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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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2_38.留守中の心配

王宮に居た大多数の新しい物好きな連中は挙って日本見学を希望した。

だが、王弟フィリポは日本に行く事を希望しなかった。王が国を空ける。このチャンスは願ってもいない。ニッポンには何れ行く事も出来よう。だが、王が国を空けるなど、そうそう滅多にある事では無い。フィリポはすぐさま王城を後にして、自分の領地へと帰っていった。


国王ファーノIV世は、フィリポが領地に帰る際に一度ニッポン使節団から中座し、フィリポの退城を見届けてから近衛騎士団の団長を呼び付けこう指示を出した。


「よいか、モンテヴァーゴ。

 余がニッポンに行っている間、留守を頼むぞ。必ずやフィリポは余が不在の間に何等かの動きを起こす。貴様を中核にして何かが起きれば対処は可能な筈であろう。

 フィリポの海軍は艦隊が全滅したとはいえ、海戦に出撃しておらん船の1/3は未だ健在だ。その気になれば、それなりの事は出来る。だが、ニッポンの今回の使節団が我々に湾口施設や航空機械の滑走路整備を申し出ておる。これを行う為の機材の設置やら、湾口の工事やらで暫く彼らが滞在する事は決定的だ。それが故に、彼らの存在が王都への攻撃を躊躇する事になる。

 だが、万が一もある。

 極めて少ない陸上戦力を搔き集めて攻めて来るとも限らん。あ奴の持つ諜報組織が王都の中で破壊行為をするとも限らん。それが故にモンテヴァーゴ、貴様が頼りなのだ。」


「承知致しております。ただ、陸上に関してはアクレイデ伯爵領地を必ず通る事になります。大規模な兵力の移動に関しては察知が可能と判断しております。」


「うむ、そうだな。

 そうだ、アクレイデ伯爵もこちらに引き入れよ。難色を示す様であれば、余の言葉として以下を伝えよ。"いい加減、旗色を鮮明にせよ"、とな。」


「はっ、承知致しました。伯爵にはエンリコ首相と共に説得に参ります。」


「うむ、それが良い。エンリコには余から伝える。エンリコを呼べ。」

 

モンテヴァーゴはエンリコ首相を呼びに行った。

さて、これでファーノIV世の懸念事項が全て片付いたとは言えない。何しろ他国の軍隊組織を駐留させる決断をした上に、国王不在の状況下に、戦闘部隊では無いが他国の軍隊が居るのだ。

しかも、あの隔絶した科学技術を持つニッポンの軍隊である。その辺りをエンリコ首相と話し合わなくてはならない。


「陛下、お呼びでございますか?」


「うむ、すまんな。エンリコ、相談があるのだ。余はこれからニッポンに行く。ちょうどニッポンがそれ用として船も用意している事だしな。」


「それは誠でございますか? 国王不在となると…」


「フィリポの事か?」


「左様に御座います。あの御方は、未だ野望を御捨てになっては御座いません。」


「うむ、そこでな。モンテヴァーゴに王都守備を任せた。だがな、それで十分だとは思えぬ。そこで貴公はアクレイデ伯爵を引き込め。余はモンテヴァーゴにも伝えておるが、このニッポンとの国交を機会にして、国内の刷新を図ろうと思う。それには国内が斯様に分裂しておっては発展もおぼつかぬ。彼奴が野望を捨てるなら良し。だが、野望を捨てぬなら……その為に、モンテヴァーゴと共同で事をあたれ。また、アクレイデ伯爵もこちらにつかぬ判断をするならば、やむを得ない決断をせねばならん。」


「承知致しました。王都守備に関しては不安は御座いませんが…フィリポ殿下とアクレイデ伯爵が手を組んだ場合は?」


「その時は内戦であろうな。念のため、バスティエリ陸軍大臣に近衛以外の動員を行う様に伝えよ。アクレイデにそんな度胸は無いと思うがな…」


国内の件に関しては、首相と近衛に任せておけばよい。不在の間の対応に関してはこれで良い。さて問題は、ニッポンが提案してきた例の件だ。


「エンリコ。ニッポンの先程の提案、どう見るか?」


「油田の調査、採掘装置の刷新、精製施設の委託、ですな?」


「うむ、調査と機材をニッポン製にするという事は願ったり叶ったりだ。言うなれば、我々の機材は手探りで作り上げた物に過ぎない。そこは無駄があったり、不具合があったり、理にかなっていなかったりという事が多々あろう。そこを技術を持つ国が、それを提供するのであれば、我々の国力増大に結びつく。だが、精製施設の全量委託、これは頂けぬ。」


「左様に御座いますな。我々の資源を全て他国に任せる、となるといざという時に使用も儘ならぬ事になりかねません。危険な事です。」


「それが故に精製施設を見たいと余は申し出た。精製施設を余が見ても見ないでも答えは決まっておるがな。これに関してエンリコよ。我が国から、この精製施設関連の技術者を派遣したいが手配出来るか?それと航空技術の設計者もだ。急ぎ明日までに出立可能にするよう手配せよ。」


「急ぎ手配致します。確か、どちらもこの使節団歓迎セレモニーに招待しておりますので…直ぐに確認致します。フェデリコ、ここへ!」


そして国王は再びニッポン使節団の所に戻っていった。

使節団は、国王陛下への献上品としてニッポンの様々な品を持って来ており、それらの品々を持ち込んで来ていた。その中には、日本の甲冑や日本刀等があり、ヴォートラン人の目を引いていた。この夜の宴は様々な思惑を綯交ぜにしながら盛り上がっていた。

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