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おまけ その後のテオ




「らんらんるー。らんらんるー」

「五月蠅いぞ、静かにしていろ!」

「おうぼうだー」


 はーい皆さんこんにちは、テオだよぅー!

 僕は現在プリムに負けてからずっと、王都の地下に幽閉されていまーすっ。

 ロープで簀巻きにされてるし、首には魔力を抑制する首輪が付けられている。

 これじゃあ脱走なんてできない! 僕だいぴんち!


「どうせ抵抗できないんだからさー。見張りもいらないだろぅー?」


 会話相手は欲しいけど、素顔も見せてくれない王国騎士とつまらない会話をしても意味がない。

 だから再三見張りを美少女にしてくれって頼んではいるんだけどさー。


「黙っていろ。貴様が魔眼を保有していることくらい確認済みだ。何をしでかすかわからないからこそ監視は必須だし、部下をわざわざ危険に晒す意味がない」

「っちぇー」


 そう、僕は目と目を合わせた相手を僕のいいなりに出来る『魅了』の魔眼がある。

 発動条件は、その相手を従えたい、と僕が強く意識すること。

 魔力ステータスがよっぽど高くない限り弾けない絶対の魔眼なんだけどなー。


「どうしてだろうなー。どうしてだろうなー」


 気になるよぅー。気になるよねぇー。


 『シアン・ソフィアに魅了の魔眼が効かなかったのが』


 だってさー、あの子はあのメンバーの中でも一際弱かった。

 ステータスというか、なんというかもう一般人以下だった。

 一般人が魔法を齧った程度で、僕の魔眼を弾けるわけがない。


 プリムが何かしたのかな?

 んー。その線もあるけどー。多分違うなー。


 これはあくまで仮説でしかない。

 けれども僕は自分の仮説――直感に絶大な信頼を置いている。

 エリクシールを完成させた時も、この直感が大きく働いてくれた。


 その直感が告げている。

 プリムはシアンに、魔眼を弾く魔法などは掛けていなかった。


「んんんー」


 さて、それじゃあそこから推理しよう。

 シアン・ソフィアが魔眼耐性を持っている特殊な人材だった説~。

 まあ、これが一番可能性があると言えばある。



 ――記憶を整理する。整理するのは、闇の中で交わしたシアンとの会話だ。


『もしかしてシアン、君は神様に選ばれた存在とかかい?』

『……当たらずとも遠からず』


 そう返したってことは、自覚があるってこと。

 だって神様に選ばれた存在です、なんて断言する性格じゃない。

 そして、否定もしなかった。自覚がなければああいう子はすぐに否定する。


 なるほどねー。なーるほーどねー。


「転生者。うんうん成る程ね」


 この世界とは異なる世界から、何かしらの原因によってこちらの世界に来た存在。

 そしてその大半は、神の力によって転移し、神の加護を受けている。

 ……大昔に聞きかじった知識だけどね。


 僕のキメラたちも、その人が名付け親だ。

 なるほどなー。そうかそうか。うんうん。


「プリムは知ってるのかなぁー」


 いや、プリムは知っていようといまいと関係ないか。

 プリムはとにかくシアンを溺愛している。だからシアンが転生者とか、そういうのはまったくこれっぽっちも関係ないだろう。

 というか教えたところで僅かな動揺しか引き出せないでしょ。その程度じゃプリムから逃げる事は出来ないし。


「……さて、と」


 考えが纏まったところで、これからどうしよっか。

 このまま捕まってても、誰も僕を殺せないから一生幽閉くらいでしょ?

 研究もなにもできないとかさー。つーまーらーなーいー。


「んー。んーんーんー」


 どうにか脱獄できないか周囲を見渡す。見張りの兵士は一人。

 でも王国騎士団の団長だ。実力もプリムには及ばないが相当強い。少なくとも簀巻きにされて魔法が使えない僕じゃ抵抗すら出来ない。


 ……おーおーおー。みーつけた。


「ぐ、うぐぐぐぐ」

「……? どうした、テオフィラ」

「痛い。痛いんだ……」

「腹痛か? 不死のくせに」

「ふ、不死だってたまに体調くらい崩すよ……!」

「……ふむ。暗がりじゃよくわからんな」


 ぎぃ、と牢の扉が開かれる。団長さんは僕の表情を確認しようと、手を伸ばしてくる。

 ――にやり。


「がぶっ」

「いっ……こ、こいつ!」


 伸ばしてきた手に、噛み付いた。手甲をしていても、手の全てを鉄で固められるわけがない。薄い部分は必ずある。そこへ向かって、思いっきり牙を突き立てて――血液を、吸う。


「んく、んく……んげ、まず」


 めっちゃどろっとしててねっとりしてる。肉ばっか食ってるな。


「貴様、今すぐ痛めつけてや――」

「――黙れ」

「――――」


 やれやれ。これは本当にやりたくなかったんだけどなー。

 僕は吸血鬼とエルフの混血。この世界に唯一の存在。

 奇跡の存在、なんて生まれたばかりの頃はもてはやされたけど……まあそれは、遠い日の話だ。


 僕だから出来ること。僕にしか出来ないこと。

 血を吸って、それによって得た情報で相手に催眠を掛ける特殊な魔法。

 思うがままに操作することが出来る。

 眷属にしているわけではない。こんなむさいオッサンを眷属にしたいとも思わない。

 昔はこれで王女様を虜にしようとも考えたんだけどねーあはははは!


 ……ッハ!? 今思えばこれでシアンを操ればよかったのでは!?

 うーん。でも魔眼の耐性あるくらいだから難しかったか?

 うーん。ううーん。

 よし、気にしない方向で!


「さあ、僕の縄を解け」

「わかり、ました」


 団長さんは僕の言うとおりに動く。しゅるしゅると縄が解かれ、僕は数週間ぶりに自由を取り戻す。

 あー、やっぱ身体が自由に動くっていいなぁ!


「あ、首輪首輪」


 魔力を抑制する首輪に手を掛けて、力任せに引きちぎる。怪我をしたって別に死なないから出来る芸当ってこと。


「さーてこれで自由だー」

「おめ、でと、ございます」

「お、そうだそうだ。君はもうここら辺で眠ってていいよ」

「わかり、ま」


 バタリと団長さんが倒れ伏す。すぐに意識を手放したようで、寝息が聞こえてくる。

 これ以上付き合わせると犯罪者になっちゃうしねー。経歴的にもミスをした程度に済ませないとね。どうだ僕は優しいだろー。


「脱獄脱獄~」


 ばいばーい王国のみなさーん。

 さーて次は何をしようかなー。王国で確認できた生物でのキメラは大半作っちゃったし。

 そうだ、海の向こうに行こう。

 向こうだったら僕は犯罪者じゃないしもっと好き放題出来るじゃん!


 ひゃっほう僕ってまじてんさーい!


「それでは王国の皆さん、また会う日まで~!」

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