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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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2_45.フィリポ艦隊、西方へ

リバルータ島は小国が乱立する時代が長く、その戦いは主に陸上であり、海軍自体余り育ってはいない。そして当時の地方領主ヴォートラン家がリバルータ島を統一した事により、初めて外の世界に向けて海軍を作ったが、その故に海軍の発展自体も他国程ではない。ヴォートラン王国海軍を発展させたのは、偏にフィリポの手腕だった。


しかしヴォートラン主力海軍は北ロドニア海海戦で壊滅した。


フィリポは母港ディルーポに戻り、直ぐに艦隊の人員を招集した。ディルーポに残る残存艦艇はフィリポの旗艦以外はほとんど二線級の物ばかりとはいえ、搔き集めた艦艇数は30隻となった。フィリポの旗艦である戦艦レガルブートを中核として、二等戦列艦4隻、三等戦列艦が4隻、その他フリゲートや砲艦や駆逐艦等の艦艇を全て投入した30隻の艦隊は一路エンナ島を目指す為、ディルーポ港に集合した。そしてフィリポの演説が始まる。


「リバルータは神聖なる我らの土地だ。このリバルータに他国の異国人を、ましてや軍人の駐留許可など、国王が為して良い事であろうか!? そうだ、我らが頂く王の決断ではない。他国の手に我らリバルータの民を委ねる所業だ! 

 他国に我らの土地が委ねられたら一体どうなる?!

 我らが植民し、そして繁栄し、異敵ガルディシアに支配されたダルヴォートはどうなったのだろうか? そうだ結局駐留とは名ばかりのニッポンによる植民地化だ! そのような結果を招く駐留許可を出す輩は最早、敵と内通するものなのだ!言わばリバルータの民の敵と相成ったと余は判断する。 

 誇り高きヴォートラン海軍の皆よ!余に続け!!

 リバルータを異国人の手から取り戻すのだ!」


半個艦隊を前にしてフィリポは声を上げた。

そしてこの艦隊の乗員たちは莫大な歓声で答えた。元々、海軍はガルディシアから国家を守っていた誇りがある。にも拘わらず王弟派という見方をされた挙句冷遇されていた。つまり海軍に勤める限り王弟派であっても無党派であっても、結果は冷遇という意味では変わらない。それが故に、誰も彼もが鬱屈した気持ちを抱えていた。そこにフィリポは火を付けたのだ。この火は劫火となって艦隊は西方に向けて出撃したのだった。


そして、この動きはアクレイデ伯爵に把握されていたのだ。ディルーポの町に放った密偵は、フィリポ入港後に起こった慌ただしい町での動きに注目し、船に積み込まれる荷を調べ、集められた人員の構成から、"フィリポ艦隊交戦間近"と結論した。


アクレイデ伯爵は既に国王ファーノから、どちらの陣営かを詰問され、当然国王に忠誠を誓っている事を表明した。その為、アクレイデ伯爵は当然この情報を直ぐに国王派に伝えた。


王都トリッシーナを防衛するのは騎士団長モンテヴァーゴだ。

だが、騎士団は陸軍であり海軍としての機能は無い。国王派が持つ船は商船ばかりで戦闘艦はほとんど無い。つまり海からの攻撃は、陸上の砲が届く範囲でしか防げない。


ヴォートラン陸軍は、砲撃さえ来なければ地上では優勢だ。つまり、上陸させてからが陸軍の勝負だ。そして海軍は、上陸する迄にどれだけ陸軍を海上から磨り潰せるかが勝負となる。その為に旧型艦であっても、砲門数の多い戦列艦と爆裂弾の組み合わせは十分に脅威だったのだ。


その為、モンテヴァーゴは海岸線に防御陣地を構築していた。

近衛師団長としての矜持がニッポン軍との共同戦線を行う事を拒否し、独自に防衛線の構築に邁進していたのだった。


恐らくそうなるであろう想定に国王ファーノIV世は、日本の海上自衛隊艦艇による哨戒を要請していた。それは国王が日本の飯島総理に直接要請を行っていた事だが、飯島総理は"こちらからは先制攻撃は出来ません。守る事に専念致しますが、それで宜しいですか?"と理解出来ない事を言っていたが、国王は聞き流した。


どこの世界に自分が攻撃を受ける事が分かっているのに撃たない軍隊が居るのか、理念が命よりも大切である訳が無い。ともあれこれらニッポンの艦艇が居れば、フィリポも無理はすまい。王都は海にニッポン軍、陸に近衛騎士団と陸軍。ファーノは安心していたのだ。


だが…


フィリポは王都を回避した。

いつまでたっても王都に来ない事に業を煮やしたモンテヴァーゴは、ニッポン軍に情報を聞けば状況が簡単に掴めたのにも拘らず、彼の矜持はここでも威力を発揮してしまった。


既に自衛隊はフィリポの動向を掴んでおり、艦隊が別の場所を目指している事に気が付いていたのだが、それを騎士団長に報告しようにも巧妙に避けられてしまっていた。だが、その目的地はエンナ島だ。日本の生命線となる可能性の高いスイート原油を産出する島だ。護衛艦まや艦長田所二佐は、直ぐに判断を仰いだ。


この情報のやり取りは、基本的に"王都を攻撃するもの"という先入観から、狙いが別にあると判明した時点で国王ファーノの反応と、飯島総理の反応がそれぞれに違う答えを出してしまった事から、思いもよらない遅延が発生したのである。


国王ファーノは、王都が守られればそれで良い、としていた。

飯島総理は、口にこそ出さないがエンナ島が大事で王都は二の次だ。そのタイムラグは残念な結果を生む事になる。


エンナ島には日本から派遣された民間の石油会社調査員と、若干の自衛隊員が許可を得て入島していたのである。

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