岩の上にもムスビ
次話投稿、まだまだストック有りですぞ。
その光の先に溢れていたのは、どうしようもなく広大な岩の大地だった。
「うわー、すげえ。今のどうやったんだよ、ネプチューン!」
『なに、簡単な初歩の転移魔法陣の一つを披露しただけだ。』
驚愕するバーティー、しばしの間、呆ける。
いきなり暗い地の底から、星明かりの照らす荒廃した土地への転移は、無知なバーティーを驚かすのに充分な出来事だった。
見渡す限りの灰色に、彼は目をパチクリさせて、現実を認識しようとする。
『そう驚くでない。そんなことより、私を早く拾え。』
「ん、拾えって…これのことか?」
『そうだ。それが今の私だ。』
謎の声を発生させていたのは、バーティーの右隣、右手のすぐ側にそびえ立つ巨大な木槌だった。
持ち手も含めて長さはバーティーとほぼ同じ、明らかに両手で持つことを想定しているもの。
「これを拾えばいいのか。」
それをバーティーは持ち上げようとする、いや、した。
もちろん、ひ弱な小人少年バーティーにそんなことが出来るはずがなかった。
短刀より重いものが持てれば、アンデッドの一体や二体ごときに手こずらされずに済んでいた。
もっとも、それは無謀なバーティー少年を亡者の群れへと駆り立て、犬死にさせること必須であったが。
マトモな武器がなかったからこそ、彼は初めて逃走という選択が出来たのだ。
『仕方ない。紐をくれてやる。背負っていけ。』
ポッと宙から出た麻縄は、大木槌を背中に担ぐのに充分な長さだった。
さすがはネプチューン、とバーティーは単純に思った。
すかさず、縄で大木槌を背中に縛り付けて、ぐっと腹に力を入れる。
すると、彼が思っていたよりも簡単に、それは持ち上がったのだ。
「うおお、やったぜ。俺は凄いぞ、ネプチューン!」
勝利の雄叫びを上げるバーティー、大木槌を両腕で持ち上げられなかった失敗の記憶は早くも消え去って、ポジティブである。
いわゆる前向きな馬鹿で、弱者だとネプチューンは思考せずにいられない。
木槌が喋っていることには驚かない、鈍さ。
やはり間抜けか、とネプチューンはバーティーを侮る。
「そんなことより、お腹空いたなあ。あの白いムスビってやつくれよ、ネプチューン。」
『分かっているとも。』
宙から再び現れた十個のおにぎりに、バーティーはひたすら歓喜した。
ムスビを貪る少年を傍目に、背負われた木槌こと、ネプチューンは今後の計画を立てる。
世界を救う旅路の計画を練るのだ…
今回は量的に中途半端です。