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お姉ちゃん、王都に到着。




「ほわぁ……おっきい……」


 ワタシは生まれて初めて、この国の中心である王都にやってきた。

 王都グレーティア。

 七つの区画に分けられた、この国でも特別な街。

 中心の王宮と、それらを囲むように七人の貴族が管轄している区画が存在する。

 それぞれで武器屋も宿屋も雑貨屋もかなりの種類があり、この国で一番賑わっている街でもある。

 ……まあ、海からは少し離れているから、あまり新鮮な魚とかの食材には出会えないらしいけど。


「久しぶりだね~」


「と言っても二ヶ月も経っていないだろう。王都から家に戻って、そのまま王都に引き返したのだから」


「それでも、一ヶ月前と今じゃいろいろ状況が違うからね~。もちろんシアちゃん的な意味で」


 お姉ちゃんはニコニコしながらワタシへ視線を向けてくる。

 ワタシはお姉ちゃんの身体に抱きついて、お姉ちゃんがワタシの腰に手を回している。

 ここ最近お気に入りの、密着した状態だ。

 恥ずかしいといえば恥ずかしいけど、それ以上にお姉ちゃんが包み込んでくれているから……うん、頑張れる。

 それに、視線はだいたいユアン王子に向けられるからね。お姉ちゃんならまだしもワタシに向けられることはない。


「それでプリム、ギルドになにか用はあるか?」


「ないよ~。というより、ユアンのプレゼント、ってのがわかったらすぐに帰るつもりだよ~」


「っふふ。それもそうだな。シアンくんと早く二人っきりになりたいもんな」


「そうだよ!」


「お、お姉ちゃん……」


 どうしてもユアン王子がいる以上、必要以上に目立ってしまうのは仕方ない。

 視線がワタシに向かないだけでも上出来なのだが、そんな状態でユアン王子と話してれば否が応でもお姉ちゃんにも視線が集まる。

 となれば、ワタシにも少しずつだが視線は向けられるわけで。


「……ワタシも早く、二人っきりになりたいな」


 恥ずかしくて、ついぽろりと零してしまう。


「どうしようユアン。シアちゃんが可愛すぎて私卒倒しそうだよ!?」


「ふむ。確かに今の破壊力は凄まじいな。プリムが夢中になるのもよくわかる」


「っ?!」


 二人して何を言い出すのか。

 そんなこと言い出すと余計にワタシに視線が向けられるでしょ!?


「あれユアン王子とプリム・ソフィアよね?」

「その隣は……誰だ?」

「すっごいくっつき方してるし……妹とか?」


「違いますーシアちゃんは私のおよめさむごごごご」


「すとーっぷ!」


 いきなり通行人に声を掛けようとしたお姉ちゃんを慌てて止める。

 妹って見られてるならひとまずそれでいいから、なんで当然のように暴露しようとしてるの!?


「プリム、魔法学院の件もあったんだ。噂の一つや二つは無視してさっさと王宮へ行かないか」


「えぇー。だってこんなにシアちゃん可愛いんだよ? 自慢したいじゃん~」


「自慢したい気持ちはわかる。だが君の態度が原因でシアンくんが辛い目に遭うかもしれないだろ?」


「……は~い。我慢します」


 ユアン王子凄い。お姉ちゃんを簡単に諫めてくれた。

 ワタシがいくら言っても聞いてくれないお姉ちゃんがしゅんってうな垂れる。

 あぁぁぁ落ち込むお姉ちゃん可愛いなぁ……。


「大丈夫だよ。なにがあっても、ワタシはお姉ちゃんのものだから」


「シアちゃん……あぁぁぁぁシアちゃん可愛いよぉ~!」


「きゃーっ」


「君たちは……はぁ」


 ユアン王子が呆れたようにため息を吐いているけど、こればかりはどうしようもない。

 恥ずかしいし目立ちたくないけど、お姉ちゃんが求めてくれるのならもうなにもかもがどうでもいい。

 ワタシはとんでもなく幸せだ。出来ることなら、さっさと二人っきりでもっといちゃいちゃしたい!

 お姉ちゃんとすりすりしたいしぷにぷにしてほしいしちゅっちゅしてほしいしなんならもっと凄いことも!

 おっとこれ以上はNGだ。せーふせーふ。


「王宮へ急ごう。君たち二人のためにも、ね」


 ユアン王子が先へ進むと、当たり前のように人々が道を譲る。

 手を振る民の人たちに、ユアン王子はにこやかに手を振って返していく。

 白い歯をきらんと見せながらの笑顔に、卒倒する女性もいるくらいだ。


 あれで女性なんだから、反則だなぁ。

 まあ、お姉ちゃんの方が魅力的だけど!


「じゃあシアちゃん、ワタシたちも行こっか」


「うん」


 数人の騎士たちがワタシたちを囲む。悪目立ちするのを防いでくれるのだろう。

 その中で先頭を歩く、一際目立った金色の鎧。一人だけ兜を外し、ユアン王子を追い掛けるように早足で歩いている。


 あの人が、きっとユアン王子の想い人なのだろう。

 ユアン王子の事情を知っているからこそ、その視線を追うだけでなんとなく理解出来る。

 お姉ちゃんもそうなのだろう。王子と騎士さんを交互に見ては微笑んでいる。


「ユアン王子と騎士さんも、上手くいくといいね」


「いくよ~。ユアンだもん」


 どうやらお姉ちゃんはユアン王子の手腕に全幅の信頼を寄せているようだ。

 それだけ二人の仲が良いことを見せつけられているようで、ちょっと悔しい。

 ……ワタシはお姉ちゃんのもので、お姉ちゃんはワタシのもののようなものだけど。

 ああもうだめ。両想いになる前より独占欲が強くなってるよぅ!


「あっ、シアちゃん。もしかして……ヤキモチ?」


「うん。ヤキモチ。お姉ちゃんはワタシが一番独占するんだ……」


「やーん! シアちゃんに独占されちゃうの?」


「するっ。お姉ちゃんはワタシのものだ!」


「シアちゃーんっ!」


「お姉ちゃーんっ!」


「……お前たち、ユアン王子から事情は聞いているが………………。おいレイ、シリウス、ディファント。なに幸せ姉妹を見て鼻血を出している。騎士としての務めを果たせ!」


 怒られちゃいました。


「でもバルド、姉妹百合だぜ?」

「最高だろ。もっと眺めさせてくれ」

「あの二人を見守る壁になりたい」


「お前たちの気持ちはわかった。減俸な」


「「「そんなぁ!?」」」


 ……えーっと、その、ごめんなさい?


「バルド。何をしている。早く行くぞ」


「ああ、わかっているよ王子。ほら、お前達も護衛の任務を忘れるな! それさえ怠らないのなら、目を瞑っておいてやる!」


「「「了解!」」」


 騎士隊長であるバルドさんの掛け声一つで、周りの騎士さんたちが一斉に隊列を整える。

 凄いしっかりしてるとは思うんだけど……いや、その、見ないでね?


「っふふ。見せつけちゃおっか?」


「えっ」


 そ、それは嫌だな。

 見られるのは恥ずかしいし。


「お姉ちゃんは恥ずかしがってるシアちゃんを見たいなぁ~」


「うっ……うっ、うっ」


「ね、シアちゃん……お姉ちゃんの言うことなら、聞くよね?」


「……は、はい」


 あ、だめ。お姉ちゃんにそんな風に言われると、頭がぼーっとして逆らえないというか――なんかもう見られてもいいかなって。むしろ見られてもいいかなって――。


「ごほんっ! プリム! ここは一応王都だからな!?」


「王子、王子が一応とは口に出しては!」


「あ、す、すまないなバルド」


 ……………………ッハ!?

 わ、ワタシはいま何を考えていた!?


「っちぇー。でもやっぱり、シアちゃんはお姉ちゃんが独占したいし、やめておこっか」


 どうやら気付かない間にワタシは身も心もお姉ちゃんのものとなっていたようだ……。

 え、むしろ最高なのでは。

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