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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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2_32.出るのは容易、入るのは…

ガルディシア エウルレン市 場末の酒場


街の中心からは外れた居酒屋で、テーブルに一人で飲む男が居た。店は閑散としており、客はその男しかいない。そこに騒がしい二人組が入ってきた。その二人組を見るなり、独り飲む男が声を掛けた。


「よう、ベール、ストルツ、久しぶりだな。ガートはどうしたんだい?」


「おう、エンメルス!久しぶりだ! ガートはちょいと野暮用があってな。後で来るよ。」


ここエウルレンは、旧エウグストの首都だった街だ。

今ではバラディア大陸における東西南北の街道の要所となった事から以前よりも大きく発展していた。そして彼らが居る居酒屋のような店自体も相当数増えている。


「で、呼び出したのには理由がある、ベール。ここガルディシアで無線を使っているのは俺達とニッポン人だけだ。ところがここ数日、出所不明な電波が飛んでいるのだ。これがどこから出ているのか探りたい。」


「アレだよな?電波って見えないよな?目に見えないモノを探るのか…そりゃ一体どうやって探すんだ?」


「詳しくは俺も知らない。後で調査に協力する人員と機材をニッポンが手配する。問題は…手数が足りないって事よ。そこで聞きたいんだが、今どの位まで人員は増えた? その中でも相当に信頼出来る奴を何人か厳選してほしい。」


「基本的に俺達が選ぶ奴に信用出来ない奴は入れてねえ。なにかそっちに基準でもあれば、それに合わせるよ。」


「そうか。基本的にニッポンから渡される機械の操作が出来れば問題はない。ああ、それとも…もしかしたら戦闘になるかもしれん。その際は、ニッポンから銃器の類も支給してもらうんだが…こいつの扱いにも習熟して貰わなくてはならん。」


「ニッポンの銃器が使えるのか!」


ベールとストルツは目を輝かせた。

遂に噂に名高いニッポンの銃器に触れる事が出来る! 我々の銃は、単発式の拳銃と5連射の小銃しか無い。ガルディシア本体の軍の方には、連射式の拳銃や7連射の小銃が支給されており、所謂二線級の武器しか我々は使えない。


「ああ、支給される。というかもう既にある。ただな…俺も撃ってみて分かったが、練習が必要だ。ちなみに、俺に支給されたのはコレだ。」


エンメルスは懐からH&K SFP9Mを取り出した。

ベール達は自分達が見知った銃とは全く違う形のSFP9Mを見た上で、率直に感想を述べた。ちなみに、この酒場はエンメルス曹長の旧エウグスト海軍時代の先輩が経営しており、情報漏洩の危険も無い。当然、ニッポンから支給された活動費の一部がここに流れている。


「変わった形だな…これ弾はどこに…ああ、ここか。何発入るんだこれ??」


「17発だ。この弾が入る場所がマガジンと言う。ガルディシア正式の5発入る拳銃と比べても火力が大きい。何しろ、交換せずに3倍以上撃ち続けられるからな。しかも回転式と比べても弾の補給がし易い。」

 

「ふーむ、よく考えられて作られているんだな…これ1丁あれば、あいつらの小銃にも対抗可能だな。」


「それは無理だ。最初から威力が違う。それはともかくとして。実際にこいつを使うには、それなりに練習が必要だ。それに電波を調べる機械も、当然練習と勉強が必要だ。」


「なんだ、そんなに難しいのか?」


「その辺りは百聞は一見に如かずだな。まずは扱ってみた上で判断してくれ。やる事は沢山あるぜ。一応、ニッポンで電波を調べる機械は、俺達マルモラチームでも相当勉強している奴らが来るからな。そいつらに教わると良い。」


「分かった。まずはどこに集めたら良いんだ、エンメルス? この辺りなら3日以内に選定した奴を全員連れてこれるぞ。」


「3日か……そうだな、こっちも人員と機材が集まるのはその位だ。3日後にこの店で集まろう。」


「了解した。……早く、コレ撃ってみてえな。」


「そのうちな。嫌っていう程撃てるぜ。」


果たして、その願いは何れ叶うのだが……


--

ガルディシア首都ザムセン


ニッポンからの密入国者達は王都の一画を与えられていた。寝泊りが可能なそこで、彼らは集まり密談をしていた。


「今現在、海上保安庁と海自の目は北方に注意を向けている。ヴォートランという国が北方にあるが、そこが密入国をしようと繰り返し侵入しようとしているのだ。その為、日本の目は今そちらに注力しているが故に、逆方向の我々は運よく探知されずに出国出来た。これには、北朝鮮の同志の協力もあっての事だ。」


「あのパワーボートは実に早い。だが、日本は恐らく我々の出国自体は探知している筈だ。出てゆくだけなら影響も少ないが、入ってくる者にはそうはいかん。つまり我々が再度日本に入るのは相当難しいと思わなくてはな…」


「何れ、今回持ち出した品々の量産をこの国は求めている。だが電池が切れれば何れ使えなくなるとか、弾が切れれば終わりとか。ここで補給体制を作り上げなければ、我々はどうにもならん。」


「電力、旋盤、フライス盤が揃えばあるいは、な。だがここには無いものが多すぎる。」


彼らが持ち出したものは、何れ来る本国部隊と歩調を合わせ一斉蜂起する時に使用する為の武器一式だった。56式自動歩槍(中国製AK47)が10丁、40連マガジンが20個、RPG-7が2発、手榴弾が10個、そして無線機が10個だ。これらのうち、皇帝陛下との秘密裏の謁見時に一式を譲渡した。我々はこれらの物は直ぐに手に入るし、作る事も可能だ、と。それにより皇帝陛下に取り入ったのだが…


それを可能にするには、それなりのインフラが必要なのだ。日本であれば、適当な町工場であってもそれなりの物を作るのは可能だ。だが、ここはガルディシアである。電力さえまともに無いのだ。この状況でどうするか。


つまり、彼らが考えたのは日本に生産工場を置き、ガルディシアに密輸するルートを構築する事だった。そのうち日-ガ間に輸出入が行われる様になり、そうなればある程度大きい機材も持ち込めるようになる。だが、今現在それらの持ち込むのは目立ち過ぎる。かといって、あれだけ大口をたたいて皇帝に取り入ったのだ。今さら、"貴国では未だ生産出来ません。今すぐは無理です"なんぞ言おう物なら……こんな未開な奴らに心底馬鹿にされるだろう。それはともかく、あいつ等が望む通りの物をある程度納品してやらなければ、せっかくのチャンスがフイになる。


「まずは我々が日本に再度入る手段の確立だな。ただ、数度出入りすると直ぐに監視が厳しくなるだろう。なんらかの注意をそらす事も考えなくてはな。」

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