キャラ対も自由自在なゲームだ
ナルキッソスとは元ネタのギリシャ神話よろしくダークなイケメンキャラだ。しかし元ネタほどナルシストというわけではなく、ストイックに泥臭く進むストーリーは女心を掴んだらしい。俺はクッソつまらんと思いながらAボタンを連打してたが。
して、こいつの武器は範囲の狭い双剣だ。発生の速い弱Pから繋がれるコンボは上級者が使えばプリセットそのままでもまあまあ強い。なんなら油断してると5割ほど持ってかれる。まゆりん…真由美のカスタマイズしたナルキッソスは、こいつのリーチを目一杯上げ、発生4フレームでどっからでも殴れるようにしてる戦闘スタイルだ。負けず嫌いのアイツらしい、猪突猛進の戦法だ。
「…っていうのがアイツの使うナルキッソスの特徴だな。闇雲にくまさんを置くだけだと、それごと斬り伏せられちゃうよな、このリーチ感だと…どうすればいいと思う?」
俺はシオリちゃんに問いかける。こうやって質問形式で授業を展開したほうが教えやすく、また教わる側の頭にも入りやすい。俺の育てたプログラマーの卵達も、どこかでうまくやれているだろうか…
「うーん…後ろにハイジャンプキャンセルを入れながら、くまさんを置いて立ち回る、とかですかね?」
「正解。じゃあどうすればそのくまさんを当てられると思う?ミニガンを置いてる暇は、無いよな」
「うーん…くまさんと一緒に突っ込んで肉弾戦に持ち込む、とかですかね」
「そうだな、今までと180度違う戦法を取らないとこいつには勝てない。その意味でもいい練習相手になるんじゃないかなって俺は思ったんだな」
「なるほど、燃えてきました!」
そうして対まゆりん用のえるえるを二人で考え、カスタマイズしていく。武器は、大剣にした。ナルキッソスの双剣の外側から、こちらの大剣を当てられそうな代物だ。もちろんくまさんの外側から攻撃できるので、盾を展開しながら戦えるというスタイルは変わっていない。メイン武器が大振りなのも変わっていないので、こいつの使用感を確かめるべく俺はレオンハルト様を用い、えるえるmk.Ⅱと対戦をする。
「あ、またそれ。くまさんの間からビームを食らっちゃうとコンボ成立しちゃうから、弾幕を切らさないように注意が必要ですね」
先程までと打って変わって、俺の勝率が9割を越えていた。もちろん一方的な展開にならないよう、くまさんを展開する前にレーザーを撃ち10割コンをキメる等のことをしないように気を遣いながらの結果だ。
「慣れてないせいか、弾幕を展開しながらの接近戦に頭が追いついてないみたいだな。一つ一つ、覚えていこうか」
「はい!やっぱりこのゲーム、色んなパターンのキャラで戦えて、面白いですね」
「それがなんでもできてしまうっていうデメリットでもあるんだけどな。ただ、面白いには違いない。だって、もう7時間も連続で遊んでしまってるんだからな」
俺達はエリザさんの施しを受けながら、ずーーーっと画面に向かっていた。アドレナリンが出ていたからか、俺には不思議と疲労感がなかった。
「えぇ!?じゃあそろそろ寝ないとですね。ママ、I'll make a bath immediately…あ、レオジさん、よければうちのお風呂、どうですか?」
「や、今日は自分ちでシャワー浴びて速攻寝ようって気分だからさ。ごめん」
今この状態で熱っぽいシオリちゃんの姿を見たら色々耐えられる自信がない。俺は鋼の意志で断る。
「そうですか。じゃあまた明日!」
「ああ、アイツは明日の19時から配信みたいだからな。……あー、とぅもろーあい、かむ、ひあ、あっとすりーぴーえむ。おけい?」
俺はニコニコ顔を最後まで崩すことのなかったエリザさんに、明日もここに来ていいか許可をもらおうとする。理想の母親像そのものっぽいな、こりゃ。
「Sure.Make Shiori the strongest fighter!」
ここまで聞いていてエリザさんの英語は全く聞き取れなかったが、シオリちゃんがゲームにのめり込むことに肯定的っぽいのはなんとなく伝わってきた。なんというか、親が楽しそうに子育てすれば明るい子供に育つって感じなのかな。やっぱりこのブロンド髪の美人さん、理想の母親っぽいな。
俺は殺風景なマイルームに戻ると、入念にシャワーで体を洗う。服には、シオリちゃんの部屋の甘い香りが染み付いている。嗅いでいるとだんだん何とは言わんが大きくなっていくので、急いで洗濯機に突っ込んだ。
俺は大きくなったそれを意識から遠ざけるよう、真由美が俺にした悪行を脳内で数えて、反骨精神を高めながら寝ることにした。もうアイツでシコれる気はせん。客観的に見ると、なんて女だ。ネットで叩かれていないのが不思議でしょうがない……




