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みんなに笑顔を 王様ゲーム

 数十分後、俺の家には2人の友人と2匹の悪魔見習いが集結していた。

「……で、卵ってどういうこと?」

 最初に口を開いたのは桜だった。

「ああ。これなんだけど」

 俺はマーラからもらった卵を全員に見せ、これまでのいきさつを説明する。

「サラっちのリモコン壊れたのか」

「ええ。そう簡単には壊れないはずなんですけどね。それで私もちょっと困ってたんですけど、そこを契約者の樹さんがですね……」

「サラはもう少し自分で何かをするべき。ケンじゃないんだから」

「おいそれどういう意味だよ」

 悪魔見習いが悪魔見習い同士で盛り上がり始めたので、こっちはこっちで進めておくとしよう。

「で、この卵、良ければ俺たち全員で育ててみないかって提案なんだ」

「確かにこれは見たことない卵ね」

 麻梨乃も頷く。

「まあ私は樹君と席も隣だからそんなに心配はないけど……。麻梨乃さんって高校逆方向じゃなかった?」

「そういえば確か吉永さんが通ってるの透翠とうすい高校だったよな? まだ夏休みじゃないけど大丈夫か?」

 俺も気付く。桜だけならまだしも麻梨乃までこの計画に巻き込むのは少し無理があるようにも思えた。

「心配ないわ。最悪アリーの移動能力を使えば問題ないし、何よりもう少しあなたたちと仲良くしたいもの」

 麻梨乃は心配はいらないと首を横に振った。彼女自身まだ会った時のことを気にしているのだろう。

「心配しなくても、吉永さんはもう俺たちの仲間だよ。でなきゃここにも呼んでないしな」

「そうよ。こないだだって樹君を助けるための暗号解読に協力してくれたじゃない」

「ふふ、ありがとう」

 俺たちがそう言うと、彼女は笑顔を見せた。



「せっかくなので今日は6人で何かゲームでもしませんか?」

 ひとしきり事情を説明した後、沙良は全員にこう提案する。

「……謎かけ?」

「いやその質問はおかしいぞアリー。何でそうなった?」

 俺はやや反応の読めないアリーにそう返す。最初会った時には彼女は常識人ポジションの女の子だと思っていたのだが、どうもこの様子だと常識人なのにあえて引っ掻き回すポジションに座るのが好きな女の子、というのが正しいのだろう。そういえば最初に会った時も説明こそしてくれてはいたものの、俺を弄ぶことに楽しさを覚えていたような気もする。いざと言うときはきちんと説明してくれるのでそこに関しては信頼してもいいのだろうが、普段の彼女の態度は同級生の片桐かたぎりさつきに通じるものがあるので少し面倒だ。もちろん素の態度がああであるさつきの方が面倒なのは言うまでもないのだが。

「そういえばここにこないだ来た時はかくれんぼしてたのよね」

 桜が思い出す。あの時は隠れていた沙良を俺たちが見つけられないと罰ゲームに近いものがあったので、必死になって彼女を探したのを覚えている。

「この人数でかくれんぼはちょっと面倒じゃねーか?」

 ケンが首を振る。

「もちろん私もかくれんぼをする気はありませんよ。今日はこれをしましょう。王様ゲームです!」

 沙良はどこから取り出したのか爪楊枝を取り出した。

「……せめて割り箸にしとけよ」

「仕方ないじゃないですか。よく食べてたたこ焼きのが余ってたんですよ」

「お前今までたこ焼き何で食ってたんだよ」

「……さー皆さん引いてください。今回は数字が書けないので赤青緑黄色黒白で分けてあります。赤が王様ってことでお願いしますね」

「流すな!」

 だが、全員が爪楊枝を選び始めてしまったので俺もしぶしぶ引く。

『王様だーれだ!』

 全員一斉に爪楊枝を引っ張る。

「私ね」

 最初に王様を引き当てたのは桜だった。

「じゃあ青の人は今から自動販売機で全員分のジュース買ってきて」

「全員!?」

 その命令に驚きの声を上げたのはケンだった。

「あーケンだったのね。じゃあよろしく」

「マジかよ……」

 ケンは爪楊枝を戻しながら全員の要望を聞くと、大急ぎで部屋を出て行った。



「それじゃ、ケンが戻ってくるまで5人でやりましょう。白を抜いておきますね」

 沙良がそう言うと共に全員が爪楊枝を手に取った。

『王様だーれだ!』

 2度目に王様を引いたのはアリーだった。

「それじゃ、緑の人が出したお題を黄色の人が謎かけ」

『何 (ですか)それ!?』

 そのお題に同時に声を上げたのは麻梨乃と沙良だった。どうやら沙良が出したお題を麻梨乃が答えることになりそうだ。

「お前謎かけ好きなのかアリー?」

 俺はそう聞く。

「そんなところ。ほら早く」

「じゃあ……、映画でお願いします」

 急かされた沙良は適当にお題を出した。

「えっと、映画のラストとかけまして罪を犯した子の親と解きます?」

「その心は?」

 アリーがすかさず沙良からそのセリフを奪い取る。

「どちらも感動(勘当)するでしょう?」

『おおー……』

 全員が驚いたようなそんな声を上げる。

「よし。麻梨乃、特訓の成果はバッチリね」

「お前が教えたのかよ」

 俺はぼそっと言ったアリーにそう冷静に突っ込みを入れた。



「た、ただいま……」

 とそうこうしているうちにひいひい言いながらケンが戻ってきた。

「おかえりー。お疲れ様」

 桜は何事もなかったようにケンから頼んでいたオレンジジュースを受け取る。

「サラっちがグレープジュース、タツッキーがお茶、麻梨乃がジンジャーエール、アリーがコーラで合ってたか?」

 それぞれに手渡しながらケンは聞く。

「おう」

「合ってますね」

「ケンにしてはいい記憶力」

「おいアリーどういうことだ今の」

 アリーにだけ馬鹿にされたような口調だったからかケンはそう突っ込む。

「さ、ケンも帰って来たことだし6人で再開しましょうか」

 桜は笑顔でケンの方を向く。

「鬼かお前は! 少し休ませろよ!」

 ケンの悲痛な叫びが部屋の中にこだました。

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