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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_14.佐渡島 佐渡分屯基地 午後6時

佐渡島 佐渡分屯基地 午後6時


佐渡島の住人の一部が警察の誘導により佐渡分屯基地に避難してきた。しかし佐渡島住人の全てを収容するには余りにも足りなさ過ぎた。現状で例の魔導士が再度佐渡島を襲った場合、どこにも逃げ道が無いという状況は変わらない。しかも大多数の住人はここで何が起きているかを知らないのだ。知ったらパニックになる事必死である。


住人でごった返している避難所代わりの倉庫の中で、アイナはたまたま近くに居た自衛官に縋りついた。


「ひいおばあちゃんがこの基地に保護された、って聞いたんですけど。どこを探しても居ないんです。誰に聞いても分からないし…どこに行ったら会えるのか誰か分かる人教えてください!」


「君とひいおばあちゃんの名前は?」


「私は斎藤アイナです。おばあちゃんは神野ミヨって言います。」


「あ、神野さん、ですか…。」


アイナが縋りついた自衛官は、基地司令の大和田だった。そして大和田はその名前には聞き覚えがあった。相川地区の唯一の生存者の名前だったからだ。


そういえば国交省が確認の為、保護した老婆への聴取を行いたいと要請してきたな…現在、防疫隔離しているが、バイオ兵器の疑いも無くなった事だし、一般の避難所側に移ってもらうか。ご家族の方の問い合わせもあった様だし、輸送船が到着するまでは一緒に過ごして頂いた方が問題も無いだろう。何なら、この子と一緒に向こうに送った方が良いかもしれん……


「斎藤アイナさん、だったね。今、神野さんは多少衰弱していたので一応の精密検査しているんですよ。相川地区に居た方々には全員精密検査をしてましてね。で、今の所何も問題無いんですが、一応念のため東京の病院に転院する予定となっております。この件に関しまして、斎藤アイナさんにお願いがあります。一緒に神野のおばあちゃんの付き添いをお願いしたい。ご了承頂けますか?」


「え?東京に?ミヨばぁ、本当に大丈夫なんですか?それに私もお金も何も持ってきて無いんですけど…。」


「その辺りは心配しなくても大丈夫です。こちらで手配します。」


「そうなんですか?じゃ、私どうすれば良いですか?」


「こちらで部屋を用意するので、今暫くお待ちいただけますか?」


大和田は、近くの女性自衛官にアイナを任せた。


日本政府による今後の方針は、佐渡島にある両津、赤泊、小木の三つの港から自衛隊の輸送艦によるピストン輸送で新潟に避難を行うという物だった。ただし、おおすみクラスでも1回の収容人数が千人程度である事から、可能な限り速やかな住人の輸送の為、増援輸送艦を佐渡島に

向けていたが、それも着くまでにさえ時間がかかる話だ。その為、補助輸送として民間フェリー会社への協力も同時に要請中であったが、既に魔導士の噂が流れているのか民間フェリー会社からは色よい返事は得られなかった。どの位がどこまで避難出来るかどうか分からない。つまり、あの魔導士が佐渡島に再度来る迄に。


情報の少なさと手持ちの情報の異様さ、そして判断すべき事と出来る事の差に大和田は苦しんでいた。


そもそもその魔導士という存在はどこから来たのだ?もし、単体で海を渡る能力があったりしたら…空を飛べるとか…そうなれば新潟だの何だのに逃げたとしても、それは単なる引き延ばしに過ぎないんじゃないか?そもそも出会えば死ぬ存在なんてシロモノは、我々、いや人類との共存は不可能だろう。どこか絶対出られない場所に閉じ込めるか、何等かの方法で倒すか。それこそRPGゲームで言う所の勇者の登場を願うしかないな…


自嘲気味に大和田は笑った。


--

稚内基地分遣隊 午後5時半


「所属不明艦、完全に停止しました。」


「うーむ、これは停船命令を受け入れたって事なのか?」


「分かりません。りしりからは所属不明艦の主砲砲身をりしりから外した様だ、とのです。」


「政府の方は何と言ってる?」


「海上警備行動に関しては閣議中、との連絡以降続報ありません。」


「余市のミサイル艇は?」


「全速でこちらに向かっては来ておりますが…何せ距離がありますので、あと5時間程度はかかると思います。」


「ミサイル艇は間に合わないな…海上保安庁は?」


「当該海域に巡視船もとうらと巡視艇きたかぜを派遣しています。そろそろ現着します。」


これはしくじったな…


稚内基地分遣隊の隊長井上2等海佐は正直軽くみていた。

しかし、発砲禁止の命令が出ている事からミサイル艇が到着したとして我々に何が出来るのか?という話でもある。政府が穏便な方向で進めたいのならば、海上保安庁のみで話を納めた方が確かに良いのだ。が、必要な時に必要な物を用意出来なかった事とは話が別である。井上2佐はなんとも言えない座り心地の悪さを感じていた。

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