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何かが始まりそうだ

「今日、家に誰もいないんですよ!よかったらさっきのファイターのスキル振り、直接教えてもらえませんか?」

俺は一瞬よからぬ期待をしたが、目の前の美少女はさっきはなぜ俺が勝ったのか、なぜ負けたのかを分析したいようだ。その目には、ゲーマーとしての闘志が宿っている。ゲーム作者にしてゲーマーの俺がそう思うのだから、絶対そうだ。


「おう、このレオ先生が直々に伝授してしんぜよう」

「本当ですか!?あの、今お茶入れてきますから、中で待っていてください」

お言葉に甘えて、俺は二年ほど住んでいたが全く関わることのなかった隣の部屋の中に入ることにした。聞いたこともない映画のポスターやペナントが部屋の壁中に張り巡らされており、まるで外国のようであった。


この女の子は、中々よく教育されているようだった。ついこの間まで修羅場だった案件と、就活のせいで浮浪者のような姿の俺を見ても差別的な態度を取らず、タッタッタと部屋のキッチンに向かって行った。


「同じマンションの一室でも、家具とかポスターでこんな雰囲気変わるんだなーっと…うん、悪くねえや、このゲーミングルームは」

俺の部屋のカップラーメンや冷凍食品の脂っこい臭いが醸し出す生活感とは違い、この部屋はシャレオツなバーみたいな雰囲気をしていた。このままゲームバーとして経営してもやっていけるんじゃなかろうか。


「お待たせ!アールグレイしかうち置いてないんですけど、お口に合うと嬉しいです」

「ああ、ありがとう…気を遣わせちゃったかな」

氷の入ったグラスに注がれたアールグレイティーが俺に振る舞われた。

「俺、諸星レオってんだ。レオンハルトって名前で格ゲープレイヤーやってる……のは、さっき見たっけ、えるえるちゃん?」


俺がさっき戦った銃とくまさんを遣う相手の名前はえるえるという名前をしていた。それと目の前の女の子が同一人物であるならば違和感のない態度を取ってくれるだろうと俺は推測したのだが、これが目の前の少女の勢いに火をつけてしまった。


「あ、レオンハルトさん、私がえるえるって名前なの、覚えててくれたんですね!あの、私のこのキャラクター!すっごくかわいくないですか。まずこの髪のサイドテールを束ねてるアクセ、これ結構拘ってて、これだけで二時間くらいかかってて…で、露出とかしなくてもちゃんとかわいいなーって思ってもらいたくて、もこもこした服にちゃんと体のラインが現れるように作ってて、それで、それで……」



俺はこの子のキャラデザ談義に三十分くらい付き合うことになった。しかしそれは全く不快ではなく、むしろこの前まで付き合っていた彼女の自分をひけらかすような態度よりはずっと心地よかった。



「そっか、がんばって作ったんだな、それ。俺は相手を威圧できればそれでいいって思ってたから、そこまでこだわってなかったな」

「えー、せっかく見た目がカスタマイズ出来るんですから、こだわった方がいいんじゃないですか」

こだわった方がいいと年下に言われるのは、俺のクリエイター魂に火をつけた。

「そうかそうか…じゃあこうしようか。俺はえるえるちゃんに強いスキルの振り方を教えるから、えるえるちゃんはそのセンスを活かして俺をコーディネートしてくれ。出来るか?えっと、…」

俺は目の前の少女をえるえると呼び続けていいものか、考えあぐねた。半値ならいいが、実際に呼ぶにはちょっと痛くないか、それ。何回も呼んでるが。

「私、双葉・エルフェルト・志織。シオリって気軽に呼んでください」

「そっか、シオリちゃん。今日はとことんこのゲームを極めてもらうことになるが、覚悟は出来てるか?」

「はい!私が159戦やって、初めて負けた相手にスキル構成を教えてくれるなんて、夢みたいです」


そうして俺たちは、「スキリングファイターVS」の攻略に数時間を費やした。それは彼女との初デートのように、刺激的なものであった……


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