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378.そのころの元の世界について

 ポーザ。


 元の世界でその特異な才能から貧民から掬い上げられ、そして冒険者や後ろぐらい仕事を行うことで生計をたてていた少女だ。

 その仕事の一環として、リオニアの軍務卿の組織した裏の王国騎士団に入団し、ニューリオニアとリオニアスの裏の仕事をしていた。

 その中で、リオニアス冒険者ギルド襲撃に関わり、結果として俺のパーティである“ドアーズ”に入団した。


 入団後は、魔物操士の力を存分に活かしてパーティ内の何でも屋としてがんばっていた。


 俺が魔王となって魔界に行った後、彼女も使役する魔物を探しに魔界に来ており、妖鬼との戦いの終盤では援軍に来てくれた。

 それから魔界に留まり、俺の結婚式に参加するために魔王軍本営にいた、はずだった。


「うん。実を言えばボクはあの夜、本営にいなかったんだ」


「ほう?」


「夜行性の強力な魔物がいる、と聞いてちょっと出掛けてたんだよ。そしたら真夜中に連絡用に残していた魔界雲雀から危機的状況って来たんだ」


「なるほど」


「戻ってみたら、本営は異界化してるし、ギアさんもリヴィエールさんもいない。これはマズいと残ってる人たちで話し合ったんだけど異界突入派と魔王捜索派に別れちゃって」


「どっちもやればよかったじゃねえか」


「うんうん。今思えばそうなんだけどさ。その時はみんな大混乱だったから」


「何のための丞相二人制だよ」


 魔王軍では、緊急時に迅速な判断が出来るよう昼と夜で優先権を変えた二名の丞相を置いている。

 昼間は魔人のボルルーム。

 夜間は吸血鬼のツェルゲート。

 この二名ならどんな問題でもたちどころに解決できる、はずなのだが。


「それが悪い方に作用した感じかな。二人の意見が対立して、魔王軍内でも別れちゃった感じ」


「あいつは……エクリプスはどうした?」


 元勇者で、俺の配下でも指折りの力を持っているエクリプスが何もしないというのはありえない。


「それがですね。エクリプスさん、異界化した本営を守るといって、そこに陣を敷いちゃったんですよ。それで異界突入派があわあわしちゃって」


「狙いは読めんが、奴のことだから何か考えがあるんだろ」


「で、今度はエリザベーシアさんが泣き出して」


「リズが泣いた?」


「愛称で呼ぶなんて、ずいぶん親密なご関係の女性らしいですわね」


 と、横にいるミスルトゥが口を挟んでくる。

 今は関係ない。


「泣いた泣いた。もう、小っちゃい子みたいにエンエンと」


「よほど……混乱したのだろうな」


「なので一旦、論争が落ち着いたところに神様が来たんです」


「神?」


 魔界の魔物たちの前に神が来た。

 なんという意味不明な事態。


「恐るべき弓の神キースと名乗っていました」


 確か、ラスヴェートの眷族である十二神の筆頭と言われる神だ。

 知恵と謀略、そして弓取りの神。


「ラスヴェートの使いか」


「あまり神様の名を口にしない方がいいですよ?いくらギアさんでも」


「そうだな。名を口にすると呼んでしまうからな」


「それで、神様が言うには異界化の中では取り込まれた人たちが脱出を図っている、そしてギアさんの居場所がわかったため、その援助を願いたい、とことでした」


 それはラスヴェートの話の裏付けになるな。


「援助ね」


「ボクを含めて三名?がこのイグドラールに来ているんだ」


「深淵の夢の使者には会ったぞ」


「うん。夢を通ってどんな世界でも移動できるってすごいよね」


「お前も夢魔系の奴と契約すればいいだろ」


「そうなんだよね。でも、なかなか夢魔の人と会わなくて」


「今、魔王軍本営に使者としているぞ」


「え!?気付かなかった……」


「あいつら気配を消すのがうまいからな」


「話が進まんぞ」


 とゼルオーン。


「ゴメンなさい。そしてボクはたまたま使役する魔物の中にこの世界の出身の子がいたから、逆召喚をしている状態なんだ」


「逆召喚?」


 聞いたことのない単語だ。


「普通はボクが魔物をその属している世界から呼び出している。でも、今は魔物が属している世界にボクを呼び出している状態なんだ」


「そいつは……大丈夫なのか?向こうはどうなってる?」


「向こうではボクは意識のない体を置いてきぼりにしている状態だね」


「それは不味くないか?もし何かあったら」


「それは大丈夫。竜族の拳法を会得したバカが守ってる」


「ああ、あのバカか」


 誰とは言わないが、俺が最も信頼して頼りにしている男だ。

 あいつなら、大丈夫だ。


「なので、ここにいる分には問題ない、というわけ」


「そうか。それでどうしてここなんだ?」


 俺はしばらく前からメイローズにいた。

 なのでメイローズのたとえばゴーレンにでも来れば、すぐに合流できたはずだ。


「それがさー、来た場所がこの国の外れでさー。なんとかエンさんに連絡が取れて、でこっちに来るように誘導してもらったんだよ」


 エンさん、とはおそらく深淵の夢の使者、のことだろう。

 以前にそう呼ぶように言っていたことがある。

 その時は誰も呼ばなかったが。


「まあ、渡りに船か」


「エンさんは公権力的な援助を、ボクは仲間として援助、そしてもう一人は……まあ、合流すればわかるよ」


「それでなんでギリアルと知り合ってるんだ?」


「それもエンさんの仕込みでね。夢の中で未来予知させて、神託を与えて、ボクと出会うことが必然である、と思わせたんだよ」


 なんという卑怯な手法だ。

 それがあれば俺が苦労して、メイローズの王宮に乗り込まなくてもよかったのでは?

 例えば、メイローズ王に救国の戦士だとか思わせるとか。


 ん?

 そうか、深淵の夢の使者はそれをやろうとしていたのか。

 しかし、俺が自力で地位と権力と武力を手に入れたから、やることがなくなったと嘆いていた、というわけか。


 まあ、それにその手法で成り上がっても、ここにいるこいつらとは出会わなかったわけで。

 それを考えると、俺のこれまではけして無駄じゃない。


「それでこの内乱寸前の状態に巻き込まれたのか」


「ん、まあね」


「ようやく現在に話が来たわけだ。俺っちたちにもわかる話をしてくれよ」


「うわあ、もしかして知性のあるアンデッドさんですか!レア!レアですよ!」


「お、おお、俺っちのファンか、ファンなのか!?」


「ギアさん、この人性格がボクと合わないかな」


 ポーザが興味をもったであろうロドリグから離れた。


「うわああ、俺っち、悲しみのあまり憤死しそう」


「お前はもう死んでるだろ」


「だから話が進まん!」


 ゼルオーンが怒りだす前に話を進めることにした。


「というわけで、俺たちはこの国の内乱に王子のギリアル側で参加することにした」


「赤組の第一騎がどこかの王族であるかも、という話は聞いたことがある」


 だが、まさか本物の王様とはな、とゼルオーンは呟いた。


 まあ、十年前に変わった世界のことを覚えているものは百名くらいらしいので、その中に一人や二人、王様がいても不思議ではない。


「なので一番上の奴から反乱罪に問われている現在、自由に動くためにはその一番上を倒すほかない」


「それも大変な話だ」


「もしくは、この国全部をぶっ潰す」


「それは止めようね、リーダー」


 簡単な方法はダメだと言われたので、俺たちはギリアルを大君の座につけるため活動を開始することになった。

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