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バーティー・グーンのファンタジア  作者: 目安ぼくす
序章:ワールドスワップ
7/22

虎穴の獅子と灰の鼠

ライオンころころ、どんぐりこ~

目覚めの時だ。


ネメアライオンは、そう感じて鎖を引きちぎった。


自分に挑戦しにくる無謀な勇者がいることを直感して。


「おい、何をしている!?檻の中に戻れ!」


見張りの小猿ががなりたてるが、猛獣はそれを無視して、叩き潰す。


「ね、ネメアのライオンが暴れ出した!やっこさんはお怒りだぞ!」


飼育係の小猿は、次々と骸骨の群れに紛れて逃げ出す。


誰も、凶暴で手に負えない獣の躾などはしたくない。


ネメアライオンは、威風堂々と威厳を持ち合わせて、骨の大海を泳ぎ進む。


立ちはだかる骸骨どもは砕かれ、塵と帰す。


かの獣は災厄の化身、破壊と絶望を周囲に撒き散らす。


そして、それ目掛けて我らがバーティーは、急降下した。


それを目にした王者は吠えた。


その咆哮は音の刃、行先全てを切り裂く狂乱の剣。


砦まで一直線に、骸骨どもは蹴散らされる。


あわや砦も風塵となってしまうのか、と思いきや。


「させねえ!」


少年がその前に立ちはだかって木槌を掲げる。


すると、そこから音の刃を弾き返す、音波の盾が発信され、ことごとく音の剣は叩き折られる。


すんでのところで砦は守られた。


しかし、その隙を逃さず巨躯の腐り獅子、ネメアライオンは突進する。


巨体を生かしてネメアライオンは、小猿よりも小さい小人のバーティーを叩き潰してしまわんとトライした。


だが、素早く身を翻したバーティーは、軽々とその突撃を避けて転がる。


木槌を右手に少年は駆け出し、獰猛な獅子に自ら襲いかかり、一振り。


ネメアライオンの右前足を打つ。


だがしかし不幸なるかな、塞翁が馬は微笑まず、その打撃は一切のダメージを大獅子に与えず、音の刃と似通って、弾き返される。


ニヤリとネメアライオンは牙を見せて笑う。


「グロウル。人間、オレ、傷ツケラレナイ。オマエ、弱イ。ミンナ、弱イ。強イノハ、御方ダケ。」


「何言ってんだ。俺はまだまだ、こんなもんじゃないぜ!」


バーティーは、木槌を強く握り締めた。


「ネプチューン!」


『嵐の如く、雷鳴を呼べ。【電撃交差(ライトニングチェイン)】』


腐った大獅子へと向けられた木槌の先から電撃が迸る—


果たして雷撃は命中し、ネメアライオンは苦痛に吠えて、身体を海老反りにして感電、のたうちまわった。


転がり落ちたネメアライオンに、骸骨はどんどん押し潰される。


『効果は絶大のようだ。だが、気をつけろ。私が権能を行使できるのは、あと数回だ。それではあの獅子を倒せまい。』


「分かってる。俺は油断しねえ。王子とやらの救出が優先だ。追い払うだけにするよ。」


少年は珍しく、思慮深く選択をする。


腐った大獅子を追ってもいいが、優先順位というものがある。


人命救助と害獣討伐。


彼の価値観に照らし合わせれば、ネメアライオンの討伐は当然、後だった。


「さあ、追い討ちだ。もう一発食らわせてやる─」


復讐に燃え盛る瞳を向けるネメアライオンに対して、バーティーは落ち着いて冷静に、冷淡に裁定を下す。


右手一つから、両腕二つに木槌を持ち替えた彼は、グッと腹に力を込めて、胃腸を固める。


胃腸から身体全体へ、今よりも、もっともっと暖かいものが広がって、少年の髪は逆立つ。


熱を帯びた体の中で分子は加速し、エネルギーが早く俺を解放しろと暴れだす。


その熱狂が最高潮に到達するとき、衝撃は一点に解放される─


『大地を貫く、雷光の嚆矢。突き通せ、【鎧通し】』


吠えかかり、再び愚直にも突撃を試みたネメアライオンの鼻っ面にそれは直撃した。


雷を模す紫電の一刺しは、真っ直ぐに獅子の尻尾までをビリリと響き渡る。


そして、さらなる感電に加えて、解放された衝撃の奔流が腐ったライオンを星の彼方まで突き飛ばす。


「グローウル!」


ドップラー効果で引き延ばされる獅子の悲鳴は、正に赤子の号泣。


ここに勝負の決着は着き、バーティーの勝利は確定した。

ネメアライオンは星になったのよ、おほほ。

流星って奴かしらね。

Foreshadowingね、これも。

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