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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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64.ル・シュテル領の査察-②

クレメンス引きいるグリュンスゾート中隊は4つの小隊で構成されている。小隊は4つの分隊(アントン、ベルタ、ツェーザル、ドーラ)で構成されており、1つの分隊は7名の騎銃兵で構成されている。全部隊が定数を満たしていれば112名となる筈だが、一部の部隊に欠員があり、今回このエウルレン査察に来たのは107名である。今回の査察では東西南北に部隊を分けて1日かけてエウルレンの現状を確認し、明日マルソーの港に移動してル・シュテルの居城及び港の査察を行う、という手筈である。


クレメンスはアントン小隊に同行し西側方面に向かい、それ以外の小隊が東西南の3方向を調査した。彼らは調査を終えてホテルに戻り、報告会議を行った。その調査結果は、エウルレン東側方面は以前の街の状況とそれほど変わらない事、南北は中央及び西側方面に近づくにつれ発展著しい事、そして西側は恐ろしい速度とレベルで発展しつつある事が確認された。


エウルレン西側は、マルソー港やル・シュテル伯爵の城に続く街道が整備されていた。それも、その街道は隣に石畳の旧街道が並列で並んでいたが、新たに作っている街道は材質さえ不明な変な臭いのする黒い物質で敷き詰められており、それが過熱され引き延ばされて冷却した物が新しい街道となっていた。しかもその街道は異常に広く、上記自動車が4台は並んで走れるようなシロモノだ。この街道を兵の輸送として利用するならば、これ程に平坦で滑らかな道を進む事は大軍にとって容易な筈だ。


それ以外にも軍関係以外にも目を見張る部分が沢山ある。それは西側で再開発と称する住宅地域に関する上下水道の整備だ。エウルレン西側はそもそも余り人が住んでおらず、立ち退きもそれほど発生しなかった。それを奇貨として日本側が基本設計を引きル・シュテルと相談して一気に都市計画を作り上げ、それを元に整備を進めていたのだ。その背景をクレメンスは知らなかったが、明らかに出来上がった目の前の光景は今までの都市とは違う。目の前に立ちつつある住宅は基礎工事状態で作業員が働いていたが、その地面の下にはパイプが埋まっており、聞くとどうやら上下水道の用途のようだ。上下水道など、古の古代都市セルレンで利用されていたという古文書が残るのみで、どこの国もそんな物は無い。


これは随分と"騒がしい"とか言うレベルで語れる状況じゃないぞ…各部隊集まる報告を元に、クレメンスはむずむずと腹の底から違和感というか危機感が沸き上がってきた。これは明日、ル・シュテルの元に行った際には相当厳しく調べないとならんな。ル・シュテルめ、何を考えている…


その頃、第二レイヤーのベールは港にあるコンテナまで行き、やばそうな物を全部ぶち込んでいた。といっても、やばそうな物とは主に爆発したり発射したりする類の物ばかりである。昨晩のル・シュテルの警告から直ぐに周辺を洗い直し、工場の中と周辺に第二が潜んでいる建物から、火器の類を全て撤収した。それらは朝の段階でコンテナまで運び、全て収容が終わった。工場の自爆用爆発物も撤去した。どうせ工場は未だ稼働していないし、稼働していない段階では中を見られても何を作るか分かる筈も無い。


「よぉベール。今帰りか?」


「ガートか。こっちは全部終わった。そっちはどうだ?」


「こっちも終わった。第二の連中は他は引き上げ始めている。これで今日は店仕舞いだ、俺達も移動しようぜ。ガルディシアの連中が来たら俺達手配組は顔バレしているから不味いぜ。」


「おう、そうだな…移動するか。」


ベール達は元々反政府活動を繰り広げていた為、顔が割れている。当然掃討作戦やらゲリラ戦を担当していた陸軍なら、彼らの顔を見たら直ぐにどういう人物か思い当たるだろう。それを警戒してベール達おたずね者チームは、港街のはずれのプレハブに撤収した。彼らは今夜のうちに、更に別の隠れ家に移動する予定で、そこで査察が終了するまで引き篭もる予定でいた。


そして、翌朝。

クレメンスは酒を控えめにしたおかげで爽快な朝を迎えた。そしてグリュンスゾート中隊全員が集合すると、マルソー港に続く舗装された街道脇の土の道で西に向かった。舗装された道は未だ通行する事が出来ないように柵が設置されている。だが10km程進むと柵が撤去され、街で売っている商品を乗せた荷車を引く商人たちや、街と港を行き来する人達が沢山歩いていた。中隊も、そのまま舗装路に入ろうとしたが、立て看板で"この道路に馬は立ち入るべからず"との注意書きを見つけ、慌てて道路から出た。街道の周辺にも住宅地や、整地された土地、山積みになったパイプや木材等があちこちにある。ここが全て整地され、そして住宅が建てられ、あの品質の道路が縦横無尽な状況となったら…それはさぞや壮観な光景となるだろうな、とクレメンスは思わず想像した。


そして街道の終わりも近づき、正面には違和感を放つマルソー港が遠くに見えた。右に折れて真っすぐ行くとそこはル・シュテルの城だ。だが、このマルソー港、違和感の正体は巨大なマルソー港に設置した第一号ガントリークレーンだ。港を覆うような大きな赤白の鉄柱がそそり立っており、その鉄柱から水平に伸びる鉄柱があった。このあまりの巨大さは、近づくにつれて明らかになっていった。そして、そのガントリークレーンの脇には輸送船が停泊していたが、クレーンが大きすぎて輸送船が然程大きく見えなかったのだ。だが、輸送船に近づくと、我が国の軍艦と比較しても遜色無い大きさが判明する。その輸送船から、クレーンはコンテナを引っ掛け港に荷物を積み上げていた。


マルソーは未だ港としての機能を十分には発揮していない。その理由は、輸入をすれども輸出をしていないからだ。輸出はガルディシア側の食料品や鉱物資源を輸出する予定ではいるが、未だ電力が供給されていない為に各施設が稼働していない事から機能してはいない。だが、突貫で行われている道路の舗装が終了した暁には、各道路を通りガルディシア全土から輸出用の食品が届けられ日本に輸出する、という流れなのだ。そして、それはもう直ぐ行われる予定だ。クレメンスは、正にその直前の光景を目の当たりにしていたのだった。


あの赤白の鉄塔の意味する所も分からず、見知らぬ機械が立ち並ぶマルソー港。ここは今見ても意味が無い、行くべきはル・シュテルの所だ。中隊はル・シュテルの居城へと向かった


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