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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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2_31.ある暗躍

ガルディシアIII世のイラつきは最高潮であった。ゾルダーに任せていたニッポンとの協議は、通信インフラの整備は確かに行われた。食料や鉱物資源の輸出に関する協議も進みつつある。


だが、その食料の輸出に関してニッポン側から待ったがかかった。

直ぐに船に積み、そのままニッポンに送れば金になる、と思っていたがニッポンが言うには、このままの状態では日本の輸入基準に満たない、輸出を行うに守るべき基準があり、それに合致した物以外は輸入出来ないという事であった。しかも、その基準を満たすにはかなり高度な検査や調査施設を行える施設を準備し、そこでのチェックを済ませた上で、ようやく輸出が可能となるのだ、と言う。


あまりのニッポンの手続きの煩雑さに、今まで一声で何事も通してきた皇帝は面倒な余りに、ゾルダーに対して遂に癇癪を起した。


「ゾルダー!!一体どうなっておるのか!! 一向にニッポンに対して輸出が行われないではないか!! という事は、我々に技術も金も入って来ないという事だ!! これがどういう意味を持つか理解出来るか、ゾルダー!」


「存じております。

 然し乍ら、ニッポン側の規制や法律は我々も学ぶべき点も多いです。その規制が機能する事により、他からの紛い物が来る事もありませんし、要求通りの物が要求通りの品質で相手国に到着するのです。我々がその仕組みを学び、その仕組みに沿って輸出入を行うようになるならば、他国との貿易の際にも、ニッポンのルールに準じた仕組みを持つ国というのは大きなアドバンテージになると思うのです。陛下、ここは我々は忍び、そして学ぶ時であると愚考致します。」


ゾルダーは、日本のやり方を大分学んで大分理解していた。それが故に皇帝のいらつきを理解しつつも、日本寄りの考え方になっていた。だが、良い話もあるにはある。これらの高度な検査を行う機材一式や、調査を行う施設に関して、ニッポンが無償で設置し、また人員の教育も行うという。ゾルダーはこれらの仕事が一足飛びに結果に結びつく類の物ではなく、地道な努力や作業をもって何れ結果に結びつく、と理解していた。だが、皇帝は決めた事が直ぐに結果に結びつく事を願っていた。


「ゾルダー。貴様の言いたい事も分かる。だが、それでは国家が立ち行かん。我々は幾つもの艦と人員を失っておる。それが故に、我が国に賊が跳梁跋扈しておる。我々が弱くなったと見れば、喰らい付く連中は山ほど居る。然るにニッポンの力を我らの物にしようと、貴様をニッポンの窓口にした結果、現在はどうだ?」


日本の手続きの煩雑さを考えれば、ある程度は仕方が無い。だが、それ以上に最近のニッポンの対応は当初のような熱意を感じない。それはゾルダーも感じていた。だが、ニッポンのルールに従わなくては、そもそも輸出する事も出来ない。更に言うならそもそも皇帝が拉致未遂

なんて事を起こさなければ、もっと対等な進め方もあったかもしれない。言うなれば"アンタが原因だよ"と口に出来ないが思っていた。しかし、皇帝の次の言葉にゾルダーは心底驚いた。


「余の所に、ニッポンから別ルートで接触を図ってきた者が居る。彼らはニッポンに住んでは居るがニッポン人では無いという。また、思想的にニッポンとは相容れないらしいが、我々ガルディシアとは非常に共感を得る考え方をしておる。」


「そ、それは…陛下、その方々は、公式な何かでしょうか?」


「我らの国にそれと知って密入国して、余に接触を図ってきたぞ。彼らは、知識もニッポン人と同様で、なんら遜色無い能力を持つ。しかもだ。軍事的な知識を喜んで提供する、という。そして工場を設置し、その工場で武器を生産したいという。生産した武器を以て、ニッポンでそれを使う意思を持っている様だ。」


「陛下…それはニッポン内に存在する反政府勢力では…?それに与するとなると、我々も重大な条約破りの責を負わされるのではありませんか?」


「だが、どうやってニッポンの軍事技術を手にいれるのだ、ゾルダー。貴様はニッポンの軍事技術を手に入れる目途でもついておるのか?」


…陛下は目の前の、"直ぐに手に入る軍事技術"に惑わされている。こうなったら、この方は誰の言葉も聞かない。もしもこれに反対の意を唱えようものなら、彼の中で反逆者扱いは必至だろう。そして恐らくだが、これは恐ろしい程の危ない橋だ。


冷静になって考えれば我々の土地の上に作られる兵器工場なんぞ、高が知れるレベルに過ぎない。あれ程のニッポンの海軍力を作り上げる技術は、我々が作る事が出来る工場レベルで作れると思うのだろうか。精々が銃器の類でも簡単なモノばかりだろう。だが、ここは慎重に答えなければならない。


「いいえ、残念ながら…軍事技術に関しましては、当初予定の食品、鉱物資源が軌道に乗り次

第という方向で考えておりまして…」


「それでは遅いのだ、ゾルダーよ。我々は先程も申した通り、逼迫した状況にある。国内不安の増大や、不穏分子を逮捕しても逮捕しても沸いておる。にも拘らず、我々が得る物は今の所何も無いではないか!」


正直、通信施設設置や発電施設だけでも相当な儲けものな筈だ。

だが皇帝が思う"得る物"とは自分の目的に合致した物だけだ。それ以外は皇帝にとっては無意味なのだ。


「もう良い、ゾルダー。貴様はニッポンとの交渉を引き続き行え。だが…貴様の上司である情報局局長のレオポルド・テレンバッハに、彼らの対応を任せる。チャ何とかいう国の出身らしいが、元の世界でニッポンを数年以内に侵略占領する予定だったらしいぞ。だが、この転移でその機会を失ってニッポンに残置していた工作員の集団との事だ。ある程度の武器も隠していたらしいが、ニッポンで民生品を利用して武器を調達する方法等もあり、それほど技術力が無くとも、そこらの品物で同等の武器を作成出来る技術が彼らにはあるのだ。我々が彼らから情報を得て、武器を量産した暁には、もうあのような無様な事にはならぬ。見ておれよ…」

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