表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
161/327

84.エウルレンへの移動

「いやぁ、今戻りましたよ。」


「こ、これは旦那様!よく生きてお戻りに…」


「迷惑かけたね、アルノー。」


ル・シュテルはガルディシアに拉致されて、エウグスト市中央総督府にある北の塔に幽閉されていたが、第二軍敗北の際に、ドラクスルからル・シュテル解放の符丁を聞き出し、そのまま北の塔を急襲した。北の塔では見た事の無い物が飛んできて、そこからワラワラと人がロープを伝って降りて来たのを茫然と眺めていると、降りた軍人が皇太子と関係者しか知り得ない符丁を言った後で、ル・シュテルの場所はどこか?と尋ねられた為、直ぐにル・シュテルを解放した。そのまま空飛ぶ物が広場に着陸し、ル・シュテルを伴って乗り込み直ぐに飛び去った。それから護衛艦ひゅうがに降り、そこから暫く船の旅だった、ル・シュテルが知っている船とは全く構造が違っていた。そもそも、マルソーの港に日本からの輸送船がちょくちょく入港するので、自分達の持つ船とは全く違う事は理解してはいたが、それも外観から想像するだけであった。ところが今回図らずも日本の船に乗る事になり、ル・シュテルは色々と艦内を許される限り見て回った。そして、比較的マルソーに近づいた所で搭載のヘリに乗り、ル・シュテルの居城へ送ってもらったのだ。


「さて、何か変わった事はあったかい?」


「旦那様!それがですね、ガルディシアのドラクスルがエウルレンに攻めてきたのですよ!ああ、旦那様にも見せたかった。あいつらニッポンの方々の軍隊の前に、誰も彼もが地面の肥やしになりましたよ!」


家令のアルノーもエウグストの出身だ。当然ガルディシアには良い感情は持っていない。しかも自らが仕える伯爵領を狙ったドラクスルのエウルレン攻撃は、伯爵領に住む誰も彼もが反ガルディシア感情を爆発させた。だが、それでも治安が乱れていないのは、防衛した陸上自衛隊の圧倒的な勝ち方だった。避難したエウレルの住人達は、被害が及ばない所から両軍の戦闘を見ていたがその自衛隊の圧倒的な強さに見惚れていた。


「す、すげえ…見ろよ、あれ…」

「ニッポン軍って100人程度だったよな…ガルディシア何万人も居るのに、全く歯が立たないぞ??」

「あ、またヘリが戻って来た。戦うヘリもあるんだなぁ…強いなぁ。」


近くに日本の空港建設関連で地元雇用もしていたので、それなりに何がどういう物かは知っていた領民達だったが、実際にどういう事が出来るのかは知らなかった。その実力を存分に発揮した北方エウルレン市防衛戦は領民に恐ろしい程の信頼感と安心感を与えた。彼らはその戦闘の様を見て、その日の夜にはエウルレンの街に戻ってきたのだ。その中に執事のアルノーも居たのだ。


「ははは、いやアルノー、私も自衛隊の船の中で映像を見たよ。」


「あ、左様で御座いましたか。これは燥ぎました。恥ずかしい限り。」


「いやいや、あれは凄かった。本当に凄かった…。」


そう思いながら、ル・シュテルの密かな夢への一歩がまた前進した実感を得た。何せ、ガルディシア陸軍の1個軍が文字通り消滅したのだ、このエウグストから。このままで済ますガルディシアでは無いだろうが、人は畑から獲れる物ではない。今後の人のやりくりには暫く混乱が続くだろう。彼らの苦境は、我々にとって行幸だ。さあ、忙しくなるぞ!と、ル・シュテルは第二レイヤーのベールに連絡をし始めた。


ちょうど、ル・シュテルが居城に戻る前に皇帝ガルディシアIII世の長い一行はエウレルンに到着した。皇帝はエウルレンに入る手前で既に風景がおかしな事になっている事に気が付いた。旧街道と立体交差する自動車専用道路、アスファルトの道路、高速で走る車両、見慣れない建物の数々。


「こ、これは…ここはエウルレンなのか!?

 これ程迄になっているとは…」


皇帝は文字通り言葉を失っていた。

ともすれば、このル・シュテル領の発展は最初に帝都ザムセンに起こる筈だったのだ。やはり入港不許可が問題だったのか?だが、しつこい迄にゾルダーがザムセン港の使用許可を求めてきたのも確かだ。あれを承諾すれば、こうなっていたのか?だが、流石にここまでとは思わなんだ…


「ゾルダー、ここまで発展していたと知っておったか?」


「はい、陛下。私は適時視察しておりますので。」


「貴様の出していたニッポンの入港許可、あれはどうなった?」


「議会からは未だ不許可としか。」


「そうか。そうであるか…是非も無いな。」


ゾルダー自身も、何時もあれが出来たこれが出来ると報告自体はしていたのだが、そもそもそれを言ったが最後、"何故、ザムセンにそれが出来ぬ!!"のスイッチを押す事を理解し始めてから、責められない程度に誤魔化した報告のみで済ませていた。ゾルダー自身の忠誠も、"アナタが言う出来ない事の原因はアナタ自身"という心境になってからは低空飛行を続けている。その為、皇帝が思わず漏らした"そうか"の言葉の裏にある意味を理解出来なかった。皇帝はそれから一言も口を聞かぬままに、エウルレン中央のホテルまで移動した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ