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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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2_29.王都トリッシーナでの謁見

「一体どうなっておるかっ、ラチアーノ!! ニッポンの飛行機械がトリッシーナに降りたという話ではないか!」


「只今情報収集をしておりますが…どうやらニッポンは既に国王の秘密兵器たる飛行機械の件を掴んでいるらしく、その辺りの情報確認とその飛行機械の動力機関、そして…その動力に使用する燃料に対する探りを入れている模様です。」


「まず、その情報を何故ニッポンが入手しておる! 飛行機械の情報は、我々も未だ入手出来てはおらん。我が方の潜入はどうなった?エンナ島とか言ったな。あれから既に10日以上経っておるが、どうなった!」


「申し訳ございません。潜入する者の条件が合わず…あの島出身ではないと潜入出来ません故、中々人員が揃いません。」


「そうよ、そういう事よな。だが、ニッポンは既に奴らの情報を捉え、我々より情報を得ておる。何故だ。我々が無能という事か?」


「何か、我々の思いもよらない手法ではないかと思うのですが…その辺りも含めてニッポンへの潜入も試みているのですが…近づくだけは近づけるのですが、必ず潜入路にニッポンの艦艇が張り付いており、警告を受けるのです。一体何隻の船が居るのやら…」


「そう、それもだ。何もかも一行に進まぬ。結果として我々は何も得るものが無いのが現状だ。そしてニッポンが我々からファーノに鞍替えしたのなら…もう我々が浮き上がる芽は無いぞ、ラチアーノ。」


「返す言葉も御座いませぬ。可能な限り、早急に対処致します。」


「ニッポンめ…何ゆえだ…」


単純に日本の鞍替えは、資源の現状から来たものだった。

フィリポとファーゴを両天秤にかけて転がしていた訳ではない。もしフィリポ側に原油に関する情報があれば、そのままフィリポと引き続き日本は彼を交渉相手としていただろう。


だが、日本側の探りにフィリポは全く反応を示さなかった。しかもフィリポ側は探りを入れられた事にも気が付かなかった。何故なら、その機関も燃料も興味が無かった事から一瞬会話に流れた知らない話題の一つに過ぎなかったのである。それが故にフィリポは原因に思い至らなかったのであった。


だが、日本側はその時既に航空写真で原始的な製油施設や滑走路がある事を知っていた。この件についての探りを入れた時の反応が、知ってて白を切っているのか、全く知らないので答えられないのかを確認した。


結果としてフィリポはこれらの情報を"全く知らない"或いは"殆ど知らない"と判定した。つまり、原油に関する交渉相手としては不適合、と判断したのだ。そしてフィリポはそれを知らない。


さて、そのニッポンが降り立った王都トリッシーナでは…

内調高田が国王ファーノIV世の前で説明を続けていた。


「我々が持つ航空技術に関する提供は、勿論タダでは御座いません。ですが、その提供に見合う資源等があれば我々は技術提供を惜しみません。また、我々が持つのは航空技術のみに留まりません。例えば、燃料に使う資源の採掘方法や精製方法、またそれを輸送する為の輸送インフラ、それを設営する為の技術等、多岐に渡ります。」


高田が滑らかに説明する。国王ファーノIV世は日本がヴォートランに何を求めているかを注意深く聞いていた。


「さて。これらの技術提供或いは場合によっては様々な機材の供与等、我々は提供する用意がありますが、それらの物は全て何等かの燃料を使用致します。我々としては、それらの機材を動かす為の燃料を提供して頂きたいと思います。」


「ほう、我々に様々な施設を設置する機材の燃料が欲しいと。それで貴殿らの益はなんとする?慈善事業か?我らを憐れんでおるのか?」


「いえ、我々の目的は交易です。我々が貴国と国交を結び、そして交易し、お互いの人、物、金が流通するようになり、お互いの国が共に栄える、それが目的なのです。」


「ほう、お互いにな。それだけ聞けば綺麗な話よな。だが、貴殿は技術提供する理由を未だ語ってはおらぬ。」


「我々の輸送技術は恐らくこの世界ではかなり優れていると自負致しますが、それを受け入れる施設はこの世界のどこにもありません。我々は大量に製品を予定通りに届ける、この簡単な事を大規模に実現可能です。そして、それはお互いが受け入れる施設を持ってこそです。受け入れ施設が無ければ、お互いにその機能を有効に使えません。そこで様々な技術を貴国に提供する事により、この輸送手段を効率的に運用する事が可能となるのです。」


「ふむ、なるほどな…要はニッポンが大量に商品を持ってきても、我が国の港に受け入れ施設が無ければ…という事か。それが航空技術とどう繋がる?」


「我々は、航空輸送も使用致します。緊急を要する物品の輸送に航空機を使用し、時間の短縮を図ります。その為に飛行場の整備、周辺施設の整備、機材の用意等があります。それが故に貴国には航空機という物を知って頂きたいと思います。」


国王ファーノIV世は迷っていた。

正直、このタカダという男の真意は別の所にあるだろう。だが、タカダが言っている事の半分が正しいとしても、我々が受ける利益は莫大だ。何より我々の飛行機械は実験レベルであり、一人の人間を乗せて飛んでも、国の外に飛ぶなど論外だ。

それが他国と航空機で結ぶとなると…

それだけでも我々への恩恵は大きい。これだけ恩恵の大きい物の見返りとはどのレベルになるのか…


「貴殿の言いたい事は理解した。だが即答は出来ぬ。明日、また来るが良い。本日は宿を用意する故、泊まられよ。」


高田ら一行は、王都トリッシーナに一泊した。

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