チートみたいなキャラが出来た
今日は、一社目のS社の面接に行ってきた。俺が居た会社の面接は圧迫面接のようなもので、それはそれは気をつかったものだった。そのS社の面接では、「急にクビになったの?大変だねぇ」や「これとこれとこの言語まで使えるの?凄いねぇ」などの優しい言葉で満ち溢れており、なんだかお祈りされても別に精神的ダメージはないかなといった所だった。
いや、お祈りされては困る。一日の食費を抑えた上で失業手当の申請をしているとはいえ、一ヶ月以内に職を決めないと大分まずい感じの生活を送らなければならなくなる。郊外に構えた2400万円のマンションのローンが、けっこう残っている。この歳で自己破産など考えたくない…次の会社の面接も、全力でやろうと決意した。
さて、決意したはいいが、次の面接の内容も履歴書も全部考えてある。俺に出来るのは、ゲームをプレイし、内容をインプットして自分の糧にすることではないか…?
にやりとしながらゲームに現実逃避をする理由を自分で考える。まあ、ゲームは面白いからな。仕方ない。一生無職で部屋に引きこもっている者と比べれば、俺の現実逃避などむしろ同情されるべきものであろう。俺は「スキリングファイターVS」が入ったゲーム機を起動する。
昨日でスキルポイント稼ぎはあらかた終わっていた。そろそろ対人戦に移っても、良い頃だろう。肝心なのは、スキル振りである…いくら飛び道具主体のファイターを作ると言っても、闇雲に飛び道具を強くしていては相手に一瞬で距離を詰められ、ボコボコにされてしまう。相手との距離を取るスキル、相手の動きを制御するスキル、バランスを考えて俺はスキル振りをする。
そして重要な飛び道具だが、レーザー光線にした。急に当たり判定が現れて、相手を拘束するのだ。弱い訳がない。全部で100振れるポイントのうちの22を使うけっこうな重い技であったが、背に腹は代えられない。なんとかメンのアイツみたいに、相手に指一本も触れさせずに勝つことを夢想しながら、俺はトレーニングモードを選択した。
このゲームでは自分のスキル振りを少し変えればコンボパターンも全く違うため、トレーニングモードの重要性が他とは桁違いであった。相手のスキル振りが違えば相手が技を受けた時の挙動に影響が出るので、絶対に決まるコンボというものはこのゲームには存在しない。その場のタイミングで、気持ち入力でコンボを決めていく。センスがないと出来ない技であろう。しかし俺は、永久コンボを見つけるのがプログラマーの経験でかなりうまい方だと自負している。早速、デフォの重さであれば一生ビームで相手を浮かせながら10割コンボを決めてしまうものを発見した。俺はスキルポイントを余分に取得していたので、ビームが絶妙に相手を浮かせられるよう強さを調節していた。一番宜しい振り方が、「ビームに22ポイントを振ること」だったわけだ。このスキル振り、絶対有名にしてはならないと俺は心から思った。21でも、23でも、ダメなのだ。有名になったら、全員がこのスキル振りにしてしまうことだろう。
早速オンライン対戦に潜っていく。剣を持った勇猛なファイター、世界チャンピオン然としたボクサー、かわいらしい姿をした魔法少女が、遠距離から急に出現したビームから始動するコンボで、何も出来ずに沈んでいく。
んン~~~~~~お前ら、雑魚!俺つええええぇぇえ!!!!!!!!
ゲーム、楽しすぎる。このゲームを開発した人、やっぱり俺と同じで、遠距離からネチネチやるのが大好きなのではないだろうか。そうでなければ、レーザーの浮きの判定をあんなに甘いことにすることはなかろう。バグのような永久コンボで、俺は連勝を重ねていく。
そして次の相手は、銃を持った小さな女の子であった。
モデリングも自由自在な本作は、かわいい女の子からゴツい黒人まで、いろんなキャラを作ることができた。もちろんモデリングなんてめんどくさいという人のために、かっこいいイケメンやかわいい魔法少女のプリセットも多数取り揃えている。
俺のモデリングしたキャラは、硬派にスーツを着た20代半ばの男が無慈悲にレーザーを発射するようなものになっていた。相手に「かわいいキャラに殺されるならしゃあないか」という心の余裕すら、俺は与えたくなかった。さあ、次も勝つぞ──!