ。


「それで帝都から出てきたのですね。」


「そうね。あの時、我々何も持っていなかったよ。電気も工具も機械も。なのに、自動小銃作れとか無理ね。なので日本から部品を送れるように手配したね。でも私の通信がどこかで漏れてたね。迂闊だったよ。私の日本の組織、それで一網打尽になったよ。私も阿呆ね。そこで皇帝から追い出されたね。日本から持ってきた武器は全部取り上げられたね。でも知識は取り上げる事出来ないよ。」


「ああ、それでここに武器工場を作り上げたんですね。」


「そうよ、私は受けた命令はやり遂げるよ。例え、命令出した側が居なくなっても、その命令自体は生きているね、私の中に。でも今は力が足りないね。でもガルディシア帝国につく事ももう無いね。皇帝は私の前に跪かせて土下座させた後で、頭をぶち抜くよ。それを実現する為にアナタ達に協力するね。」


「有難う御座います。とても期待していますよ、李さん。」


「私もアナタ達に期待してるよ。皇帝を殺し、この国を乗っ取り、ガルディシアを乗っ取り、最終的には日本を占領するね。当初の目的からは随分と遠回りだけれど仕方がないね。人も武器も足りないね。」


どうだろう…李が言う様にエウグスト人はニッポンに対して攻撃出来るだろうか。ガルディシアの海軍や陸軍の連中にはニッポン軍への恐怖が刷り込まれている。だが、ニッポンに対しては悪い感情はあるだろうか?正直、ガルディシア第二軍殲滅の報を聞き、最初に沸いた感情は歓喜だ。恐らく他のエウグスト人も同様だろう。それを成し遂げたニッポン軍に攻撃をする?如何なる理由によって?

なるべく顔には出さぬようにしていたモーリスであったが、李はその感情の動きを見抜いたのか、更に言葉を繋げる。


「今はアナタ達も疑問に思うだろうね。でも、日本は本当に悪よ。力があるのに行使の仕方を知らない。能力があるのにそれを使わない事そのモノが悪ね。なので、それをはっきりと分かるように我々が支配して、その力を世界に向けて存分に行使するよ。その為には日本を占領して自由とか権利とかは奪わなくては駄目ね。それは我々の役には立たないね。」


「いや、そこまでは私の想像の外の話だよ、李さん。まずはエウグストとしての主権奪回。領土の確保。我々は地勢的にバラディア大陸中央に位置する。戦略を誤ると南北から攻められる状況となってしまう。だから、そうならない様な戦略を立てねばならないんですよ。その戦略の柱となるのが、李さんの武器だ。まずはそれを必要な数をそろえなければならない。そして次に来るのはニッポンの対応だ。ル・シュテルの領域に手を出さなければ動かない可能性もあるだろうが、可能性にかけて敗れる愚は犯したくない。だから、聞いているんだよ、李さん。」


「私、先程答え言ったよ。日本はお人よしの阿呆と。笑顔で接すれば容易く騙されるね。その時まで笑顔でいれば問題無いよ。私達の武器で倒れる瞬間まで笑顔でいたら良いね。」


「それとモーリスさん。私、足りないモノあるね。火薬全然足りないよ。弾作っても雷管と発射薬無ければ撃てないね。あなたの組織に言って大至急調達して欲しいね。それと、この工場人不足ね。ついでに倉庫も用意して欲しいね。手狭で人不足。この二つ今問題。」


「分かりましたよ、李さん。それは何とかします。」


モーリスはこの李という男に言われるがままに対応し続けるが、果たしてそれは将来的に重大な問題を発生させはしないだろうか?と懸念だけが増大していった。

昨日からアクセス急増なんですが、これは一体何が起きているんですか…

別のどこかで晒されているのでしょうか。

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