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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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51.内戦 エンナの戦い-⑥

王国陸軍のラケーレ大尉は、後背への近衛騎士団の到着を今か今かと待っていた。偵察兵からの報告では、フィリポの海兵隊達は、油田周辺に陣地を構築し、こちらの進入路からは直ぐに突入出来ない状況となっている。しかし騎士団の突入を合図に陸軍もフィリポの海兵隊が立て籠もる中央部分前面に圧力をかけ徐々に排除する。いくら陣地を構築してあるとしても、人数はこちらの方が多い上に、後ろから騎士団が突入するならば一溜りもあるまい。


王国陸軍は中央部分を有効射程外からじりじりと包囲の輪を縮めつつあった。小競り合いはあるが、どちらも有効な打撃とならない。どちらも自らの場所に釘付けとなっている。そこにフィリポの陣営から歓声が上がった。


なんだと?何故、歓声が上がる?


ラケーレ大尉が見た光景は最悪の展開を意味していた。

丘の反対側から姿を現したのは王弟フィリポとその海兵達だ。これは裏側に回った騎士団が壊滅した事を意味していた。現在王国陸軍の総数は2,000名、そして相手は800名程だ。だが、今南側から出てきたフィリポの軍勢は少なくとも2,500名は居る。どういう事だ?これ程の人数…戦艦から降りて全員こっちに来たのか?となると、我々の人数よりも相手の人数が多い上にギッチリ陣地を構築して待ち受け、こちらは切り札の騎士団を失い、砲火力も奴らの主力部分を砲撃出来ないという状況か…。暫く、様子を見るか。どうせ海兵達はここから突破しても行く場所も食料も無いだろう。それに、国王からの指示は"施設に弾を当てるな!"であるから、こちらから攻勢に出て施設を破壊してしまう事も避けられる。

ラケーレ大尉は、持久戦へと舵を切った。


「無事の到着喜ばしく思います、殿下。」


「うむ、タウリアーナ。して戦況はどうだ?」


「只今の所膠着状態となっております。

 ですが、現状は我々の方が長期持久が可能でしょう。」


「持久か…我々は軽火器以外なにも無いぞ?」


「殿下、相手もそれは同様であります。砲は油田があるので使用出来ません。使用可能なのは軽火器のみ、と我々と同条件なのです。それと、是非とも見て頂きたい物があります。これが制圧した油田です。そして、少し離れたここがニッポン人の居住していた建物です。この中にお入り頂けますか。」


「何がある?」


「我々がここを制圧した後に、建物を改めました。

 その際に発見したものがこちらに御座います。」


日本の石油会社が構築した臨時のプレハブの建物には、予め様々な物を立てた直後に納入し稼働していた。それは、電気を使う為の太陽光発電システムや、貯水タンク、そして離島への長期出張等に非常用として長期保存可能なレトルトや缶詰、インスタント食品等の食糧倉庫だった。これは異世界の、しかも物流に乏しい界隈で、しかも離島という悪条件が幾つも重なった結果、最低10人のスタッフが1か月外界と連絡が取れなくても食べていける程度の長期保存食品の山だった。つまり、この建物には900食以上が備蓄されているのである。そしてこの建物は冷暖房完備で水やお湯も供給可能なのだった。


膠着状態にあってタウリアーナはこの建物と中身を詳しく調べていた所、これらの食料を発見した。ヘリが迎えに来た時に、調査員の秋山は鍋の中にお湯をはってレトルト食品を入れっぱなしのまま逃げていた。お湯は既に水となってはいたが、これを見たタウリアーナは即座に理解した。"この銀色の袋を温めると食べる事が出来る"と。そして他のレトルトパウチにはパウチ自体に食べ方の印刷がしてあり、印刷内容は絵と文字で書かれている。文字は分からないが、絵は非常に分かりやすい。

その絵は、お湯に入れ、それを出し、袋を開けていた。


「これは…食料なのか。食べる事が可能なのか?」


「左様に御座います。恐らくこれはニッポン人の食料かと。そして、これらは湯の中にいれ過熱した後に食べる事が可能となります。」


「タウリアーナ、貴様はこれを喰ったか?」


「はい、この袋に書かれている絵が食べ方を指南しております。そして大変に美味でした。」


「ふはははは、便利な物が世の中にはあるのう。いやニッポンに、か。何れにせよ、暫く糧食の心配はいらぬな。我々は1週間持ち堪えられれば良い。その積もりで兵に分配せよ。」


「殿下、食料以外にも見て頂きたい物が…こちらを。」


「む!これは…リバルータ島の全体地図!?

 そしてエンナ島の地図…実に詳細に書かれておる。

 なんだ!これはどこにあった!国家機密ではないか!!」


タウリアーナが出して来たのはヴォートラン王国の航空写真と、それを元に起こした地図だった。エンナ島の地図もあり、こちらはリバルータ島全体よりも詳細な地図であった。しかも驚く事に同様の地図が何枚もあるのだ。実の所、調査員の秋山が印刷の枚数指定をしくじって1枚印刷を11枚印刷してしまったが故に何枚もある、という事になってしまったが、フィリポにはそれが分からない。


「ふむ、これはニッポンがエンナ島の占領を目論む証左だ。そして、ファーノはそれに加担した。異国人に対して国土を売り払う売国奴だ。それの決定的な証拠がこれなのだ!」


「これを以て、我々を包囲している王国陸軍の連中を説得する事は可能でありましょうか?そこから寝返る兵が居れば…」


「よし、タウリアーナ、休戦旗を用意せよ。」


「承知致しました。直ぐにご用意いたします。」


タウリアーナは直ぐに休戦旗を掲げ、包囲をしている王国陸軍の陣地へと向かった。その間に、陣地の中では先行上陸隊と海兵を徐々に入れ替え、先行上陸隊に休息と食事を配給した。


「よう、ウバルト、お前これ喰ったか?」


「今上がってきた所だよ、フランチェスコ。

 なんだ見た事無いな、なんだそれ。どういう食物だ?」


「いいから喰ってみろ。」


「へえ…袋を温めてねぇ。便利だなぁ。」


概ね、王弟軍の兵達には好評だったが、アルファ米をそのまま温めずに喰った兵からは大不評だった。これら後方での騒ぎと並行して、タウリアーナは王国陸軍と接触し、休戦の話合いをする為に目隠しをして連れていかれた。壕に着くと目隠しを外され、タウリアーナの目の前には若い将校が立っていた。


「貴軍を包囲しております王国陸軍ラケーレ大尉です。

 フィリポ殿下には反逆の容疑が掛かっております。

 大人しく降伏して下さい。」


「王弟フィリポ殿下直属軍のタウリアーナ中佐だ。

 貴殿にはこれをご覧頂きたい。

 ご覧の上で判断して頂きたい。誰が反逆なのかを。」


「何をですか?

 ここまでやっておいて今更だと思いますが。」


「黙ってこれを見て頂きたい。」


「…こ、これはエンナ島の詳細地図?

 これほどまでに詳細な地図を見た事が無いですな…

 ですが、これが何か?」


「これはあそこのニッポンの小屋から発見された。

 何故、これ程詳細な我が国の地図がニッポンにある?

 それの意味する所は一つだ。」


「まさか…まさか、国王陛下が…??

 だが詳細地図という国家機密を渡す事が可能な立場は…」


「我らも目を疑ったシロモノよ。

 そもそも慌てて国王自らニッポンに行く位だからな。

 どういう取引があったモノやら、だ。」


「だが、これは決定的な証拠にはならん…筈だ…」


「そう思うのも貴殿の勝手だ。

 だが、これらを見て国民はどう思うかな?

 我々王弟軍の今回の行動は反乱ではない。

 国を憂いての事なのだ。」


「いや、ちょっと待って頂きたい。

 休戦には同意しよう。兵に伝達する。

 だが、これは…小官の手に余る…」


王国陸軍ラケーレ大尉はどちらが反乱軍なのか、分からなくなっていた。

予定を大幅にオーバーしています…

短く纏める能力が無いです。

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