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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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2_25.日本の対外政策の変更

総理官邸 西暦2025年 5月27日 19時


「さて、情報がある程度揃ったようだな。各国の情報を聞こう。」


飯島総理は気軽に言った。

ガルディシア帝国とエステリア、ヴォートランとの戦争は停止した。だが、ガルディシアは良いとして、他二国の情報が少ない。これらの国との国交樹立に向けて、或る程度情報を把握しておかなくてはならない。そこで打ち上げたばかりの衛星と無人偵察機を使って情報を把握しつつ人の目でそれぞれの情報を確認する為に、それぞれ国交樹立の為の特使を送っていた。


「それでは外務省及び関係各省庁からの情報を統合し、日本を取り巻く国の情報を以下に記します。」


プロジェクターで投射された内容は以下であった。


・ガルディシア帝国

 位置:日本の東方600km

 政治形態:帝政

 国家の性質:好戦的。領土拡張の野心有り。

 動力レベル:外燃機関

 交易:周辺国との貿易無し。以前はエステリアと交易していた。

 資源:鉄、ボーキサイト、石炭、天然ガス、レアメタル

 産業:鉄鋼業、農業、漁業、林業

 特記事項:全土の統一から日が浅く、内乱の恐れあり。


「まずバラディア大陸のガルディシアですが表示の通り、非常に好戦的で領土拡張の野心が非常に旺盛です。ですが、内部には旧エウグスト公国の不満分子が相当数居ると思われます。人種的にはガルディシア人、エウグスト人、ヴォートラン人の3種。文化的には動力として蒸気機関を使い、製鐵技術もあり、それを以て各種の動力機械を製造する事が可能なレベルです。燃料としては石炭を産出した物を使用しています。この石炭産出は炭鉱からなので、この労働力にエウグスト人を使用しており、これもまた不満の種となっております。ガルディシア自体は非常に峻嶮な山岳地帯がほとんどを占めており、この山岳地帯が食料の生産を阻んでいますが、逆に鉱物資源の宝庫となっており、採掘から生産までの距離が非常に短い事が軍事力に反映しているものと思われます。今後の国交に関しては、鉱物資源、食料の輸入と引き換えに社会的インフラの整備に重点を置くとして、軍事技術に関しては慎重に進めませんと誠に面倒な国かもしれません。」


「質問があるんだが。聞くところによると、ガルディシアは発電施設は無いと聞く。我々が何等かのインフラを設置した場合、当然電気が必要になる筈だが、発電施設等の設置は可能かね?」


「現在、現地での通信施設に関しては太陽光や風力を利用しています。ただこれから大規模なインフラの設置、例えば港や空港を作る場合には当然、電力も必要となります。ただ、ガルディシアが軍港として使用している港はそれなりな規模がありますので、多少の設備投資を行えば、輸送用のベースとして使用は可能でしょう。それと並行して、入手可能な燃料を元に電力施設を設置するべきでしょう。」


「とすると、石炭火力発電か。」


「そうなります。ただ…現状、日本が原油を入手出来ていない以上、これらのインフラを設置したとして、最終的に使い物にならない可能性があります。」


「原油、もしくはそれに代替可能な燃料の確保か。」


実の所、残りの石油備蓄はあと120日程度だった。

それまでの間に何とかしなくてはならない。ガソリンは、エタノール燃料ハイブリット車に助成金を出し、輸送業界の車を中心に、ガソリンからエタノールに代えようとしていた。それに伴い全国にあるガソリンスタンドを順次エタノールスタンドに変更するように、石油業界に働き掛けた。だが、自動車はそれでよいとしても、艦船、航空機、ボイラー、重機等は代替燃料が無い為、従来通りの燃料を使わざるを得なかった。また石油由来の各種製品も代替はそれほど進

んではいない。そんな中で、ガルディシアへのインフラ設置の為に、国内の希少な燃料を回すのは、それ以上の見返りが無ければ国民が納得しない。


「当座、ガルディシアに対しては食料の輸出をベースに考えよう。」


農水大臣の江藤が口を開いた。


「総理、食料の輸出入に関しましては、ガルディシアへの職員派遣と現地への認定施設設置、衛生概念の教育施設の設置が必要です。可能であれば、現地の食品輸出会社にFSSCやISOの概念を理解して頂いた上で、動植物の輸出を彼らに行って頂くのが理想です。」


「それ、時間かかりそうだな…ある程度は日本がガルディシアの肩代りをしてみたらどうか?」


「現地指導の名目で、ある程度は可能ですね。」


「よし。それで早急にまとめてくれ。何せ国民を喰わせなきゃならん。よし次だ。」


「はい、次はエステリア王国になります。」


プロジェクターの内容は切り替わった。


・エステリア王国

 政治形態:王制

 位置;ガルディシアの東方100km

 国家の性質:領土拡張の野心無し。

 動力レベル:外燃機関

 交易:ヴォートランとの交易有。

 資源:鉄、銅、石炭

 産業:鉄鋼業、農業、漁業、林業

 特記事項:国王が日本に非常に好意的


「エステリア王国はガルディシアから東方に100km程、モートリア大陸西端に位置する王制の国家です。尚、モートリア大陸には山岳地帯があり、その山岳地帯によってモートリア大陸の西側との交流は断絶しております。大陸の全体像は把握しておりますが、西側にどんな国があるのかまでは把握しておりません。国王ル=フェイヨン8世がエステリア王国を統治しておりますが、国内情勢はガルディシアとの戦争により、やや不安定化しております。エステリアとしては、日本がガルディシアを抑制する事により、経済や治安の安定に寄与するもの、との判断から日本に対して非常に友好的な対応をしております。また、各種インフラ等の支援も希望しており、文化的にはガルディシアとほぼ似たようなレベルにあります。資源的にはガルディシアと然程変わりはありません。」


「なるほど。ここはガルディシアとほぼ同じ対応で良いな。他に何か特筆すべき点はあるかね?」


「そうですね…特にありませんね…次に行きますか?」


「そうだな、次を頼む。」


「はい、それでは最後のヴォートラン王国になります。」


再びプロジェクターの内容が切り替わった。


・ヴォートラン王国

 位置:日本の北方1,500km

 政治形態:王制

 国家の性質:不明。

 動力レベル:外燃機関、内燃機関

 交易:エステリアとの交易あり。

 資源:石炭、石油

 産業:精油業、農業、漁業、林業

 特記事項:国王と王弟の権力二重構造、石油産出


「ヴォートラン王国は、日本の北方1,500km地点にあります。

 この島は、かなり東西に大きく細長く伸びたリバルータ島という名前になります。航空による偵察では小さいながら滑走路が存在します。その為、この辺りの主流となっている外燃機関ではなく、何らかの内燃機関が存在するものと思います。ただ、この国は少々特殊でして、国王と大公、というか王弟の権力が存在し、それぞれに軍が付いています。我々日本が最初に接触したのがリバルータ島東側だったのですが、ここは王弟フィリポの支配域で、海軍は王弟派が握っている状況です。国王ファーノ4世側は陸軍を掌握している模様です。原油に関しては、リバルータ島西端に小さな島が点在し、その小さな島の一つの原始的な原油精製施設がある事を航空偵察ら確認しております。日本の現状を救える量か否かは分かりませんが、少なくとも内燃機関の燃料となる何等かは産出している模様ですので、まず優先すべきはこの国ではないか、と思います。ただ、この燃料の産出する島はかなり秘匿性が高い模様で、しかも国王ファーノの管轄にあります。」


「ん?それは、我々が最初に接触した王弟フィリポから情報が得られなかった、という事かな?」


「そうですね。王弟フィリポからは何も引き出せませんでした。…正確に言うなら、彼らもその存在をよく知らないようです。つまり、国王派と王弟派それぞれが互いに情報の秘匿を行っている様なのです。」


「面倒臭いな。王国内で兄と弟の権力争いがあるという事だろ?我々は石油が欲しいのだから、国王派の方に接触出来ないのか?多分、王弟派は日本と独占的な取引を行なった上で、国内の権力基盤の強化をしたい腹積もりなんだろうさ。だが…石油は欲しいが、他国の内紛に巻き込まれるのも面倒だな…」


「王弟派は、先の海戦で艦隊を失った為、相当勢力が落ちています。恐らく、日本との国交をテコに権力基盤の強化狙いは正しいかと。それと、最近日本の近海に侵入を試みる船が発生しています。見た所は漁船なんですが、警告を出すと直ぐに引き返します。それぞれ別の船が来ていますが、出港場所が同じなのです。恐らく、王弟派の調査船なのではないかと。」


「なんだそれ。引き続き来る船は追い返してくれ。取り合えず国王派の方と接触して、原油の情報を手に入れて欲しい。まずは悠長な事は言ってられない。最優先でヴォートラン王国の国王と接触してくれ。しかも可及的速やかに、だ。」


何はともあれ、日本にとって必要なのは燃料だ。今後の外交交渉に関する優先順位は、ヴォートランが最優先になった。そして対ガルディシアの交渉の優先順位が下がった事になり、下がった結果として皇帝ガルディシアIII世の対日本の印象は更に悪くなった。

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