エンディングロール
遂に序章も終了。エンドロールが入って第一部に移行します。
「それで、無様に逃げ出してきたと。天晴れですな、将軍。」
ガントロ・バストンは、フバースが嫌いだ。
いつもなら怒鳴って喧嘩を始めるところだが、ガントロはうなだれて、復活したフバースの叱責を受ける他なかった。
「ネメアライオンは行方不明の上に、王子には逃げられるし、主命は果たせず。全く御方様になんと報告すれば良いか…」
フバースは、頭を抱えてうなだれた。
その姿は、同じく黙って下を見ているガントロと瓜二つ。
骸骨兵たちが運ぶ神輿の上の天幕で、彼らはやはり二者同一だった。
つまり良く似ている。
似ていないのだが似ている。
奇妙な腐れ縁の二人だった。
「とにかく御方に連絡せねば…」
「その必要はない。」
ゴンっと鈍い音がして神輿が揺れ、骸骨兵がメキッと潰れる。
予期していなかった揺れに、ガントロとフバースはもんどりうって倒れる。
さらに、ランプが割れて天幕に炎がつく。
「マハーバラジャ…」
ガントロは呟いた。
「久しいな、ガントロ。幾百年ぶりだ?」
そして、現れたのはガントロ以上に巨大な、黒い影だった。
「俺様が思うに八百年です、大王閣下。」
ガントロは、ゆっくりと起き上がって、マハーバラジャと呼ぶ者に向かって跪いた。
その様はまるで主人とその従者。
マハーバラジャとは、一体誰のことだというのか?
「御方がお前を寄越したのか、ラーヴァナ?」
「呼び捨てにするな!閣下に対して不敬だぞ!」
元気になったのか、ガントロが久しぶりに吠える。
「良い、ガントロ。我とその面妖は同志、仲間である。多少の狼藉は我が許そう。」
そう邪険にするなと、ラーヴァナ・マハーバラジャはガントロを窘めた。
だが、その目は笑っていない。
二人は気づかなかったが、ラーヴァナはかなりの苛立ちを抱いたようであった。
「め、面妖とは!?貴様あ!」
「まあ、落ち着け。御方からの命を告げる。」
ドライブクレイジーな発狂フバースを脇にやりながら、ラーヴァナは懐から葦の巻物を取り出す。
その葦は茶色く萎びて、紫が点々として非常に毒々しい。
さらに紫の点はブツブツとして円を構成する。
「我が血泉を糧にその呪言をここに記せ。起動せよ。【魔導方陣】」
葦紙に描かれた、歪な数珠のような円はどす黒く光って、赤黒く染まる。
それは、ラーヴァナの掌から溢れる赤い煙によって、より一層輝きを増す。
そこから出でたるは黒い闇の旋風——
「冥界は、広がる。生死は、繋がる。刮目せよ、余は全ての父である。」
黒の中心は無、否…
赤い単眼—
真っ赤な血走り。
「任務は失敗したが、使命は終わらぬ。よって再発令を行う。百鬼夜将全員に命じる。」
憎しみが、憤怒が、愛が、狂気が、色とりどりの紅、赤、赫、朱、緋に現れた。
「何人たりとも生かして還すな。死こそが救済にして躍進。」
野太く、深く、しゃがれた名状しがたい悪夢が—
「全てを破壊せよ。」
やってくる。
序章:ワールドスワップ終
御方登場。新キャラ投入。展開はこれまで以上に派手に…なるといいですねえ。
次回は登場人物と用語、伏線をまとめて解説。




