表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
129/327

54.内戦 エンナの戦い-⑨

そして再びエンナ島に夜のとばりが降りようとしていた。

両軍が対峙するエンナ島中央部に銃声は聞こえない。


「来て下さい、タウリアーナ中佐!

 王国軍が砲を引き上げ始めています!」


「何だと?確認する!」


確かに対峙していた王国陸軍兵達が設置した砲を分解し始めてうた。既に分解が完了していた砲は、幾人かが集まって後方に下げている。前線に張り付いていた兵達も何やら弛緩した雰囲気でだらだらと作業をしていた。そしてその状況を確認したタウリアーナは直ぐに王弟フェリペに伝えた。


「毒が効いたようだな、タウリアーナ。」


「どうやらそのようですね。

 今夜も戦闘は起きない可能性が高いですね。」


「そうだな、今夜は安心して休めそうだ。

 あとはファーノとの交渉を待つのみだな。

 明日朝にでも向こうの陣地に行って寝返りを促してこい。」


「了解しました。しかし、先程の報告通りラケーレ大尉が行方不明であるなら、直ぐに決定は難しいかもしれません。明日朝に確認し、それでも行方不明なら直接王国陸軍兵達を説得します。」


「そうだな、それで頼む。」


王国陸軍の弛緩した空気は、王弟フィリポの軍にも伝播した。

そしてこの雰囲気のまま夜を迎えた。


警戒任務を担当していた兵以外が寝静まった頃…

エンナ島に日本が派遣した第一ヘリコプター団のUH-60JA ブラックホーク3機がフィリポの陣取るエンナ中央部に飛来した。日本から護衛艦いずもにヘリコプターを搭載し、派遣して来たのだ。そして作戦時間に従って、いずもからエンナまで飛んできたのだ。


「こちら飛竜01、目的地に到着、飛竜01はSの降下準備に入る。飛竜02、03は下方陣地を各自自由攻撃を開始せよ。尚、施設には当てるな。」


「了解、これより攻撃開始する。」


日本の上空からのヘリの攻撃に、フィリポ隷下の海軍兵達は大混乱に陥った。飛来したヘリコプターは上空に滞空しながら地上斉射を繰り返し、塹壕に沿って銃撃された兵達は反撃する暇も無くバタバタと打ち倒された。


「夜襲だぁぁーーー!!」


「どこから攻撃してきているんだ!!!」


M2重機関銃の銃撃の音に飛び起きたフィリポは真っ暗な部屋の中で何も状況が分からず叫んだ。


「なんだ!何が起きている!!タウリアーナはどこだ!」


「殿下、攻撃です、お逃げ下さい!!」


「どこに逃げるというのだ!!

 どこの攻撃というのだ!!

 そもそも敵はどこに居るのだ!!」


「わっ、分かりません!!

 四方八方から攻撃されています!」


「くそっ、王国陸軍の動きはどうか!?」


「は…動きが無いように見えます!

 包囲している王国陸軍陣地から、発射光は見えません!

 …するとこれは王国陸軍の攻撃ではない…?」

 

「ニッポンの連中だ。彼奴等め夜襲など卑怯な真似を…。」


「殿下、何れここは危険です!」


「まて、良く見ろタウリアーナ。

 彼奴等の攻撃は建物を狙ってはおらん。

 施設の破壊を避けて攻撃しておるぞ。」


「すると…建物の近くに居る限り、攻撃されない?」


フィリポの読みは正しかった。2機のヘリは施設を攻撃しないようにして下方を攻撃し続けていた。その攻撃は、施設に近づけない様な誘導をしていた。"この建物に居る限り、攻撃はされない"と、フィリポは判断した。しかし攻撃はどうやら空から行われているようだ。タウリアーナ中佐もそれに気づき、兵に指示を飛ばした。


「空だ!貴様等、空を狙え!!奴らが発砲して光っている所が、敵の射撃場所だ!!空を撃て!!」


空から攻撃されていたのなら塹壕なんて何の意味も無い。寧ろ逃げ道も無い良い的だ。慌てて塹壕から飛びした兵も、上空からの機銃掃射には何の抵抗も出来ない。エンナ島中央部はフィリポの海兵達による阿鼻叫喚の大混乱となった最中に、飛竜01と称するヘリコプターからロープが数本降ろされた。


「飛竜01、これよりSが降下開始する。各機援護頼む。」


S、つまり陸上自衛隊特殊作戦群だ。

彼らはするするとヘリからラぺリングで降下し、簡易宿泊所周辺に降り立ってそのまま宿泊所に突入した。簡易宿泊所には王弟フィリポとタウリアーナ中佐、そして雑兵が数人居たが、突入してきた特殊作戦群に瞬時にタウリアーナ中佐以下雑兵も全て倒された。そして、突入してきた黒い目出し帽を被った兵が、フィリポに向き合った。左右には同様の姿の兵がフィリポを押さえている。


「王弟フィリポだな。拘束する。」


そして、フィリポが何かの金具を付けられ、あっという間にヘリに連れ込まれた。フィリポを確保した3機のヘリは、そのまま去っていった。特殊作戦群が降下してから去る迄に僅か数分の出来事だった事から、海兵達がフィリポが拉致された事に気がついた者は居なかった。


ヘリから無線で連絡を受けた太田二尉は直ぐにラケーレ大尉に連絡し、フィリポを確保した事、それにより恐らくフィリポの海兵達の指揮命令系統が混乱中であり今こそが攻勢に出るタイミングだと伝えた。ラケーレ大尉は、即座に全軍突入を指示し、待機していた王国陸軍兵はフィリポの陣地に殺到し、虐殺が始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ