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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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58.ゾルダーの味方

「まずは、ここマルソー港を基点にする。そしてマルソーからエウルレン市の間に街道を結ぶ。出来る事なら、エウルレン市からヴォルン市までの直通街道を引いて貰いたい。口実としては、大陸北部方面の食料の輸送ルートの確立かな。ああ、でもザムセンへの道も引いて置かないと怪しまれるか。タカダさん、アスファルト舗装道路の敷設って1kmあたりどの位の日にちが掛かるんですか?」


バラディア大陸の詳細な日本製地図を前にして、ル・シュテルと高田は道路の敷設計画を話し込んでいた。


「そうですね…詳しい事は分からないですが、面積で良いなら…1000平方m程度で2週間位と聞いた事がありますね。普通に道路の幅は日本の規格で言えば、4車線道路で幅14m位ですかね。機材と人員さえ確保できれば、それほど長い工期は必要ないとは思いますが、問題はその機材ですね。」


人員に関してはアテがある。

砂利も良質の物が沢山手に入る。何せガルディシアは鉱山地帯で長年色々な物をほじくり返して来たのだ。砂利に関しては吐いて捨てる程ある。が、故に直ぐに舗装に取り掛かりたい所だが、砂利を輸送するトラック、ドーザーやモーターグレーダー、ローラーの関係が確保し辛い上に、燃料が無い。この辺りはヴォートランとの交渉次第ではあったが、高田は今その情報を持ってはいない。


「そうですか。それは私共には如何ともし難い。頑張って下さいとしか言えません。そういえば、タカダさん、例の組織はどの程度になりましたか?」


「結構な人数になりましたよ。今、100人位ですかね。日本で訓練しているチームと、こちらに潜入しているチームの二つに分けていますよ。実の所、例の道路敷設要員としてこのチームから何人か入れようかな、と思っていますが。」


「100人ですか…多そうで、少ないですね。」


「そうですね、小規模の何かをするには小回りが利いて良いんですが、伯爵が考えているような事は、未だ出来ませんね。不甲斐なくて申し訳ない。」


「いやいやタカダさん。

 貴方達が居たから、私共は今こうして夢を見る事が出来るのですよ。ゆっくり、とは言いませんが確実に進んで行きましょう。」

 

「そう言って頂けると心が軽いです。

 お互い情報漏洩に気を付けて行きましょう。」


高田は、高速に大量移動が可能な流通網を、ここバラディア大陸に構築しようとしていた。ガルディシア帝国としてはメインで日本に輸出する為の食料を各地から迅速に、しかも大量に移動出来るシステムの積もりだった。だが、この輸送網を全国に構築するという事は、全国に大量に兵力を輸送可能ともなるのである。高田から話を最初に聞いたル・シュテルは直ぐに日本に協力し、輸出関連の建物用地の無償提供を行った。そして、ル・シュテルの子飼いである信頼出来る部下を何人か紹介してもらい、駆逐艦マルモラの亡命チームと合流して、秘かに日本に行って訓練を行ったり装備を受け取ったりしていた。それ以降に参加した、例えばベール等の新参は日本には行かずに、ここバラディアで秘密訓練をしていた。ようやく、その組織は100人を越えようとしている。だが、まだ全然足りないのだ。そして、メインの話題が終わった所で、伯爵はまた映画の話を高田に始めた。


--

グラーフェン中佐は、その夜自宅で寛いでいた。

ガルディシア第七艦隊はデール海峡での戦いの後、そのまま首都ザムセンに戻り休養と再編に入った。とはいえ第七艦隊の性質はそもそも予備艦隊の色合いが濃く、特に喫緊の作戦も無い為、非常に暇を持て余していた。だが、そんな事はどうでも良かったのだ。グラーフェンが思い出していたのは、例の国ニッポン。どうやらニッポンに対してガルディシアは友好的に接する様だ。だが、その先行きはどうも不透明だ。何やらニッポンから別のルートで武器を密売するような噂も流れていたりとか、皇帝がニッポンの不興を買ってしまい、順調だった輸出入関連の契約や作業が滞ったりだの、余り良い噂を聞かない。そう、ニッポンとの交渉といえば、ゾルダーは元気だろうか。艦隊から外れて情報局に移動となったが、その後ニッポンの窓口となっている話は聞いたが、あれから会っていないので情報は入らない。あいつ元気なのかな?等と思っていると、玄関を叩く音がする。普通に家に訪れる時間ではない。

少々不愉快な声でドア越しに誰何した。


「こんな夜更けに、何者か?!」


「グラーフェン。俺だ。ゾルダーだ。」


「え!?待て、今開ける。」


ちょうど思い出した矢先にゾルダーが現れてグラーフェンは驚いた。直ぐに家の中に招き入れると、お互い挨拶を交わした。そして酒とコップを二つ持ってきてそのまま注ぐと、無言で乾杯し二人は一息に呑んだ


「何時ぞや振りだ、グラーフェン。元気だったか?」


「いや本当に久方ぶりだ。偉くなったな、今は少将様だよな。ニッポンとの交渉の窓口なんだって?こんな時間に一体どうした?」


「少将とかガラじゃない。棚ぼただったからな。

 それはともかくとして相談に乗って欲しい。お前なら信用出来る。これから俺が話す事はかなり機密も含まれる。言っても良いか?」


「待て待て待て。やばい話か?」


「やばい話ではないが、俺自身はやばいかもしれん。」


「ふーむ…聞こうか。」


ゾルダーは、沈めた駆逐艦マルモラの件、日本との交渉の件、密入国した中国・朝鮮人の件、武器輸入に関する件、それらを掻い摘んで説明した。もちろんタカダの件と亡命エウグスト人の件は話してはいない。


「という訳で、中国人に襲われたのは撃退したのだが…その日以降どうも監視されている気がしてならない。俺の周辺を探る連中も居るようなのだ。だが、この辺りで俺が動かせる兵も居ないし、情報局の部下も信用出来ないのだ。」


「探ったり監視したり、ってのは事実なんだよな?うーむ…皇帝陛下の発言内容からは、特にお前を監視するような雰囲気は感じとれないな。どこの勢力かは分からんが。というか、おまえの上司はどうなんだ?」

「レオポルドか?ああ…それか!そうかもしれん。可能性高いな。何れ俺の方でも確認してみるが…グラーフェン、お前の部下を何人か貸して貰えるか?なんとも手駒が少なくてな。」


「まぁ、情報局長がやっているなら、恐らくだが単に確認の為の可能性が高いだろうな。とすると、生き死にな事になりはすまい。いいぜ、何人か見繕って貸そう。どうせ第7艦隊も休養中だからな。明後日までにはお前の家に派遣するよ。これでいいか?」


「ああ、すまない、助かるよ。」


「で、俺が聞きたいのはだ。ニッポンってどんな国なんだ??俺の所には全然情報が来なくてな。情報封鎖しているのは理解しているが、俺も多少の危ない橋を渡ったんだ、お前も少し位俺に漏洩しろ。」


「ははは、分かったよ。ちょいと話は長くなるが…」


グラーフェンとゾルダーの話は深夜まで続いた。

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