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バーティー・グーンのファンタジア  作者: 目安ぼくす
序章:ワールドスワップ
12/22

伸縮の森人

精霊の守り人(ボソッ

オマージュだよ、オマージュ。

 そして、大猿は局所的ゲリラ台風と化した。


 独楽のように高速回転する体高5Mの大猿は、アスファルトを抉るドリルマシーン。


 それほどの威力が、たかが鎧を着ただけの人間を直撃する。


「ヘブシッ。」


「アブシュヒーン。」


 振り回される剛腕に、頬を平手打ちされた馬上の兵士が吹っ飛び、肉バラを直撃されたどデカくヘビーな軍馬が真っ二つ。


 刺身をスライスするように、重装騎兵のエリートたちがザクザクバラバラにされる光景にも、王子とケブルは咄嗟に行動する。


「あの大猿に近づくな、弓兵を呼べ!」


「重装騎兵隊、転進!あの猿の相手は私がする。」


 大声でケブルは遠距離攻撃要員の増援を要請し、ジュース王子は状況に即応して、迅速な戦術的処置を行う。


 状況はガントという異分子の存在に揺れ、傾く。


「逃すと思うか?」


 ブシャリ。


 脳漿の飛び散る音が、王子の耳元で聞こえた。


 ちょうどすぐ側だ。


「え"あぐ!?」


 ジュース・ユリテールの隣で馬を駆っていた伝令の頭は、ひしゃげたトマトになって、バタンと倒れる。


 それは、部下を誰よりも大切にする彼にとって衝撃だったが、それ以上に重要なことがあった。


「馬よりも速い…のか?」


 否、大猿ガントに馬並みの速さがあるわけではない。厳密には違う。


 その違いを、何とか王子の優秀な目は捉えた。


 バッと駆け出した大猿の腕がビヨーンと伸び、まるで木の枝でも掴むかのように伝令の頭に引っかかった所を。


 その、身体に体重を掛けてぶら下がるその姿は、紛れもない、オランウータンのようであった。


「君はオランウータン、なのか?」


「俺様は、森の人オランウータンではない。遠い昔の話だ。今はそう、森の勇士にして猿人の大戦士が一人、オランパラワーン!オランパラワーンのガント・ロバーストン将軍様だ!」


 自慢気にガントは王子ジュースの真ん前まで来て、言い放つ。


 その巨体に王子の白馬は、思わずすくみ上がって、どうどうと王子にいなされた。


 だが我らのジュース・ユリテールは怯えず、堂々と応えた。


「なぜ私達の土地を不当に侵略する?なぜ私達をそれほど憎む?私達が何をした?答えよ、狼藉者!」


 叱責する王子に対して、大猿は眉をひそめ、その長い腕を組んだ。


 ジュース王子は、ゴクリ、と唾を飲み込んで緊張し、馬上槍を構えた。


 白馬も覚悟を決め込んだのか、逃げようとする野生を理性で封じ込めて、ヒヒーンと鳴き、大猿を威嚇する。


「なぜ、とは面白い質問だ。返してもらいに来ただけだ。我々の土地をな。」


 淡々と大猿は説明した。


 もはや怒りなどなく、彼の感情には王子に対する呆れさえあった。


「そして、そのためには貴様らの存在そのものが邪魔だ。分かるか、人間?」


 ボキャボキリとガントは拳を鳴らし、腕を伸縮させた。


 その伸び具合はゴムなんてものではない、粘土のように伸縮自在でこねくり回せるもの。


「やはり、伸びるのか。その腕は。」


「おうとも。これは、俺様が御方様から授かった加護だ。」


 そう言って、ガントは腕をあらぬ方向に捻じ曲げた。


 すぐに元の位置に戻ったそれは、ガントの肉体がゴムのような復元性能を持っていることを示す。


「では死ね、人間。これが俺様の怒りだ。受けてみよ。」


 大猿にして猿人の勇者ガントは、拳を握ってみせて、ニヤリと笑う。


「もし出来たら、死ぬ気で耐えるんだな。それではサヨナラだ。」


 音の壁を突き破らん速度で、拳は放たれた。

狂喜の二回更新…明日休んでも許してピョン。

パラワンってパダワンに響きが似てるよね(察し

次回は16:00更新…だ。

また明日!

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