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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
謎の卵と新たな悪魔見習いたち
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麻梨乃の母親

「まあ大体の話は分かったけど……難しい相談ね」

 結局桜の家まで5人で歩くことになり、到着して早々に俺は桜に事情を説明した。そして返ってきた返事がこれである。

「まず、沙良さんのライバルなのよねこの2人って」

 桜は少し渋い顔をする。今まで俺たちと行動を共にしてきた彼女は難色を示していた。

「それにうちはケンだけでも結構手一杯なところもあるし、ちょっとさすがにどちらか片方だけと言っても預かるのは厳しいわ」

 桜の顔が険しくなる。そもそも彼女は契約する前ケンにさんざん嫌がらせをされていたのだ。多少トラウマになっても仕方のないところはあるだろう。

「そうか。わざわざ話を聞いてくれてありがとう。こんな非常識なお願いを最後まで聞いてくれただけでも十分さ」

 ガインはお辞儀をする。

「私こそ、力になれなくてごめんなさい」

 桜も同じようにお辞儀をする。

「あ、それじゃ卵だけ渡しておくよ」

 俺は沙良を手招きし、持っていた卵を渡す。

「じゃあ、お願いしますね。ケンにくれぐれも卵を割らないようにと念を押しておいてください」

「それは私も心配してたから大丈夫よ」

 2人は互いにアイコンタクトをする。きっと今交わした会話以外にも2人の中ではいくつかの会話が交わされていたことだろう。

「それじゃ、また明日学校でな」

「ええ、また明日」



 次に俺たちが向かったのは麻梨乃の家だった。

「はーい……あら?」

 が、チャイムを鳴らすと玄関に出てきたのは知らない女性だった。しかし、どことなく麻梨乃に面影があるようなそんな印象を受ける。ブラウンのミディアムヘアーは色を黒に変えてしまえば麻梨乃とほぼ同じくらいだった。白のロングスカートは清楚で大人の女性というイメージを演出していた。

「えっと……麻梨乃ちゃんのお友達かしら?」

「あ、はい。そうです」

 俺は緊張気味にそう返す。反応からしてどうやら麻梨乃の家族らしかった。

「まだ麻梨乃ちゃん帰ってないのよ。良かったら帰ってくるまでゆっくりしていって」

 友達、と聞いた瞬間に彼女の顔はほころんだ。

「あ、はい。お邪魔しますね」

 どういうことなのだろう。俺は気になりながらも返事をしてしまった沙良につられて家に上がらせてもらうことにした。



「麻梨乃ちゃんはあんまりお友達がいないと思ってたのよ。親としてはそこが心配だったんだけど、まさかこんなに遊びに来てくれるなんて安心したわ」

 女性は俺たちにお茶菓子を配りながらそんな話をする。彼女はどうやら麻梨乃の母親で、名前は吉永楓というらしい。

「麻梨乃はどうかしら? いい子にしてる?」

「あ、えっと……」

「はい、それはもう。私たちもいつも楽しくお話しさせていただいてます」

 言葉に困ってしまった俺に変わって沙良が答える。気の利く悪魔見習いだ。

「そう。これからもあの子と仲良くしてあげてね」

 その瞬間、玄関のドアが開いた。

「ただいまー」

「ただいま帰りましたお母様」

 アリーと麻梨乃が帰って来たらしい。

「あら、おかえり2人とも。お友達が来てるわよ」

「お友達……?」

 顔をしかめながら麻梨乃は俺たちの方に視線を向ける。

「……よっ」

 ばつの悪そうな顔をしながら俺は手を上げる。

「どうしたの町村君? 今日は卵のことじゃないわよね?」

 驚いた様子の麻梨乃。

「サラと……そこの3人は誰?」

 アリーも首を傾げる。

「詳しい話は外でしようぜ」

「ちょっといろいろ事情がありまして……」

 首を傾げた2人だったが、俺たち2人の様子を見て、何か事情があったことは察したようだ。

「それじゃ、私の部屋に来て。そこでお話ししましょう」

 麻梨乃に言われて俺たち5人は立ち上がった。



「この3人がみんな悪魔見習いだっていうの? それで、家がないから泊まる場所を探してるって?」

 事情を説明すると、麻梨乃は第一声驚いたように声を上げた。

「ああ。で、麻梨乃の家で預かってもらえないかと思ってさ。アリーとしてはちょっと肩身が狭くなるかもしれないけど」

「私は別に構わない。この家の住人じゃないし、麻梨乃次第」

 アリーは特に気にしていない様子だった。

「うーん、まあ別にいいんだけど……」

 麻梨乃はやや困ったように考える。

「うちマンションだから一人預かるのが限界かもしれないわ」

「やはりそうか。じゃあここはティーナに……」

 と言いかけたガインの言葉をティーナは制した。

「ガインには結構いろいろしてもらったし、ここはガインが泊まってー。ジョーを倒したのはこの子みたいだし、積もる話もあると思うのー」

「いいのかティーナ?」

「私は最悪野宿でもするからー」

「さらっと恐ろしいこと言わないでくださいよ」

 沙良は慌ててティーナに突っ込みを入れた。

「それじゃ、泊まらせてもらってもいいかい?」

「ええ。何泊になるかは分からないんでしょうけど、しばらくは家で面倒見てあげる」

「ありがとう、恩に着るよ」

 ガインは深々と頭を下げた。



「またぜひ遊びに来てね」

「はい」

 麻梨乃のお母さんである楓からそんな言葉をもらった俺と沙良、そしてラミアとティーナは麻梨乃の家を後にした。麻梨乃は泊まってもらうのにいろいろな準備があるから、と言って部屋で別れた。

「しかし、これからどうするのだ?」

「そうですね。桜さんに断られてしまった以上、私たちの知り合いはもういないようなものですし……」

 ラミアと沙良は悩んでいる様子だったが、俺にはまだ1人心当たりがいた。

「俺の知り合いに心当たりがもう1人いるんだ。そいつに頼んでみるよ」

 そう言った俺はある人物にメールを入れるのだった。

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