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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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77.エウルレン市防衛戦前夜-②

エウルレン前面では遂にドラクスルの本陣が到着し、陣地を構築し始めた。当初の予定通り北方エウルレン前面には2個歩兵師団が展開し、その後ろには砲兵が控えている。そして両翼に第三、第四騎兵師団が展開した両翼包囲の陣を敷いていた。そこにエウルレン市からの使者が停戦旗を掲げてやってきた。この使者には見慣れない格好の軍人と思われる者が帯同していた。そこで武装の確認をし、丸腰である事が確認されたので、ドラクスルの陣まで連行した。


「ガルディシア帝国陸軍第二軍司令官はこちらです。お入りください。」


「失礼します。私はエウルレン市防衛担当しておりますフェリクスです。今回のドラクスル閣下の軍はエウルレンに何用あって展開しているのかをお伺いしたく参上いたしました。」


「余がドラクスルだ。貴様が何の立場があって此処に来たのかは知らんし、貴様に話す言葉も無い。自分の命が惜しいのであれば、早々に街を明け渡して立ち去れ。」


「閣下、せめて何故に攻め入るのかだけでも!」


「余は言った。貴様に話す言葉は無い。」


そこで見慣れない格好の軍人が割り込んできた。


「お初にお目にかかります、ドラクスル閣下。

 私は、日本国陸上自衛隊の大西二等陸佐と申します。今回、ル・シュテル伯爵よりエウルレン市に攻撃の気配ありとの要請を受け、日本国から公式にPeacekeeping Forceとして派遣されて参りました。当該エウルレン市には我々日本国もインフラ等の投資も行っており、これらの資産を防衛する事も目的としております。どうか、閣下におかれましては、話し合いによる解決を望みます。」


「なんだ貴様、噂のニッポンとやらの軍人か。参考までに聞くが、ニッポンから派遣されたという貴様等は一体何人がこのエウルレンに来ているのだ?」


「我々の1個戦車中隊、それとヘリの1個飛行隊ですね。人数としては100名程度ですね。」


「はっ!?中隊と飛行隊?なんだそれは。しかも100名程度だと?貴様はそれだけの人数で、我が七万五千に及ぶ軍を止められると思うのだ。馬鹿も休み休みに言え。」


「我が軍にはそれを可能とする戦力があります。ですが、どうか話し合いで、」


「おい、当番兵!この痴れ者を追い出せ。時間の無駄というのはこういう事を言うのだ。おい、このエウルレン市の防衛何とやらも出て失せろ。明日、エウルレンは滅ぶ。その前に立ち去れ。」


「そうですか…。

 それでは私共も止むを得ませんが、全力で防衛させて頂きます。」


今回防衛担当を表明したのは、エウグストチーム第三レイヤーのフェリクスだ。彼は所謂反政府活動等によって指名手配されていない、平たく言うと顔の売れてない面子だった事、元々エウルレン出身だった事を理由として、エウルレン防衛担当の顔として抜擢されたのだ。そして自衛隊の軍人と共にドラクスルの陣を訪れたのだが、実に予想通りの反応だった為、ドラクスル率いる第二軍の明日の運命を想像して戦慄した。だが、彼が全力で防衛すると宣言した事を受けて、ドラクスルは耐えきれなくなって大笑いをした。


「お前は余を笑わせてくれたな。フェリクスと言ったか。殺したくないから早々に立ち去れよ。」


そして二人はドラクスルの陣を去った。

おかしな事を言う奴だ、ニッポン兵め。そもそも戦車とやらは何だ。ヘリだ?何を意味しているのかは知らんが、たかだか100名で我ら第二軍から都市を防衛するだと?そういえば、クレメンスも何やらニッポン軍を大層大袈裟に評価しておったな。連射だ、大砲だと。それらもたった100名程度であるならば、如何に優れていようとも、この人数で押し切れる。古来より戦いにおける人の数はそれだけで武器よ。しかも、我ら第二軍は対エウグスト、対ヴォートランと歴戦の勇者が揃っておる。我が国の兵は他国では下士官レベルの能力を持つとも言われておる。まあ、全ては明日判明する事よ…。


ドラクスルの陣を引き払った二人は、そのままエウルレン市北側の防衛陣地に戻っていった。その途中、大西二佐はフェリクスから色々と聞かれた。彼は第三レイヤーである為、日本に行った事が無い。


「先程の話にありましたヘリなんですが、もしかして攻撃ヘリという奴ですか?」


「ああ、そうですね、フェリクスさん。AH-1Sという攻撃ヘリコプターでしてね。かなりロートルなんですが、未だ現役で頑張っていますね。」


「ああ、それがこちらに来ているのですね?!見たいですね!」


「明日になれば多分嫌という程に見る事が出来ますよ。」


大西は、自衛隊の戦車の話題が出ない事を残念に思っていたが、そういえばここに来る前に頻りに戦車の周辺をウロウロしていた人物が彼と同一人物である事に思い至った。既に戦車に関する事は聞き終わっていたのか。


「さて、それでは再度防衛に関する打ち合わせをしますか、フェリクスさん。」


「そうですね。第二、第三は既に集合している筈ですので、私達待ちの筈です。」


「それでは急がないと。」


彼らはコンクリで作られた建物の中に入っていった。


そしてエンメルス曹長率いる第一レイヤー隊はマルソーを飛び立ち、一旦護衛艦ひゅうがに着艦した。流石にマルソーからは無給油でエウグスト市までは行けない。その為、一度ひゅうがまで飛び、ひゅうがからエウグスト市近くの近海まで移動した後に、エウグストの中央総督府に向けて飛ぶ予定だった。距離にしてエウグストから600km以下まで移動する予定である。その間にクレメンスに連絡をし、ル・シュテルが監禁されている状況について詳しく聞いていた。既にエウグスト市上空には偵察機が飛んでおり、拉致された場所の地形を詳しく調べていた。残りは内側の状況だけだった。


「こちら第一、クレメンス准将応答願う。」


「クレメンスだ。」


「第一段階終了、移動終了後、第二段階に入る。目標の状況知らせ。」


「彼は北の塔に監禁されている。ああ、旧王城の北の塔だ。」


「了解、周辺の警備は?」


「現在警備は余り居ない。兵は殆どが出払っている。」


「了解、突入直前で再確認する。」


どうやら彼が裏切っていなければ、ほとんどの兵はこの戦闘に駆り出されているようだった。確かに、普通であればどこの誰があの皇太子の居る中央総督府を襲うのか、という事もある。が…今は出払って無防備らしい感じだ。これは楽勝だな、とエンメルスは密かに思った。

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