表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バーティー・グーンのファンタジア  作者: 目安ぼくす
序章:ワールドスワップ
4/22

虎穴に入ろうが獅子

新展開だよ!

やっときた。

「殿下!文字通り、こいつらには()が立ちません!」


「それを言うなら歯が立たないだ、ケブル!弓兵は奴の目を狙え、槍兵は槍衾を組め、剣兵は私に続け!この戦、勝ちに行くぞ!!」


「「「ウオオオオッ!!!」」」


 寡勢であったが、王子の近衛兵団の士気は尽大であった。


 練度の一番高い、国の最精鋭部隊に守られながら辺境へ落ち延びた王子は、再起を図り、一つの砦に立て籠もっていた。


 幾たびに渡る骨の軍勢を跳ね除けてきた彼ら、余裕綽々で十日目の防衛戦に臨んだが、苦戦していた。


「「グロウル、グロウル!!」」


「獅子共を寄せ付けるな、殿下をお守りするのだ!」


 槍と大楯を持った重武装のファランクス隊が、砦の側面にこじ開けられた穴から這い出る腐った肉で出来たライオンを迎撃する。


 整然と整列した重装歩兵達は槍を構え、一列目から順に突き出して腐ったライオンたちを貫く—


 ことが出来なかった。


「グローウル!」


 槍を物ともせずに弾いたライオンは、腐臭を撒き散らしながら兵士に襲いかかる。


「うぎゃああああ!?」


 右腕を食い千切られた一人の兵士は、左手に構えた短剣で果敢に反撃するが、ライオンの黒く濁った毛皮を貫通できずに食い殺される。


 その隣の兵士が槍を捨て、長剣で斬りかかるが、毛皮に当たってポキリと折れてしまう。


 唖然として腐ったライオンを見つめる兵士は、すかさず別のライオンに爪で切り裂かれる。


「武器が効かないぞ、こいつら!」


「目を狙うんだ!?そこなら攻撃が通るはずだ!」


 混乱する部隊を立て直すために、重装歩兵隊を指揮する百人隊長は、自ら率先して先頭に立ち、槍で腐肉の獅子の目を貫き通す。


 脳天を破壊された獅子は倒れ伏し、行動を止める。


 その様子を見て兵士らは歓声を上げた。


「奴らは無敵じゃない!」


「無敵じゃないなら敵じゃない!!」


「来た、見た、勝った!!!」


 勇猛果敢な兵士たちは、鬨の声を挙げて、穴から溢れ出す獅子の群れに突撃を敢行する。


 広い砦の敷地に数百人いる兵士らに対して、狭い穴から一匹ずつ出てこなければならない獅子たちは局地的に劣勢となり、あっと言う間に数の力で押し潰されて、穴は塞がれる。


 その様子を、王子は南の壁の上から見つめ、密かに心中で喜ぶ。


 倒した腐り獅子の屍に横たわり、彼は側仕えのケブルが注ぐティーを優雅に飲み、過ごす。


「殿下、激戦でしたが3度目の猛攻を退けたようです。」


「もうすぐ昼になるな。太陽は高く昇り、我々に勝利と栄光をもたらす…といいのだが。」


 王子は、周りにケブル以外誰もいないのを確かめて、うな垂れる。


「私のために何人が犠牲になった…」


「殿下…」


「言え!…言ってくれ。」


 王子は感情の高ぶりを抑えられずに怒鳴るが、すぐにそのことを恥じ、平静さを取り戻した。


 あまり言いたくなさそうなケブルも、覚悟を決めて口にする。


「…恐れながら、此度の戦で四百二十八名が帰らぬ身となり、千三百弱が負傷、砦の最奥部に移送されました、殿下。」


「そうだ、私についてきてくれた近衛兵団五千名のうち三千が、これまでに死傷した。残りはあと二千。死霊術師の軍勢相手にあまりにも心許ない。奴らは無限に湧いて出てくる。」


 王子は南の壁の上で、敵がいる方を見やった。


 骨の亡者の白の大軍。


 骸骨どもが地平線にまで溢れて、砦を囲み、王子たちを包囲して逃さない。


 圧倒的な数の差である。


「降伏した方がいいのだろうか?」


「殿下!」


「私の身と引き換えに近衛兵団全員の助命も悪くない。大のために小が犠牲になる。正しい国のあり方ではないか。」


 悲観的に絶望する王子は、ケブルに弱音を吐き続ける。


 多大なストレスに晒された若き青年の身と精神は、もはや限界なのだ、十円ハゲが出来るくらいには。


 もちろんハゲは、その豊かな黒髪で周到に隠しているので誰も知らない。


 ケブル以外は。


「このままでは、みんな死ぬだけだ!誰かが救わなきゃいけない、私が、いや僕が犠牲になって何もかも解決するなら、さっさと死のう!その方がみんなのためになる。そうだろう、ケブル!?」


 王子は激情に任せて我武者羅に乱心する、怒りと後悔に身を任せて。


 目を見開いて、苦渋に顔を歪ませながら王子はケブルに向かって叫んだ。


 それは慟哭の叫び、嘆きの最高潮。


 すっかり弱ってしまった王子にケブルは困惑する。


 なんと声をかければいいのか、どうすればいいのか。


 こんな状況は今まで、彼は経験したことがなかった。


 それでも言い切れる、言い聞かせられた。


 伝えたいことが、ケブルにはあった。


「殿下、私は—」


「失礼いたします、殿下ァッ!正門の前で動きがありましたぞォッ!」


 南の壁の下で、一際声の大きい伝令が叫ぶ。


「敵が何者かに蹴散らされています!脱出への道筋が出来ました!」


 それは驚愕であった。


 驚きのあまりケブルは口をつぐみ、王子は思わず顔を上げた。


 何かがこれから起こる。


 とんでもないハプニングが—


腐った獅子:キメラver.アンデッド


ステータス


虎並みの素早さ

豹並みのしなやかさ

ネメアのライオン並みの硬さ

鰐並みの顎力

ダチョウ並みの脳ミソ


毎日16:00更新の予定でありまする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ