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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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2_37.ファーノ-飯島会談

王宮に続く道に、ヴォートラン近衛騎士団の一行と自衛隊の高機動車4台とブッシュマスター2台が続いて走る様は、まるで何かの映画のシーンの様だった。自衛隊側は外に武装の無い、あまり威圧感の無い車両を選択した積もりだったが、高機動車はともかく輸送防護車たるブッシュマスターが放つ押し出し感は、それを見に来たトリッシーナの住人には十分に威圧感を与えた。


「見ろ、あれが噂のニッポンの陸軍だ。」


「ニッポンの戦闘用車両なのかな。大きいなぁ…」


「どの車のガラスも歪みが無いぞ。綺麗だな。」


この隊列の脇には王宮に着くまでぎっしりと沿道にトリッシーナ住人達が並んで、一目ニッポン軍を見ようと詰め掛けた。隊列が王宮に入ると輸送防護車を守るように高機動車が周囲をガードして停車した。そして輸送防護車からは、日本の飯島総理大臣や政府高官達が降りて来た。


「ここがヴォートランですか。いや、感慨深いですねぇ…」


「遂に異世界の他国に我々は足跡を残しましたね。」


「さあ、もうその位にしてだな。早速ヴォートランの方々に会いに行こうではないか。君が案内してくれるのかな?」


「それではご案内いたします。」


騎士団長モンテヴァーゴの案内で、ヴォートラン王城の宮殿へと案内された一行は、豪奢な宮殿の中を珍しそうに眺めながら進んだ。そして大きな扉の前まで進み、モンテヴァーゴは扉の前を守る衛兵に向かって、よく通る声で通達した。


「ニッポン国宰相、飯島総理大臣とその一行の到着である。」


大きな扉はすっと開き、そして大広間に様々な貴族や軍人、その奥には国王を思われる人物が玉座に構えていた。


「良く参られた!ニッポンの方々!さあさあ、こちらに参られよ。」


「私、日本国を預かる総理大臣の飯島と申します。

 お初にお目にかかりまして、光栄至極にございます。此度は態々貴重なお時間を頂き、誠に感謝の極みに御座います。」


「こちらこそ光栄の極みである、イイジマ殿。余がこのヴォートラン王国の国王ファーノIV世と申す。本日は貴国の素晴らしい提案を楽しみにしておりますぞ。そうそう、ここに居るのは我が国宰相のエンリコ首相である。貴国と条約を結ぶにあたり、エンリコに全て任せておるのでな。」


「ははは、それでは詳しい話は我々も実務の者を連れておりますので、その者と共に実務協議を進めるとしましょう。本日はまずご挨拶という事で、こういった物をお持ち致しました。」


何時ぞやのプロジェクターを取り出し、他国でも行ったプレゼンをここヴォートランの宮殿の中でも行った。今回はスクリーンを3つ用意し三方向に見せる事で、見学していた人達に万遍なく見える様にした。


また、ヴォートランへの土産物として、そのプロジェクターの一式及び発電機を複数台、置いてゆく事となった。この発電機はガソリンで駆動するタイプで、ヴォートランから産出されるスイート原油であれば、精製すればすぐに使えるシロモノだ。そして、日本との通信装置を王宮に設置し、発電機と組み合わせる事で何時でも通信が可能な状態とした。ガルディシアの様に映像での通信はインフラがまだ整っていないが、燃料がある事で、遥かに色々な事が出来る。


ファーノIV世は紹介ビデオを見て仰天していた。

実の所、思った以上に科学が進んでいる事が確認出来たのだ。あのプロペラ4発の水陸両用飛行機械を見た時には、我々の科学技術の延長線上である事は間違いなかった。それが故に、何れ追い付く事も可能であると考えられていた。これは王立科学院会長トリピエーノをして同じ考えであった。何れ追い付く事が可能、と。


しかし今回の紹介ビデオの中には、プロペラの無い飛行機械が恐ろしい速さで飛び回り、しかもその武装たるや、これまた恐ろしい速さで目標に飛び込み大爆発を起こすシロモノだ。しかも飛行機械は戦争用の技術だけとは限らない。民生で飛行機械を利用するのだ。しかも何百人も乗せて移動するのだ。そしてやはりこの民生飛行機械はプロペラが無い。トリピエーノ辺りは、"既に実用化出来る段階にあるのか…"と絶句していたが、プロペラよりも良い推進装置という物は理解し難い。


ファーノの傍で、ニッポンの総理大臣イイジマは付きっ切りで映像を説明してくれたのだが、この映像を見るにニッポンという国の規模は、正に空前絶後のレベルにある。これは噂に聞く西方世界にある文明大国と匹敵するのではないか?とも思える程だ。


何れにせよ、我が国がこの国と何かで対抗するのは非常に危険だ。

だが味方に出来るのであれば、これ程有難い事も無い。何より、今まで嵐の海があったおかげで西からの侵入という事が数百年皆無であったこの地域だが、嵐喪失の結果として西方世界からの侵入が再び起こらないとも限らない。それらが起きてもニッポンが友好国として隣に存在するのであれば…そうだ!


「イイジマ総理、一つ提案があるのだ。貴国は我が国に駐屯する基地を作りたくないか?」


「こ、国王、それは!!我が国を属国となさる御つもりですか!?」


「そんな積もりも無い。逸るな、エンリコ。

 我が国はあくまでもニッポン国と対等に交流する。だが、何かをするにつけ、物資を運ぶにも人を運ぶにもそれなりの土地と受け入れ環境が必要であろう。それらを我が国の中に整備し、そ

こを優先的に使えば宜しい。港でも空港でも。どうであろうか?

 駐屯駐留するに辺り、お互いが対等である事を条約に記せば、また、基地は一定期間の租借という扱いにしておけば他の者達も納得しよう。どうだ、皆?」


ファーノは他国の軍隊が自国内に駐留する意味を理解してはいたが…これほど強大な国に対しては、相手を取り込み、技術や情報を取り込む為なら、或る程度の犠牲は仕方が無いと思っていた。であるならば、いっその事自らの領土の一部を租借し、そこから情報を吸い上げるようにした方が話が早いと思ったのだ。しかもニッポンが駐留するのであれば、必然的にニッポンの投資も期待出来る。果たして日本の回答は相当前向きだったが、時間もかかりそうだった。


「我が国としては、願っても無い条件と思います。ただ一度国に持ち帰り協議の上でご回答したく思います。また、我々からも提案が御座います。貴国の油田を詳しく調査させて頂きたい。そして、出来るならば油田の採掘装置回りを我々にお任せ頂きたい。必ずや採掘方法の変更により、採掘用が増大する事になるでしょう。また、原油の精製施設は我が国にもあり非常に高性能なのです。出来る事なら、我々に原油の精製はお任せ頂きたい。」


「ふむふむ…貴国の精製施設をな。それに答える前に、貴国の精製施設の見学をしたいのだが?」


ファーノは精製施設にかこつけて日本を見に行きたいのだった。

当然、何等かの理由をつけて日本に来たがる事を見越して、飯島総理は豪華客船を引きつれて来たのだ。今回の会談が終了した後に、希望者を日本の見学に連れていこうと。そしてその栄えある見学希望者の一人目は、ファーノIV世に決まった。

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