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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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2_33.ヴァルターとエドアルドの脱出

エステリア西部 エルメ海岸南 帝国歴227年 5月29日 4時


「曹長、どうすか?」


「駄目だな、見つからん…そもそも、洞窟自体が分からん。」


真っ暗な海岸を洞窟を探して歩く二人組。海岸線でこれほど危険な事は無い。崖の下で洞窟を探しているが、暗くて全く分からない。


「少し明るくなってからの方が良かないすか?」


「お、おう、そうだな…そうするか。」


彼ら二人はエステリア王国脱出の為に、先に壊滅したホルツ特殊作戦団が使用する予定だった脱出船を探しに来ていた。だがその船が見つからないのだ。これが日中であれば、もしかしたらもう少し容易だったかもしれない。だが、逸る気持ちが暗い中での洞窟捜索に彼らを駆り立てた。だが1時間も探していたら、その気持ちも萎えてきた様だ。


「よし、適当な場所を見つけて仮眠を取ろう。エドアルド、先に寝ろ。俺が監視をする。1時間たったら起こす。」


波が来ない乾燥した場所を見つけてそこに入り込み、仮眠を始めた。直ぐに朝が来る。明るくなれば、洞窟なんぞ、すぐに見つかる。そう思いながら監視を続けたヴァルターだが、睡魔に負けて寝てしまった。


二人ともぐっすりと眠り込み、起きた時には日が高く昇っていた。目の前の海は全く凪いでいて、船一つ見えなかった。


「しまった!おい、エドアルド起きろ!!」


蒼白なヴァルターを見てエドアルドは思った。そもそも強行軍でここまで来て、俺達も相当疲労が溜まっていた。ここでこれだけ睡眠が取れたのも良い事かもしれない。脱出が目的で、どこかに期限がある場所に行く訳でもない。


「いや、曹長。俺達大分疲れが溜まってたんですよ。とりあえず休めたし、洞窟探しましょうや。」


「そうだな。いや、本当すまん。洞窟を探そう。」


ヴァルターも体力の回復を感じていた。これは良い兆候だ。この勢いで海岸線を捜索するならば、割と早くに見つかる筈だ。


二人は探し始めてから2時間程で洞窟を発見し脱出用の船を入手した。明るいうちに探せば、これほど早く見つかるものか。船の中身を確認してみると、非常用の食料も相当数積んである。樽の中には水が十分に入っていた。飲料用とボイラー用だ。取り合えずボイラーに火を入れる所から始めなければならない。ヴァルターはボイラーの水を沸かし始めた。恐らく日が暮れる頃には、この船を動かす事が出来るだろう……ヴァルターは蒸気が沸くまで、保存食を漁り始めた。


そしてヴァルターは帰路について考えた。

5月29日夜に出発出来るのなら、2日程度、遅くても3日でガルディシアに戻る事が出来る。行くならムルソーの港かティアーナの港だ。どちらがここから近いのか……

恐らく感だが、ティアーナの港の方が近い筈だ。

だがティアーナの港から帝都ザムセンに戻る為には山越えが必要だ。ムルソーまで進めば、ザムセンに戻るのも比較的容易だ。ガルディシアに着いた後の事を考えるならムルソーが良い。


「エドアルド、この先ガルディシアに戻るのに選択肢がある。一つはティアーナの港。こっちは近い。だが、ザムセンに戻るにあたり、山越えしなきゃならん。つまり陸路が長い。もう一つはムルソーの港。こっちは遠いが、ザムセンには行き易い。俺はムルソーを考えているが、お前はどうだ?」


「ティアーナの港だと…100km位ですかね。この船だとどの位の速度が出るんでしょうかね。8kt位かな。すると…7時間位ですかね。で、ムルソーだと180kt位ありますよね。すると12時間位ですね。ガルディシアに着く事を優先するならティアーナの港ですかね。」


「確かに海の上は何があるか分からんしな…まずガルディシアに戻る事を優先して、ティアーナに向かうか。」


「それが良いと思います。何せ俺達はたった二人しか居ないんです。何かが起きても出来る事は限られてますんで。」


「うむ、確かにその通りだな。ボイラーは未だ温まっていないが、夜には蒸気も出るだろう。出力が上がり次第、すぐティアーナに向けて出発しよう。」


「了解です、曹長。」


こうして二人は洞窟の中で、ボイラーが温まるのを只管待った。予定通り、夜にはボイラーも温まりエンジンを始動し、出力も上がって来たのでティアーナの港に向けて、洞窟を出た。


ちょうどブルーロ達がフーベルトス中尉率いる偽装漁船とレーヌの港で邂逅する一日前の出来事だったのである。

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