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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_13.危機管理センター 午後5時

駆逐艦マルモラ 午後5時


ゾルダー艦長は早く艦隊に戻りたかった。

とっとと上陸して、とっとと引き上げる。

ただ、それだけを考えていた。

その時、ゾルダー艦長の元に見張り台からの連絡が入った。


「艦長、1時の方向から船が接近中!」


「どこの船だ。漁船か何かか?それとも軍艦か?総員通達!配置につけ。厳重警戒せよ!!」


「不明です。見た事も無い国旗を掲げています。ヴォートランでも、エステリアでもありません。いや、中央ロドリア海に接続可能水域該当国にはありません。船体は真っ白です。軍艦では無さそうな…武装も不明…あ、細い砲身の砲塔らしきもの2つ見えます。帆柱ありません。煙突も見当たりません。」


「何の船だ…?それにしても船足早いな…」


「前方の不明艦、発光信号を開始しました。ただ…どの識別表を見ても理解出来ない信号です。」


「という事は、向こうはコンタクトを取ろうとしている。ならば敵対行動では無い、のか…?」

「不明艦、何か旗がマストに上がりました。しかし、旗の意味はわかりません!」


「不明艦までの距離は?」


「おおよそ1km程です。」


(正直面倒だ。中央ロドリア海の調査なんて意味不明の任務も然る事乍ら、その上正体不明の異国の船との接触とはな…もしこいつが攻撃でもして来よう物なら…行くも逃げるも最新鋭のこの船なら自在であろうし、遅れを取る事はあるまい。

…いや、まさか目前の陸地の住人なのか?こんな嵐の土地に?)


そこで観測員の叫びがゾルダー艦長の思考を断ち切った。


「前方の不明艦発砲!!猛烈に連射しています。当艦進路前方に着弾!小口径の砲と思われます!!」


「総員戦闘配置!前方の不明艦に対して応戦せよ!」


(ちっ、ますます面倒な事になった。)


駆逐艦マルモラの主砲は陸軍で大活躍した新型砲を海軍用に転用したものであり、彼我の距離1kmは有効射程内だった。新型砲はライフリングを施しており、弾道は低進性に優れていた。つまり良く当たる筈。しかしこの荒天下にあっては砲撃を当てるのは双方至難の業だろう。


「主砲第一射、不明艦手前に着弾!次弾装填中!」


「不明艦、連射止まりました。」


「そうか…第二射待て。舵中央、機関停止せよ。」


(あれは砲か?銃なのか?見た事も聞いた事も無いぞ、あんな物。あれほど迄の連射を喰らったらこちらも只で済まないかもな…。いや、もしかして…先ほどのは警告射撃の類だったか?)


ゾルダー艦長の迷いは続いていた。


--

危機管理センター 午後5時


一体全体、現在起きているこの事象の正体は何なのか?そして"ドゥルグルの不死の大魔導士"とは何なのか?危機管理センターの中では、混乱が渦巻いていた。


佐渡島からはあれから続報は無い。唯一の生存者の薬物チェックは当然行っていた。幻覚剤や覚せい剤のような違法薬物の検出は無かった。だからと言って証言の全てを信じてよいものかどうか…


ただ、証言の内容が真実だとするならば。日本国に大魔導士とやらに対抗する術はあるのか?どこまでが致死範囲なのか?その距離は有限なのか?日本国が持つ武器が、この大魔導士に通用するのか?死なない人に、何か特徴や条件があるのか?

…最悪、交渉の余地はあるのかどうか?


国民の生死に関わる問題の優先順位は一番高い。

この場合、例の大魔導士とやらの事態対処であろう筈なのだが…飯島総理は、何をどうすれば良いのかさっぱり思い浮かばなかった。閣僚達も同様にどう対処して良いのやら思い浮かばない。聞く限りに於いては、大魔導士とやらは意思の疎通は出来そうだが、そもそも、会うと死ぬ存在とどうやって交渉が可能なのか?


「総理!稚内基地分遣隊から緊急入電です!

 

海上保安庁巡視船りしりが、所属不明艦からの砲撃を受けました!依然として所属不明艦は国の所属は不明、無線にも応答しません。駆逐艦相当の能力を有していると思われます。尚、現時点で双方に被害はありません。が、海上警備行動発令の検討を、との要請が出ております。」 


「待て待て待て!なぜだ!? どうして砲撃なんて話になる!?」


飯島総理は頭を抱えた。

この件は優先順位の二番目に急上昇だ。

いや、もしかしてこれが戦争になって発展してしまったら…米国に頼り切った構造の安全保障体制で他国との戦争なんて夢物語もいいところだ。そもそも撃つ弾も燃料も備蓄も無い。

このまま諸外国との連絡がつかないまま、もし仮に戦争…いや紛争程度であっても起きてしまった場合、我が国の継戦能力は無いに等しい。


(これは不味い…どうしたものか…喉が渇く…酒が欲しい…)


報告は続く。


「通常の手順に従い、無線・発光信号・旗りゅう信号を行いましたが、所属不明艦が何ら反応を示さなかった為、不明艦前方に警告射撃を実行致しました。直後に所属不明艦の主砲と思われる火器からの砲撃を受けました。双方に命中弾はありません。現在、巡視船りしりは第二射を控えています。尚、所属不明艦も射撃を控えている模様です。」


「そうか…手順に従っているならば良い。以降、交戦は絶対に駄目だ。海上警備行動に関してはこれから閣議だ。なんとか不明艦の所属を明らかにした上で、交渉に持ち込もう。いずれどこの国かが明らかになれば、そして諸外国との連絡が回復するならば、穏便に済ます事が出来る筈だ。」


ここで防衛大臣が憔悴した表情で口を挟んだ。


「畏れ乍ら…総理、防衛省と国交省から重大な報告があります。ここに居る閣僚の皆も心して聞いて欲しい。そして前提として我々は正気を失ってはいない事を信じて欲しい。

 現在防衛省が独自に収集した情報を専門チームにより分析し、得られた情報を元に検討した結果…ここは地球では無い、という結論に達しました。なお、国交省側の専属チームも同様の結論に達しております。総理、ここは平たく言うならば"異世界"なのであります。」

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