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殺されるかと思った

俺は起きて色々準備してからシオリちゃんの部屋に向かうと、一家が勢揃いでこちらを見ていた。シオリちゃんの父親とは初対面だが、181cmとそこそこ自信のある俺の身長より10cm強デカそうな体躯にムキムキな全身、ドイツ人みたいな面構えで完全に圧倒されてしまった。お前に娘はやらんとか言ってきたら、ネコとネズミのネコの方みたく壁を突き破って逃げようと思う。


「こんにちは、あなたがレオジさん…でよかったかね。娘が世話になってるよ。娘は家にこもりきりで全然友達を作ろうとしなくてね…君が話し相手になってくれてから、志織は毎日が楽しそうで何よりだよ」


だがその父親の態度はまるでサンタクロースか何かのように慈愛に満ち溢れていた。俺が極悪レイプ魔だったらどうすんだよ。完全に据え膳を一家全員で調理しちまってるぞ。いや、据えられたら食うけど。


「初めまして、隣に住んでる諸星レオと申します。娘さんとは、いつも楽しく遊ばせてもらっています。お父さんの名前を、伺っても」

ドイツ人みたいな顔をしたこの人が日本語が通じそうなところはありがたかった。というか両親二人共英語しか喋れないならどこで日本語を勉強するんだって話だしな。

「ああ失礼、私は双葉幸三。文部科学省で働かせてもらっている者だよ」

教育関連の所だっけか。俺めちゃくちゃ教育に悪いと思うんだけど、大丈夫なんですかお父様?

「はぁ、恐れ入りました…娘さんも、とてもよく教育されているようで。僭越ながら私クリエイターをやらせて貰っていますが、既にシオリちゃんはプロのそれと遜色ないようにお見受けします」

正確にはこの前までやらせて貰っていました、だが、あと二ヶ月くらいでまたやらせて貰える筈だ。

「ハッハ…私としては、この年代の子は"心"の教育のほうが必要だと思うのだがね。失礼、私専攻が道徳教育法というやつでね。子供にうわっつらな考え方を覚えさせるだけのあの授業を、どうにかしようと奮進しているのだよ。なかなかうまくいかなくてね、家族には迷惑をかけてばかりだよ」


こんなに凄そうな人で、結構な地位についていてもままならないことがあるのか。世界は広い。


「世の中を良くしようというその姿勢、見習わせて頂きます…」



そうしてお父様との会話を終えると、シオリちゃんのゲーミングルームに向かった。作戦を立てていると、エリザさんからアイスティーが運ばれてきた。紅茶には詳しくないのでよくわからないが、シオリの淹れるそれよりもさらに香りが強く、そして飲みやすい一杯となっていた。



「それで、ただ凸をしても中々IDの打ち込み合戦で勝てなくて、対戦できないと思うんだ。そこで、このバグを使う。IDの打ち込みのときだけ、コントローラーを二つ認識するようになるんだ。これを使って、二人がかりでIDを入力していく」

真由美の配信は、常に何百人かが見ていて、そのうちの何十人かが常にIDの入力を待機し、連打している。こういうことをしないと、粘着はできなさそうだ。

「二人がかりで、って…かなり難しそうですけど」

「俺が作った8桁の英数字を生成するマクロがあるから、それを使って練習しよう。大丈夫、俺達ならきっとできるさ」

「…はい!まずは、やってみましょう」


そうして練習を始めたのだが、1時間ほどでそれはものになった。ワンツーワンツーと息ピッタリなのは、それだけでとても嬉しかった。方向キーとAボタンだけで8桁の数字を2秒以内に入力できるようになった。よし、これで準備は完璧だ……!





かくして、俺達はエリザさんの淹れた濃い紅茶を片手に、まゆりんと決着を着けることになる。


「こんこんまゆりんっ♪どうもまゆりんです!今日も、視聴者参加型企画で、スキファイの方、やっていきたいと思います!」


にっくき200万強奪女が、画面の左下に映し出された。ぜって~許さねえ。お前なんぞ俺達の魂の弾幕STGキャラで、絶望の渦に叩き落としてやる…!








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