のじゃロリ貴族と女騎士
「改めまして。ランスロット・アーデラと申します。この度はフリージア様を助けて頂き、また、私の命まで救って頂き、心より感謝を。ありがとうございます」
「ランが世話になったのじゃ! 妾はフリージア・アリユル。ありがとうなのじゃ!」
「プリム・ソフィアです。っふふ。無事でよかったです」
「シアン・ソフィアです。……無事で、よかったです」
互いに自己紹介を終えて、ワタシたちはちょっと休憩することにした。
倒れた馬車を起こし、転んでしまった馬の傷もお姉ちゃんが全部やってくれた。
フリージアちゃんもランスロットちゃんも目を丸くして驚いていた。
ふふ、どうだ。ワタシのお姉ちゃんは凄いだろー。
「シアちゃんからお姉ちゃんを自慢したい気持ちを感じ取ったよ!」
「お姉ちゃん読心術のスキルはなかったよね!?」
「大切なシアちゃんだもん。お姉ちゃんにはお見通しなのだ!」
うぐぅ。
お姉ちゃんはなんでかわからないけどよくワタシの心を見透かしてくる。
恥ずかしいけど、気持ちを誤魔化すことはしない。
「まあ、ワタシのお姉ちゃんが凄いのは事実だもん」
「えへへー!」
ぎゅ、してすりすりしてくるいつもの光景だ。
そんなワタシたちを見て、フリージアちゃんとランスロットさんも表情を綻ばせている。
「仲がよろしいのですね」
「勿論ですっ。だって私はシアちゃんが大好きですから!」
「わ、ワタシもお姉ちゃんのこと、大好きだから」
「あ~~~~~もうシアちゃんかわいい!!!」
「むぐっ」
お姉ちゃんは感極まってワタシをぎゅぅぅぅぅ、と抱き締めてきた。
胸に、胸に窒息させられる!?
相変わらず甘い匂いと柔らかさの極楽浄土!
嬉しいし幸せなんだけど苦しいってある意味新鮮だね!
「仲が良すぎではないのか?」
「フリージア様。これも一つの愛情ですよ」
「むう。そういうものかのう」
ぷはっ!
なんとかお姉ちゃんを引き剥がす。
危ない危ない。あのまま極楽浄土で死んでしまうところだった。
お姉ちゃんを独占できるようになれば、毎日だって味わえるんだ。
だから今は助けた人たちに集中しないと。
「お二人はご家族なんですか?」
フリージアちゃんとランスロットさんは端から見ればどう見ても姉妹だ。
二人とも金の髪と、碧色の瞳。
フリージアちゃんは肩口くらいにまで伸ばしていて、ランスロットさんは短く切りそろえている。
目つきはランスロットさんのほうが鋭くて、フリージアちゃんはちょっと丸っこい感じかな。
でも、なんとなくそっくりだ。
「いいえ。私はユリアル家に雇われている騎士なだけですよ。フリージア様とご家族など、恐れ多い」
「ランはいつもそうじゃ。……うむ。妾とランは家族ではない」
「えー。そんなに似てるのに?」
既にお姉ちゃんは普段の言葉遣いになっている。
気さくでぐいぐい押していって、女神の笑顔で相手の心をいつの間にか解かしてしまう。
「ありがとうございます。ところでプリム様」
「はい?」
「私の記憶違いでなければ、『あの』プリム・ソフィア様、ですよね」
「は~い。『あの』がよくわからないけど、プリム・ソフィアで~すっ」
「プリム・ソフィアじゃと!?」
ランスロットさんが言う『あの』とは、間違いなく冒険者としてのお姉ちゃんだろう。
フリージアちゃんもお姉ちゃんのことは知っているのだろう。
ランスロットさんの言葉で気付いて、慌てふためいている。
「まさか。まさかこんなところで『紅雷の聖母』に出会えるとは幸運なのじゃ!」
「紅雷の聖母?」
聞き慣れない呼び名に、お姉ちゃんが照れていた。
その名前に聞き覚えがあるようで、お姉ちゃんは恥ずかしそうにしている。
「あはは。私はそういう風に呼ばれるの、断ってるんだけどね~」
どうやら『紅雷の聖母』とはお姉ちゃんの冒険者としての通り名らしい。
二つ名で呼ばれるほど有名なんだ。いや、世界最強のSSSランク冒険者だから呼ばれてもおかしくないんだけど。
冒険者は普通Eランクから始まって、D、C、B、A、Sランクへと昇格していく。
普通はAランクになれれば一流だ。
さらにその上、超一流の冒険者がSランク。
Aランクの冒険者が束になっても敵わない圧倒的な力と知識を持ってなければ、Sランクとして認められない。
お姉ちゃんはさらにその上。
誰も勝てない、挑むことすらしなくなったと言われるほどの――圧倒的な実力者だ。
お姉ちゃんの努力はもちろん、『転生神からの贈り物』によって底上げされている。
「で、ふーちゃんとランさんはどうしてこんな所にいたんですか?」
「ふーちゃん!?」
「ランさんですか。……まあ、フリージア様からも呼ばれていますが、少々くすぐったいですね」
お姉ちゃんはさっそくとばかりに二人を愛称で呼んでいる。
理由を聞いても「可愛いから!」で終わりだろう。そういう人だ。
せっかくだからワタシも後で呼ばせてもらおう。
こほん、と咳払いをしてランさんが口火を切った。
「ここから北の街、フラウロスで武術大会が行われるのです」
「武術大会、ですか?」
そういえば、魔法学院に通っていた頃に聞いたことがある。
フラウロスでは一年に一回、武を競い、世界中から実力者が集まる大会が開かれるって。
あまりにもワタシとは無縁の話だからすっかり忘れてた。
その話を聞いて、お姉ちゃんは目を輝かせていた。
「懐かしいねー。私なんかもう出場禁止になっちゃって、悔しかったなー」
「……え。お姉ちゃん出てたの?」
「あー、シアちゃん部屋に飾ってあるトロフィーに気付いてなかったの~?」
「うっ」
確かにお姉ちゃんの部屋には様々なトロフィーや賞状が飾られている。
けれどお姉ちゃんは数多の分野で賞をかっさらってくるから、何があるかまではワタシも把握しきれていない。
「でも、出場禁止ってどうして?」
それだけ有名で大きい大会なら、そんなおいそれと悪評に繋がるかもしれない『出場禁止』なんて出来ないと思うんだけど。
「プリム・ソフィア様はフラウロスの武術大会で三年連続優勝しまして……そのどれもが『試合にすらならない』ので出場を禁止にされているのです」
「……あー」
ごめんなさい。うちのお姉ちゃんが強すぎました。
「本当だよね! 私は悪いことなーんもしてないのに! あの大会賞金も多くて参加したかったのに!」
そういえば確かにこの時期になるとお姉ちゃんはやけに稼いできていた。
ワタシはそれだけクエストをこなしたんだろうって思ってたんだけど、どうやらその武術大会で稼いできたらしい。
「じゃあ、ランさんが出場するんですか?」
「違うのじゃ! 妾が出るのじゃ!」
「え、ふーちゃんが!?」
「お主までふーちゃん呼びか! じゃが妾は心が広いので許す!」
苦笑するランさんと胸を張るふーちゃん。
いやいや、ふーちゃんはどう見てもワタシよりも年下だ。
それにさっき、チンピラに襲われて怯えてたようだし。
「……シアン。今お主、妾がチンピラに怯えてたから無理だなー、と思ってるじゃろ?」
「え、ふーちゃんも読心術が!?」
「いや、お主がわかりやすい」
「うんうん。シアちゃんはわかりやすいよね~」
そんなにわかりやすいかなぁ。
「そ、それにさっきのは突然だったからじゃ。正式な武術の場であれば、妾は大人にだって負けはせぬ!」
顔を真っ赤にして反論してくるふーちゃんは、年相応に可愛らしい。
つい微笑ましくて、ワタシもお姉ちゃんもランさんも笑ってしまう。
「ええい、それなら妾のステータスを見て刮目せよ。『ステータス』!」
立ち上がってワタシを指差すふーちゃんの目の前に、ステータスウインドウが展開された。
【フリージア・アリユル】
筋力:C
耐久:C
素早さ:B
魔力:B
幸運:B
所持スキル:
『貴族の秘め事:B』
貴族の血筋に発現するスキル。
隠蔽:Bと同等の能力を持つ。
指定したステータス・スキルの一部を視認できないようにする。
……いや、確かに驚いた。
普段からお姉ちゃんのステータスを見ているから、特別驚きはないんだけど。
それでもふーちゃんの年齢とは思えないステータスをしていた。
なにしろ年上のワタシより遙かにステータスが上なのだ。
というかあれか。
ワタシがミジンコすぎる……!?