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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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2_46.内戦 エンナの戦い-①

ヴォートラン西端にあるエンナ島。

島は日本の四国程度の大きさで、周辺には小さな島が複数存在し、地形的には島の東端から中央までに小高い丘がある。そして島の大半を占めるのが森林だ。海岸線には複数の村が存在し、その全てが漁村、という島だった。


そして、中央の小高い丘部分から染み出る黒い油は、長い事この島の厄介モノだった。周囲に草は生えず、臭く、燃やすと大変な臭いと煙を出す、役に立たないものだった。だが、本土リバルータ島から来た技術者が、この油の利用方法を開発し、それから島の開発は進んだ。


しかし国王ファーノIV世は、島から人が出る事を禁止した。

それ以前に島から出た人間には何もお咎めは無かったが、ある時を境に、エンナ島からの人は来なくなった。そして逆にエンナ島にも行けなくなったのである。


エンナ島の住民は王室が丸抱えで面倒を見ていたのである。そこから産出される食料は全て王室が買い上げ、島で必要な生活必需品は王室が供出していた。その為、島民に不満は無かった、


ある時、何時もの様に島民の子供ピッポは島の外を見ていた。

島の各村には櫓があり、そこにはピッポの様な子供が外から来る者を監視していたのだった。そしてピッポは東の海から見慣れぬ大きな船が来る姿を発見し、村に警戒警報を出した。


カーンカーンカーン!

「船だ!船が来た!!」


丸くて固い木が櫓にぶら下がっており、この木を固い棒で叩く。村中に響き渡る音で、村中に緊張が走る。村中の村民が決められた場所に隠れ、上陸する場所や経路に待ち伏せた。そして何時ものように、予告無く島に上陸した後には皆殺しだ。この島には海の上を叩く戦力は無い。そして王都にも無い。だから上陸されてからが本番だ。許可なく上陸した者は待ち伏せて不意打ちが村の戦法だった。


ところが今回は違った。見慣れぬ異国人がやってきたのだ。

既に国王の許可は得てある、と言う。それが証拠に、その大きな船には何時も来る王国の人間が同席して居たのだ。王国の人間は、村長と話し合い警戒を解いた。


大きな船からは、沢山の不思議な物と沢山の人が降りた。ピッポは初めてみる見た事も無い顔かたちで変な服を着た人達と、初めてみる物に大興奮でその人達に纏わりついていた。どこから来たのか聞くとニッポンだと言う。そんな国は知らなかったが、別にどうでも良かった。ピッポは知らない人達との話が楽しかったのだ。今迄経験した事も無い、今まで見た事も無い物と人。


その日は一日中ニッポン人は小高い丘に上がり、何やら王国の人達と一緒に色々な機材を設置したり、調査したりしていた。どうやら暫くこの島に居るという事を聞き、ピッポは嬉しくなった。櫓に上がって見張りをする仕事の合間に、ニッポン人の所に遊びに行こう、と密かに決めた。


数日後、ピッポは櫓の上で島の外の見張りを続けていた。

あと少しで自分の見張りの時間が終わる。ピッポは自分の監視時間が早く終わって欲しかった。何故なら、その後にニッポン人の所に遊びにいけるからだ。あのニッポン人達の所は知らないモノが沢山あって楽しかった。


そんな時、東の方から船が来た。

見ると、国王ファーノIV世の旗がはためいていた。

この船は味方の船だ。

ピッポは味方が来た時の鳴らし方で丸い木を叩いた。


コンコンコンコン!!

「船だ!味方の船が来たぞー!味方だー!」


だからこの船団を見かけ、その船が味方の船である事を確認しただけで注意を逸らしてしまった。


その甲板には何人もの人が、砲に弾を込め戦闘準備に入っている事を遠目であっても見えたかもしれない。そして、それを見たらピッポも別の反応をしたかもしれない。将又、殆ど国王派に軍艦が存在しない事を知っていても、別の反応をしたかもしれない。


だが、どれもピッポは選べなかった。ピッポが最後に見た物は自分に向けて大量に降って来た砲弾だった。


櫓から味方を知らせる鐘が鳴ったので、村人は到着を待っていた。その待つ時間もそこそこに、大量の砲弾が降ってきた。この砲弾は単なる鉄球では無く破片を火をばら撒く炸裂弾だ。木と草で出来た村の建物は、砲弾が炸裂した爆風で吹き飛び、破片により粉砕され、劫火によって仕上げられた。僅か数分で村は完全に壊滅状態となり、そのままフィリポの艦隊はエンナ島東の村を完全に破壊し、上陸して橋頭保を築いた。


「随分と呆気ないな。陸軍は居ないにしてもニッポン軍辺りが居ると思ったが…」


「左様で御座いますな、殿下。ただ、我々が上陸した場所は島の東側です。ニッポン軍は西側に居るかもしれません。ここを橋頭保とし、島中央部の丘と施設を占領してしまえば…」


「そうだ。目標は中央部の施設。ここを占領してしまえば、国王も折れよう。先ずは予定通り、上陸部隊は中央部施設の占領を行え。残った艦は戦列艦を中心にして防御、ここに敵を近づけるな。」


「殿下は如何なされますか?」


「西側に偵察に行くぞ、ラチアーノ。戦艦レガルブートを出せ。」


王弟フィリポは艦隊を二つに分け、東側の上陸地点には戦列艦を中心にした防御部隊を残置した。そしてそこから上陸部隊を抽出し、中央部分の攻略を行う様に命令した。ただ、防御部隊とはいえ、敵が来る筈は無かった。何故ならば、今頃は王都トリッシーナでは、ラチアーノ配下の工作部隊が、港に停泊している船という船に対し破壊工作を行っている筈だからである。


フィリポは戦艦レガルブートを率いて、島の西側部分に居るであろうニッポン軍を偵察し、可能であれば撃滅するつもりだった。


「まぁ居ても数隻だろう。この戦力と奇襲で押し切るぞ。」


フィリポは既に全ての行動が把握されている事を知らない。そして油田調査部隊も何が起きているのは知らなかった。

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