一本目:少女の夢
ああ…今度生まれ変わったら、次は小さくてもふもふしていて、飼い主にいっぱい、い~~~~っぱい可愛がられる存在になりたい!
そして可愛がってもらう代わりに、私は飼い主をたくさんたくさんたくさん、たくさん幸福にしてあげたい…。
何でこんな事を思うかって?
それは、今の私の状況がそう思わせているから。
とても簡単に言うと、私は両親に愛されてないのが分っていた。
私は母の連れ子で、今の父となっている男の人は私が14歳の時、母が連れてきた人だ。
そんな二人が、私の18歳の誕生日にホテルのレストランで食事をしようと急に言ってきたのだ。
…私は素直に喜んだ。
でも、私を待っていたのは、一人の高級そうなスーツに身を固めた男性だった。
しかも、どこか薄暗い…堅気な分類から外れた異質さを彼は纏っていて…。
…戸惑いながらもその人と話してみると、直ぐに事情が読み取れた。
両親は、私をこの人に売ったのだ。
「君の御両親から、ヨロシクって言われてるから。頑張って稼いでね」
会ったばかりの知らない男性に私はそう告げられた。
男は私の両親にだいぶお金を貸したようだ…。男の顔は笑顔だけど、やはり纏っている空気はとても冷たそう。
そして両親は、借金のお金を返す代わりに、私を売ったのだ…!
それから、その男は私をホテルの一室に連れ込むと制服に手を掛けてきた。
恐怖で私はそこから記憶が余り無いが、暴れてホテルを飛び出して…今は何処か分らない公園のベンチに座っている。
しかも雨が降っていて、私はすでにずぶ濡れ状態だ…。
家に帰れない、何処にも行けない…行くところが無い…。
雨で濡れた制服は確実に私の体温を奪っていっている。
もう、終わりにしたい。
だから最期に自分のささやかな願いをこうして思い描いてみる。
理想の、夢を。
瞼を閉じて、私は自分の夢に没頭した…。
…そして、私は瞳を閉じていた事により、その兆候に気が付かなかった。
私の周りに、ポッポッ…と光る玉が集まってきている事に…。
私が気が付いて瞼を開けた時、すでに私は光に包まれていた。
そして不思議な浮遊感の中、声を上げる間も無く私は意識を手放したのだった。