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ワタシのお姉ちゃんは、SSSランク冒険者~最強お姉ちゃんの妹にTS転生~  作者: Abel


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20/62

お姉ちゃんの仕業でした。




『さあここで、ランスロット選手が決めました! 決勝進出です!』


 お姉ちゃんの声が会場全体に広がると、続けて観客の大歓声がコロッセオを震わせた。

 フリー部門は順調に続けられていく。

 ランさんはトーナメントを順調に勝ち抜いていき、今の勝利で決勝戦への進出を確定させた。


「ランさん、ほんとうに凄いんだね」


「言ったでしょ~。この中じゃランさんが一番強いって~」


 席に座ったお姉ちゃんが自信満々に胸を張る。

 ランさんはこれまでの試合の全てをほぼ圧倒的に勝ち続けてきた。

 質実剛健な出で立ちは騎士の在り方そのもので、荒くれ者が集う大会の中で一際目立っている。


 決勝の相手は、実況者さんが一番最初に紹介していたゴードン、っていう斧使いだ。


「フリー部門の決勝の前に、年少部門の決勝をやるんだよね~」


「みたいだね。……ふーちゃんと、ノヴァ・テンタクルス、って選手だね」


 年少部門は準決勝までを午前中までに終わらせていた。

 そもそも年少部門は参加人数が少ない上に、試合時間もさらに短い。

 そんな中をふーちゃんは駆け上がり、決勝の時を今か今かと心待ちにしている。


「わ。相手、魔法学院の子なんだね~」


「……みたいだね」


 参加選手は正々堂々と戦うために、ステータスの開示・登録が義務づけられている。

 だからこそ彼が魔法学院の出身であることは知られているし、ワタシと同じローブを羽織ってる時点でばればれだ。


 ものは試しにと、鑑定スキルでノヴァ・テンタクルスくんのステータスを開いてみる。


「ステータス:ノヴァ・テンタクルス」


【ノヴァ・テンタクルス】


筋力:D

耐久:A

素早さ:D

魔力:A

幸運:C


所持スキル:

『風神の契り:A』

 風の神に好かれている。

 風属性の魔法を使用する際に消費する魔力量を大幅に減らす。

 また、風属性への耐性を得る。


 自身の素早さを一段階上昇させる。




 うん、魔法学院に通ってるというだけあって、申し分ないというか才能の塊というか。

 普通Bランクもあれば十分一般的に魔法を使いこなせる。

 あれだけ魔法を自在に使いこなせたふーちゃんでさえ魔力はBランクだ。


 Aランクの魔力に、魔法の適正に大きく関わる四神スキルもA。

 優秀な魔法使いと名乗るに相応しいステータスだ。


 その反面、『風神の契り』スキルで素早さが上昇しているのにDランクという点は、寂しいというか辛いというか。

 それを補うために防御と魔力がしっかり伸びている。


「ふーちゃんがオールラウンダーなら、このノヴァくんってのは後衛職だね~」


「まあ魔法学院に通ってるくらいだし、そっちの才能を伸ばすのは当然でしょ」


 魔法学院は基本的に魔法使いを育てる教育機関だ。

 魔法に関わり、魔法を操る。武器を手に取り戦う冒険者から少し離れた場所にいる存在だ。

 とはいえ魔法学院を卒業して冒険者になる人もけっこういる。

 冒険者は夢を追いかける職業だ。

 自分の適性を見極め、活路を開き、自分の力で稼ぐ人に相応しい職業だから。


 まあ、大抵は普通の冒険者――近接職である戦士や槍兵と組んで、守って貰う代わりに火力やサポートでクエストをこなしていく。

 ノヴァ・テンタクルスくんも、そんなタイプなのだろう。


「でもそんな子が決勝なんてね~」


「まあ、年少の部だからね」


 年少の部はフリーと比べるとどうしても拙さが出てしまう。魔法を使うにも、剣を振るうのにも、だ。

 相手が戦闘に慣れてないのならば、素早さが足りなくても高火力で補える。


『さあ、ついに年少部門の決勝が始まります!』


 少しの休憩を挟んで、実況者さんの声によって決勝が始まろうとしていた。

 コロッセオのステージにはすでにふーちゃんとノヴァくんが対峙しており、一触即発の空気となっている。

 ……このピリピリした空気は、年少の部でも関係ないようだ。

 独特の緊張感。

 この勝負で、優勝者が決まる。

 それは二人だけでなく、会場全体にも広がる緊張感だ。


「はい、シアちゃんが開始の宣言ね」


「え゛っ!?」


 なんとも気楽にお姉ちゃんにマイクを握らされた。

 いやいや。こんな最後の重要なタイミングをワタシなんかがやっちゃだめじゃないの!?


「ほらほら。お姉ちゃんはフリー部門の挨拶やるかな、ね?」


「う。うぐぐぐぐぐ」


 お姉ちゃんは悪戯が成功したような笑顔でにやにやしている。

 ぽん、と実況者さんが笑顔でカンペを渡してくる。

 この通りに読めば問題は無い。それは、これまでの試合の流れでわかってるけど。


 お、覚えてろよお姉ちゃん!


『熱狂のコロッセオ。相対する二人の勇士。フリージア・ユリアルとノヴァ・テンタクルス。この勝負で、全てを手にするのは一体どちらだ。試合、かいしゅ――ッ!?』


 ~~~っ!


 した! したかんだ! いたい!


『か、かいひっ!』


「あ、ノヴァくん転んでふーちゃん全力で突っ込んだね~」


 「ふははははシアンが噛むことくらい見越しておくものじゃー!」なにそんな信頼してほしくないんだけど!?

 痛さを誤魔化すように口元を隠しながら、試合を観戦する。

 戦況はふーちゃんが圧倒的に有利なように思えたけど、予想外の光景となっていた。


 ずっこけたらしいノヴァくんはそれでも魔法を発動して、ふーちゃんとの距離をしっかり取っている。

 ふーちゃんはあまりの魔法による弾幕に、なかなか近づけないでいる。

 素早いふーちゃんと、手堅いノヴァくん。

 とても年少の部では見られない戦いが、繰り広げられていた。


 風の魔法同士がぶつかりあい、相殺され、手数の少ないふーちゃんが次第に押されていく。


「あ、ふーちゃんが勝つね~」


「……?」


 お姉ちゃんは何を言い出すのか。どこからどう見ても、ふーちゃんが劣勢だ。


 このままジリ貧になって、起死回生の一手を撃とうとしてもそれは分の悪い賭けになるってことくらい、ワタシにだってわかる。


「え?」


 間の抜けた声は、ワタシだけのものではなかった。

 あれだけ五月蠅かった歓声が静まり返っている。


 立っているのは、ふーちゃんで。

 倒れてるのは、ノヴァくんだ。


『フリージア選手の、勝利で~すっ! 見事な魔法の操作! お気づきになりましたか? フリージア選手がノヴァ選手の風を弾きながら、小さな風の魔法でノヴァ選手の背中を襲った瞬間を! この若さであれだけの魔法が出来る、素晴らしい試合でしたね~っ』


 なにが起こったかわかっていないワタシに変わって、お姉ちゃんが説明を始める。

 た、確かにふーちゃんは最後の瞬間、『何かを引き寄せる』ように手を動かしていたけど。


『耐え凌ぐ場面を見極め、自らの戦闘スタイルすら囮にしてみせたフリージア選手のこれからが、すっごく楽しみですね~!』


 お姉ちゃんの賞賛の声に、観客たちの歓声が呼び起こされる。


「はっはっは! 気付くとはさすがプリムじゃ! はっはっは! はーっはっはっは!」


 ステージの中央で勝利のポーズを決めている。

 観客の一部の人は「なるほど」と言った表情をしているから、お姉ちゃんの説明は正しいのだろう。


 ふーちゃんは今もなおステージで手を振っている。


 ……あ、観客席によく見たらグレイドさんがいる。なんかすっごい泣いてる。周りはメイドさんが囲んでいるから余計に目立つ。


 お、親馬鹿凄い……。


 ところで、ふーちゃんが才能とかセンスに溢れてるとはいっても、ノヴァくんだって負けないどころかふーちゃんより優れてると思うんだけど。

 というか、後ろから――不意を突くなんて、ふーちゃんらしくないなって。


「うんうん。ふーちゃんに『後ろを警戒してない相手は下の下だから不意を突くのも立派な作戦』って教えて正解だったね~」


「お姉ちゃんの仕業だった!?」


「っふふ。人との出会いは有効活用するものだよ、シアちゃん」


 ふーちゃんが優勝したことはめでたいことだし、成し遂げたのもふーちゃん自身の選択と実力だから文句はないんだけど。

 なんだろう。このすっごいもやもや感。


「それにふーちゃんからシアちゃんサイズのいろんなコスプ……お洋服譲ってもらっちゃったから、お姉ちゃんは張り切って特訓に付き合ったんだよ。えっへん」


「何をしているの!?」


「えへへ。シアちゃんのメイドさん以外のも見てみたくて」


 このお姉ちゃんはもう少し自分の欲望を我慢出来ないのか。


「というか、ワタシがそれ着なかったら意味ないし、知ったから警戒できるし」


 そうだ。あくまでその服を着る選択はワタシに委ねられている。

 だからどんなに洋服を用意したところで、ワタシが拒めば問題ないっ。


「しまった。シアちゃんなんて策士なの!?」


 いやいや、口を滑らせたのはお姉ちゃんでしょ。

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