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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
謎の卵と新たな悪魔見習いたち
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ガイン・ハルベルト

「よ、よろしく」

 顔をひきつらせながら俺は握手に応じる。

「……僕の友人が世話をかけたね。すまなかった」

 すると、ガインは開口一番俺に謝ってきた。

「悪い奴ではないんだ。許してやってくれ」

「……ああ。それは俺も分かってはいる。本当に悪いのはあいつが契約することになった俺の元友人だからな」

 どうやらあまり悪い奴ではないらしい。さすがにジョーが試験に進ませようとしただけのことはあるということか。

「ガインはいい人です。樹さんもそんなに心配しなくても大丈夫ですよ」

「いい悪魔の間違いだろ」

 同種のお前が間違えるなよ、と俺は心の中で突っ込みを入れておく。

「でも、何でお前が試験に参加できたんだ? 間接的とはいえ事件の発端はガインだったはずだよな?」

 俺はもっともな疑問を口にする。

「簡単に説明すると、ジョーが教唆によってあの事件を引き起こしたと判断されたからだ。つまり、ジョーの契約者の成島翔だったな。そいつが起こした事件だということで上層部が結論付けたらしい」

「……なるほど」

 こないだ沙良から聞いた話ともある程度は合致するし、そこは最大限身内の顔を立てたということなのだろう。あまり身内には厳しくしないのかもしれない。もっとも、断片的にしか事件のことを知らないとはいえ、ジョーと翔どちらが悪いかと言われたら俺も翔を選ぶので、今回の判断に関しては妥当だと考えておくのがいいのだろう。

「で、ジョーを試験に復帰させることはさすがにできないが、せめて本人の希望である僕の試験参加だけは認めてやろうという方向で話が来たんだ」

「そういうことだったのか」

 俺もようやく納得する。

「まあ、僕もただでは起きなかったけどね」

「……どういうことだ?」

 俺は訝しむ。

「いや、と言っても何のことはないさ。僕が暴食の悪魔になったらジョーを補佐につけてもいいって条件を取り付けただけだから」

「!?」

 俺は声にならない驚きでガインの方を見る。

「あいつは僕のためにこの事件を起こしたんだ。僕だって彼にこのくらいしてやらないと割に合わないだろ? 結局ずいぶん検討した結果、上層部は最終的に僕の条件を飲んだ。だから今こうして人間界に来ているという訳さ」

「……さすがは成績トップの悪魔見習いだな」

「それは褒め言葉として受け取っておくよ」

 ガインは少しだけ口元を緩める。

「で、君たちに頼みたいことがあるんだ」

 ガインはそう言って俺と沙良の方を向く。

「契約者が決まるまでの間、ここに泊めてほしいんだ」

『……はい?』

 その言葉に俺だけでなく沙良までもがそんな間抜けな声を上げた。



「なるほど。つまり、急遽こっちに派遣されることが決まったから、契約者は自分で探せっていう話になった訳か」

 ガインの条件を飲んだのも頷ける話だ。これだけ厳しい条件の下で試験に参加するのなら、多少の条件を飲むくらいはしないと割に合わないということなのだろう。そして、今までのように契約者が指定されていない以上、彼ら3人は野宿確定と言うことらしい。つまり、当面の間はどこかで契約者探しする宿を見つけなければならないのだ。

「とは言ってもなあ……」

 ラミアはともかく、他の2人の手助けになるような行動を取るべきなのだろうか。一応彼らはライバルとなる存在なのだ。

「うーん……」

 沙良も同じように唸っているところを考えると、どうやらお互いに考えていることは同じと言うらしい。

「もちろん、ここに僕とティーナが泊まるとは言ってない。ここにはラミアを置いてほしいんだ。彼女なら君たちと直接いがみ合う理由もないだろう?」

「それならもちろん歓迎だ」

「そうですね。私も問題ないです」

 俺たちは即答する。

「ただ、僕たちも野宿は避けたいんだ。そこで、間接的ではあるが君たちの協力を頼みたい。ここに泊めてもらう方が都合はいいんだが、君たちはそれを良しとはしないんだろう?」

 ガインはそんな遠回しな言い方をする。

「……具体的には宿を紹介しろと」

「そうなる」

 俺が言い換えるとガインはすぐに頷いた。ずいぶんと素直で図々しいとも思ったが、今の彼らではなりふり構ってもいられないということなのだろう。宿を提供するだけでいいというのならむしろ安いものだ。

「……まあ、そういうことならケンとアリーに協力してもらいましょうか。あの2人の家ならある程度理解もあるはずですし、協力もしてもらえるでしょう」

 沙良はそんな妥協案を出した。

「さすがサラー。話が早くて助かるー」

 それまで黙っていたティーナが都合よくすり寄ってくる。

「別にあなたたちのためだけという訳でもないですけどね。たまたまケンに会いに行く用事があったので、そのついでに連れて行くだけです」

「忘れてたお前が言うかよ」

 ツンデレのように言う沙良に俺は突っ込みをいれるが、それは事実だった。本当ならとうの昔に卵は桜たちに渡されているはずだったのだから。

「まあ事情はどうあれ僕とティーナの宿を提供してくれるのはありがたい。感謝こそあれ、文句なんてあるわけないさ」

 ガインはそう答え、立ち上がる。

「それじゃ、案内は任せたよ。サラの契約者さん」

「ああ」

 ガインのその言い方を聞き、俺は改めてガインも沙良のライバルである暴食の悪魔見習いだということを思い出すのであった。

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