表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
152/327

76.ガルディシア陸軍第二軍

ゾルダーは全力で城まで駆け、目に付いた物に声を掛けた。


「陛下、陛下は何処に居られる?」


「皇帝陛下はこちらに御座います。」


そのまま、城付きの兵に案内されて皇帝が待つ部屋の手前で待つ。

イライラしながら少し待機していると、中に案内された。


「陛下!急な登城をお許し下さい。

 ニッポンより入電が入っております。」


皇帝には当然心当たりがある。だが、我が国の内政問題である事とどうせニッポンは直ぐには動けまいと思っていたが、ゾルダーが持ち込んだ書類の数々を見た瞬間に息を飲んだ。そこには詳細なガルディシア陸軍第一軍と第二軍の情報が記載されていた。


「陛下、ニッポンは私に以下の様に伝えてきております。曰く、"日本政府は重大な懸念を強めて"おり、"日本国への資産に対し、何等かの危害が発生した場合は、当然の事乍ら我が国の資産防衛を積極的に行う用意がある"との事です。まさか、ル・シュテル領の侵攻をお考えではないですか?思い留める事は可能ですか?」


「これは何だ。我が軍を上空から撮影したものか。彼奴等何時の間にそのような仕組みを…そもそもこれは内政問題ではないか。我が国への反逆行為を、我が国の法に従って処断するのに、何の問題があるのだ?」

「これは衛星写真と申しまして、遥か宇宙にかかる程の上空から地表を監視するシステムより出力された物です。彼らは、このような状況の際に、これらを活用する様ですが…この写真から判断するに、こちらの第一軍だけでは無く、皇太子殿下の第二軍もル・シュテル領を目指している模様です。恐らく、今までの投資を考えた場合、ニッポンはこれを看過しないでしょう。既に、ニッポン政府からは外務省副大臣がこちらに派遣されており、もう間も無くザムセンに到着するとの事です。そもそも、その反逆行為の証拠も何も無い段階で、ニッポンへの資産を含む伯爵領の接収は、彼の国を怒らすのに十分です!」」


「ち、何と動きの早い奴らよ。やつらを怒らすなというが、我々が武装せずにエウルレンに入った場合、ニッポンの動きはどうなる?」


皇帝は敵わぬ迄も、あの国を怒らす事が出来ればそれはそれで上出来だ、痛快ではないかなどと思うが、その先にある帝国の未来を考えると悪手以外の何物でも無い。


「物が警察組織による行動なのか、軍事組織による行動なのかによって、その判断は分かれますが…軍事組織関連の場合は恐らく資産の保護を目的として軍事介入するものと思われます。」


「警察組織と軍事組織の差に如何程の差があるかどうかは知らんが、そもそも我々には警察組織など存在しないではないか。であるならば、軍事組織とみなされてニッポンは軍事介入してくるであろう。形だけでも軍の一部を警察組織と称して、その警察組織の元に行動をする、という名分はどうだ?」


「その場合ですと…若しかして介入せずにすむ可能性も若干あるかもしれません。が、我々に警察組織が存在していない事をニッポンも知っておりますので、何等かの警察組織が新しく存在する法律等を提示出来なければ無理な話かと…」


「なんとも面倒な、そして厄介な国だ…。ランツベルグ中将を呼べ。第一軍は引く。だが、第一軍は良いとして第二軍は知らんぞ。あれはドラクスルが独自に動かせるでな。」


「彼らはニッポン軍と接した事がありませんので、一度ニッポン軍をその目で確認するのも良いかと。一つ申し上げたい事は、ニッポン軍はその気になれば、我が国を滅ぼす事を躊躇しませんし、それが可能でもあります。ニッポンは我々が友好に接する限りは彼ら自身と我々のルールを尊重して行動しますが、一度そのルールを外れると、極めて恐ろしい敵となり得ます。陛下、どうか短慮軽率であってはなりません。今一度ニッポンに対する態度をお考え下さい。」


「もう良い、分かった。

 …その外務副大臣とやらは何時来るのだ?」


その言葉を発した時に、城の外にはUS-2の爆音が響いてきた。


ちょうどその頃、エウグスト市の街道に沿って第二軍は長い蛇のように連なっていた。その蛇の先頭は第三騎兵師団の集団だ。先鋒の部隊は快速を以て経路を強行偵察する。続いて第四騎兵集団が続く。かなり離れて歩兵師団が移動用の馬車に乗って続いて行く。第二軍は機動力に重点におき、移動の際も全て人間の速度以上で機動する事により、敵軍のほころびを見つけ、そこを突き、拡大し、勝利を物にしてきたのだ。今回も過去の例に洩れず、この軍集団の先鋒を任されていた。


第二軍は四つの師団によって構成され、四つの師団はそれぞれ騎兵師団が2つと歩兵師団は2つで構成されている。一つの師団には歩兵師団の場合、三個歩兵旅団と一個砲兵旅団、2つの大隊(工兵大隊、輜重兵大隊)が含まれており、その総勢は定数で7万5000人に及ぶ。その集団が一路1,500km先のエウルレンへと向かっていたのだ。


軍団には楽勝ムードが漂っていた。

そして、対エステリア王国戦が何故かニッポンという新興国家の横やりにより停戦状態となってしまったが故に、新しい戦果も褒賞も無く陸軍自体が停滞した空気に支配されていたのだ。それが、ル・シュテル伯爵反乱による討伐という内乱ではあるが一応の褒賞が出るかもしれない新たな戦い。更には第二軍はニッポンの情報をほとんど知らない。皇帝が新興国家の圧力に負けて停戦し、以降の戦争行為を抑制されているなどと一旦そんな情報が洩れれば、せっかく統一した国内が乱れかねない。その為、ニッポンという国が新たに出現した以外の情報は一切が秘匿されていた。だが、ニッポンとの交流により大きく発展し始めたエウルレンの情報は様々に流布されていた。その為、恐らくニッポンという国はは相当な商業国家であり、そこと結びついたが故にル・シュテル領は発展をしている程度の認識しかしていない。更には初戦でいち早く降伏したル・シュテル伯爵自体とその領民を尚武の気風が強いガルディシア人は、弱兵共と呼んで蔑んでいたのだった。


そしてエウルレンの街では…

マルソー港にほど近い空港予定地には、オスプレイが到着していた。オスプレイの中には陸上自衛隊エウグスト人亡命部隊、つまり第一レイヤーの24名が勢ぞろいで到着した。そして、全員が居酒屋煙とランプ亭へと移動した。そこには第二レイヤーの集団が待機しており、そこを取り仕切るベール達と合流した後に、ホテル ザ・ジャパンへと移動した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ